【連載】伊勢丹バイヤー・杉田修平が通う、美味しさがプラスオンする「クラフトビール×カレー」|イセタンメンズ散歩
SPICY FOOD&BEER in HOT SUMMER!――例年になく早い梅雨明けで、2022年の夏真っ盛りです。夏といえばビール、ビールといえばスパイシーなカレーということで、伊勢丹新宿店 メンズ館4階を担当するバイヤー・杉田修平が最近足繁く通っている店が「両方絶品!」という情報をキャッチ。ビール好きもカレー好きも、飲んで食べてまた行きたくなる、東京・高円寺の「アンドビール」に伺いました。
Instagram @andbeer_koenji
Instagram @mamekurashi_kenkyujo
自家製ビールとスパイスカレーの両方が美味しいって幸せです
高円寺駅から阿佐ヶ谷駅方面に線路下のガード(高円寺ストリート)をまっすぐ徒歩約10分。旧国鉄の社宅をリノベーションしたアパートの1階にあるのが、「自家製ビール×スパイスカレー」で人気のアンドビールです。芝生を敷きつめた白い建物が、晴天の日中なら青空に映えて、緑×白×青の鮮やかなコントラストは、絵に描いたアメリカ西海岸のよう。
ビール大好きの奥様、安藤祐理子さんがビールを造り、カレーに魅せられたご主人、安藤耕史さんがカレーを作りますが、二人に共通しているのは根っからの“旅好き”。取材日も耕史さんがベトナム2週間の旅から帰ったばかりで、翌週から祐理子さんがクラフトビールの本場・アメリカへ旅立つそう。ビールもカレーもお二人の好奇心と想像力の賜物で、まさに“旅するクラフトビール×カレー”です。
杉田修平(以下、杉田) 自家製のクラフトビールとカレーという組み合わせの店はありそうでなくて、アンドビールは居心地も良くて最高です。お二人はどういうきっかけでお店を始められたんですか。
安藤耕史(以下、耕史) 自分は料理が好きで、学生時代にスリランカに行ったり、中米・南米を一周したりして、大学の研究も「海外の食文化」でした。イベント会場などで現地で教わったカレーやタコスを作って売ったりしていましたが、妻の祐理子と出会ったのも僕のカレーを食べたのがきっかけでした。卒業後、会社勤めをしていましたが、二人で「いつかBrewPub(ブリューパブ=小規模のビール醸造所と飲食ができる店)をやりたいね」と話していました。
安藤祐理子(以下、祐理子) 私はビールを飲むのが好きで、高円寺にビールを造っているブリュワリーがあるのを知って見に行