開催迫る<New Manual>のポップアップを前に、キーマンたちが緊急鼎談!“幻”のヴィンテージを至高の既製服へとアップデート
- 03.01 Wed -03.07 Tue
- 伊勢丹新宿店 メンズ館6階 メンズコンテンポラリー
ヴィンテージクローズの聖地として、世界にその名を轟かせるヴィンテージショップの名店「BerBerJin/ベルベルジン」。そのディレクターでありヴィンテージデニムアドバイザーとして活躍する藤原 裕氏が中心となり、「現在の物差しで、よき時代のものを捉え直し、新しい“マニュアル”をつくること」をコンセプトとして2022年春にローンチした話題のブランド<New Manual/ニューマニュアル>が、初の“実店舗”展開となる期間限定ショップを伊勢丹新宿店にオープンするという。
この話題性抜群なイベントの仕掛け人である伊勢丹バイヤーの鳥山 脩が藤原氏を招き、藤原氏と昵懇の間柄だという世界的ファッションキュレーター・小木“Poggy”基史氏をゲストに迎えた鼎談が実現。ブランド誕生の経緯からものづくりのこだわり、いまの時代に熱烈に支持され、イセタンメンズが強力にプッシュする理由、そして気になる別注アイテムの詳細など、それぞれが独自の視点で、熱く、<ニューマニュアル>の魅力を語ってくれた。
- 開催期間:3月1日(水)〜3月7日(火)
- 開催場所:伊勢丹新宿店 メンズ館6階 メンズコンテンポラリー
販売アイテム(一部)
/「ベルベルジン」ディレクター /ヴィンテージデニムアドバイザー
ヴィンテージの達人が手掛ける、復刻でもレプリカでもない新ブランド
鳥山 藤原さん、小木さん、本日はお集まりいただきありがとうございます。念願かなって実現した今回のポップアップですが、そもそものきっかけは、私が<New Manual/ニューマニュアル>立ち上げ前のプレ展示会、通称「ゼロ展」にお邪魔した際に受けた感動、古着好き以外にも響く圧倒的カッコよさを、伊勢丹のお客さまと共有したいという思いからでした。
藤原 うれしいお言葉、ありがとうございます。鳥山さんは実際にゼロ展をご覧になって、どんな感想をお持ちになりましたか?
鳥山 ヴィンテージの達人として名を馳せる“あの”藤原さんが、既製服の新ブランドを立ち上げるらしいから見に行こう───そうウチの外商担当から誘ってもらってお邪魔したんですが……。まだデビュー前のブランドにも関わらず、会場には多くの方が行列を作っていたんですね。それを見て、期待値がさらに高まってしまって。すごくワクワクしながら列に並び、入場を待ちわびるというところから始まりました。
藤原 <ニューマニュアル>は納得のいくクオリティを維持するために、すべてのモデルのユーズド加工を入れているものは100点限定にさせてもらっているんです。もちろん「ベルベルジン」でも展開する予定はありません。おまけにゼロ展のときは、ECサイトすら立ち上がっていませんでした。つまり展示会場で直接お客さまから受注するというのが、唯一の販売ルートだったんです。そのため時間帯によってかなりお待たせしてしまったようで、申し訳ありませんでした。
鳥山 とんでもないです!確かに会場では、無駄なく一つ一つのプロダクトをお客さまにしっかりお伝えしたいという思いが、ヒシヒシと感じられました。最初に発表された5モデルをつぶさに見てみると、ヴィンテージデニム特有の色落ち、風合いを忠実に表現する加工技術に圧倒されました。と同時に、私のようなヴィンテージやデニムに関してとても詳しいというわけではない人間だからこそ、フラットな目線で、ファッションとして<ニューマニュアル>のコレクションを見ることができたんじゃないかとも思っています。
私は今年31歳で世代としては藤原さんや小木さんよりも下なんですが、1990年代の古着ブームを経験していない僕らから見ても、本当に素晴らしいファッションアイテムだと感じましたね。
小木 僕もゼロ展にお邪魔して、今日着ているファーストのGジャンをオーダーさせてもらったのですが……。<ニューマニュアル>は、とにかく加工のクオリティがケタ違いですね。これまで多くのブランドが究極の“リアル”を目指してきたと思うんですが、何かが違うんですよね。。ほぼ“リアル”ヴィンテージといえる仕上がりで、本当にビックリしました。
100点限定という数も、すごくいいですよね。どんなに素晴らしい加工の“見本”を用意しても、人の手による仕事である以上、大量生産であるほど作業を繰り返すうちに段々とズレが生じたり、疲れてしまったりしますから。
鳥山 機械じゃないので、限界がありますよね。
小木 それでいて、よくある”復刻”系のモノのような、やりすぎ感がないのも特徴かもしれません。昔のものを徹底的に再現するだけだと、一部のマニアだけが満足するもので終わってしまう。“リアル”を追求しながらクリーンにまとめることによって、着る人次第で変化する余白が残されている───そんなアプローチに新しさを感じました。
コーディネートや髪型まで限定されてしまうような、“入り口”の狭いものでは決してない。色んなタイプの人が、それぞれの着こなしを楽しめるブランドなんだと思います。
鳥山 私も<ニューマニュアル>のデニムは、“育てる”という概念を持ちつつ、完成されたヴィンテージスタイルのファッションアイテムとして、提案できるデニムだということを強く感じました。
デニムって歴史も深く、いろいろウンチクもあり難しい世界と思われがちです。そんな分野を知り尽くし誰よりも精通した藤原さんが、現代のファッションをしっかり意識したうえでご提案している。これは間違いのない正解の一つだし、新たなデニムの入り口となりうるんだということを、自信をもってお客さまにご紹介したいと思います。
生地や糸のみならず、綿花の生産地まで指定する超ド級のこだわり
藤原 ファッション界のど真ん中でご活躍されているおふたりのお褒めの言葉、うれしいですね。というのも、<ニューマニュアル>の母体となっている会社は、岡山にある「癒toRi18(ゆとり)」という企業。ラグジュアリーブランドのデニムも手掛けている、最高の技術を誇る加工会社なんです。
自分が見てきたヴィンテージを、どうやって既製服の“加工”で表現できるかという部分にこだわり抜いているので、そこを評価いただけるのが素直にうれしい。
自分はさまざまなトゥルーヴィンテージ、なかには1000万円なんて値がつくものも所有しているので、究極のリファレンス、加工サンプルを提供できるわけですが、このプロジェクトはあえて「33選」という、モデル数を絞ったコレクションとして今後展開していくことに決めていました。
鳥山 未発表のものを含め、全体のモデル数が決まっているんですよね。
藤原 はい。いままで自分が見てきたヴィンテージのなかでもベストだと確信し、今後も世に残していくべきものという観点も交えて、所有している名品のなかから33点を厳選しています。世界最高峰の加工技術を駆使し、現代のファッションとリンクした表現をすることにこだわっているんです。
もちろん縫製も、そして生地はもちろん、糸からとことん徹底的に追求しています。品番に自分のイニシャルを入れてもらっている、門外不出のデニム生地を使用しているんですよ。
まだ検証が済んではいないのですが、このデニムはワンウォッシュから色落ちさせていく楽しみもあるので、各モデルに皆さんからお褒めいただいたヴィンテージタイプだけでなく、ワンウォッシュタイプも追加展開していきます。
鳥山 それはすごいですね!綿花の産地まで指定していると伺いました。そこまでのこだわりは他に聞いたことがありません。ところで33という数は、どのようにして決まったんでしょうか。
藤原 正直にお話しすると、プロジェクトのメンバーからは当初、100という数を提案されていたんですよ。ただデニムだけではなく、デニムに合うアイテムというものも含めて自分なりの厳選を重ねていくことにより、30まで絞り込みました。キリのいい50とか100にしようとすると、自分のなかではある意味余分なモノまで含まれてしまうんです。
ただ、そこからどうしても追加したいものも出てきてしまって、最終的に語呂のいい33というところに着地したんです。
鳥山 数を先に決めずに藤原さんが熟考した「究極の33選」ということですね!そういえば、小木さんは、かなり昔から藤原さんと親しくされていたそうですね。
小木 (藤原)裕くんとは、かれこれ25年近いお付き合い。原宿のとんちゃん通りにある「ベルベルジン」は、当時僕がショップスタッフをしていた店舗の斜向いにありました。ぼくは洋服が好きすぎて、休憩時間も休まなかった。ちょっとでも時間があれば、近隣のお店で洋服を見て回りたかったんです。
藤原 昔から「ベルベルジン」の商品入荷日などは、よく遊びに来てくれてましたね!その頃からずっと、プライベートでもお付き合いさせていただいていて本当にありがたいです。
小木 仕事の日は近くの「ベルベルジン」へ、休日になれば群馬とか、普段は行けないエリアへ遠征していましたね。服を見に(笑)。
とはいえその頃は、時間はあってもお金が本当になかった。名のあるヴィンテージショップが取り扱う貴重な“トゥルーヴィンテージ”は、触ることすら許されませんでしたしね。そんななかでも裕くんのいる「ベルベルジン」は、レギュラーものもトゥルーヴィンテージも、同じように試着させてくれました。そういう“学び”の機会を与えてくれたことが僕の礎にもなっているのは間違いないですね。
藤原 僕にとって小木さんは、年齢的には1コ上の先輩です、でも、なにかっていうといつも相談に乗っていただいている、業界の大先輩でもある。「分からないことあったら何でも訊きなよ」って言ってくれる、頼りになる兄貴的な存在なんです。<ニューマニュアル>を立ち上げる際にも、もちろん最初に相談させてもらいました。いろんなアドバイスをいただきましたね、ここでは言えませんけど。(笑)
誰でも楽しめる、ヴィンテージの新しいマニュアル
鳥山 さきほど藤原さんは、「加工によって現代のファッションに通じる表現をしている」とおっしゃっていました。よくある復刻モノやレプリカとは、具体的にどこがどのように違うのでしょうか?藤原 さきほどお話ししたとおり、僕のなかで最も重要な至高のヴィンテージ「33選」というものが決まり、それぞれの時代背景や生産背景、傷やリペアなどのストーリー、縮みも含めたサイズ感など、そのオリジナルがもつディテールや色落ち感、ムードなどを、「癒toRi18」がもつ最高の加工技術によってできるだけオリジナルに近づける表現をすることを目指しています。
でもレプリカや単なる再現と決定的に違うのは、ぼくがこれまで見て、着て、触って、確かめた揺るぎない”感覚知”をベースに、いま着たいと思う、現代のファッションシーンに即したアイテムとしてアップデートしていることなんです。
鳥山 つまりは、“まんま”じゃないということですね?
藤原 はい。”まんま”ではなく、ジャケットのアームホールを少し大きくしたり、着丈をちょっとだけ長くするなど、オリジナルの良さは最大限大切にしながら、いまっぽく着やすい設定へと微妙に創り変えているんです。
鳥山 オリジナルよりちょっと長めに、大きめにアレンジされている気がするのは、昨今のビッグシルエット人気を意識したものでしょうか?
藤原 トレンドのシルエットを意識していないわけではありませんが、もっと重要なのは、どうやって着たいか、ということ。たとえば、いまはGジャンをリバースウィーブのスウェットとの重ね着で着たいという方が数多くいらっしゃいます。しかしながら特に希少な年代モノになってくると、スウェットと重ね着したくてもサイズ的に厳しいことがほとんどですから。
鳥山 なるほど、納得です。となると、やっぱり一番思い入れのあるのは、「001」品番として採用されている「T BACK DENIM JACKET」でしょうか? あとジャケット類は1サイズ展開ですよね。
藤原 自分史上最高のヴィンデージデニムジャケットは、間違いなくリーバイスの「506XXE(通称Tバック)」ですからね。あまりにもこのイメージが定着しすぎて、巷では「Tバック藤原」なんて呼ばれているくらいです(笑)。
実はすべてのジャケットが1サイズ(パンツは31と34の2サイズ)展開というのも、こだわりポイントなんです。これは<ニューマニュアル>のほぼすべてのコレクションが自分の所有しているヴィンテージをベースとしていることとも関係していますね。
「Tバック」と言われるGジャンは46以上のエキストラビッグサイズでしか存在しないため、背中が広すぎて中心に切りかえを入れる必要がありました。そのため縫製部分がTの字に見えるようになったことに由来しています。ですので「Tバック」がこのサイズ感なのは理由があるんです、というメッセージも含めた一つの提案としてみようと。
小木 聞けば聞くほど新しいですね。(笑)
藤原 チームのアートディレクションを担当している後(うしろ) 智仁さんが提案してくれた「ニューマニュアル」というプロジェクトネーム───すべての人に開かれた、新しいヴィンテージのマニュアルという言葉が、なんどかとても腑に落ちたんですよ。自分が培ってきたヴィンテージの感性を、最高の加工技術と現代の感覚できちんと表現し、お客さまに伝えるための新しいマニュアルであってほしいと思っています。
小木 いまの話を聞いていると、<ニューマニュアル>に女性ファンが多いというのにも、すごく納得できますね。やっぱり裕くんは昔から、いろんな“入り口”を作らないと良い物自体も減っていく一方ですし、ヴィンテージ業界に未来はないって考えていたんだと思います。
初の実店舗展開と、ショップ別注モデルは見逃せない
鳥山 そして今回は、伊勢丹のお客さまに向けた”入り口”を用意していただきました。ブランドとして初の実店舗展開であり、ショップとして初めて限定モデル(伊勢丹新宿店メンズ館限定)を作っていただきました。本当にありがとうございます!藤原 伊勢丹に出店するという貴重な機会をいただけて光栄ですし、こちらこそ感謝したいです。メンズ館限定アイテムは、やはり加工でどう魅せるか、という部分にこだわりました。そこで最初に創り上げた「#001」モデルをベースに、インラインとは別の色落ちサンプルをご用意し、ご提案させていただきました。
鳥山 その2ndサンプルが、今日私が着用させていただいているものですね!
小木 インラインよりも激しめの色落ち感で、これはこれで素敵ですね。
鳥山 ありがとうございます!伊勢丹としては、<ニューマニュアル>らしい加工の醍醐味を堪能できるものをお願いしたいと考えました。もちろんお客さまの志向を踏まえた色味の方向性などについてディスカッションさせていただきましたが、加工の内容であったりディテールの落とし込みといったところはすべて、藤原さんにお任せさせていただきました。結果、本当に素晴らしい完成度で……、できることなら私も購入したいです。
藤原 このメンズ館限定品のリファレンスとなったのは、僕の「Tバック」コレクションのなかでも相当着込まれた、激しめの色落ちが楽しめる1着です。加工が激しくなる分、縮みも強く出やすいので2回ほどサンプルを作り直しましたが、ついに納得のいく仕上がりにたどり着きました。「癒toRi18」として新しい挑戦だった要素もあり、新たな発見と経験値を得ることができたのはありがたいですね。
鳥山 通常は100点限定の<ニューマニュアル>ですが、今回の別注モデルはさらに少ない点数の予定で、より希少なものになってしまいました。
藤原 お客さまには申し訳ないのですが、さまざまな制約があり、精一杯の数のご用意となります。その代わりといってはなんですが、このポップアップでのみ、スタッフ用に制作した「ロサンゼルス アパレル」ボディのオリジナル白Tを、特別に販売する予定です。
これもヴィンテージデニムに合うアイテムとして、自信をもっておすすめできる逸品。ジーンズにタックインすると脇の当たりに、いい感じにパッチが見えるデザインになっているんです。
鳥山 これも、欲しいです。(笑)伊勢丹のお客さまはシンプルでクリーン、ダークトーンでまとめるというスタイルの方がとても多く、そんな着こなしにこの別注デニムジャケットは一発で効果を発揮してくれると思います。<ニューマニュアル>の加工がもつ力は、唯一無二ですね。トゥルーヴィンテージからインスパイアされた、“ウンチク”を凌駕するカッコよさを、早くお客さまに見ていただきたいです!
藤原 今回のポップアップは、お越しになったお客さまがご試着、ご購入、そのままお帰りいただけるというブランド初のイベント。いつもの展示会スタイルでは受注をいただくだけなので、その点は本当に楽しみにしています。全部、完売できるといいな、と思いますね!(笑)
Photograph:Tatsuya Ozawa
Text:Junya Hasegawa(america)
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*本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。商品の情報は予告なく改定、変更させていただく場合がございます。
*一部表記に誤りがあり、テキストを修正いたしました。2023年2月27日(月)
*完売情報を更新しました。2023年3月1日(水)午後6時
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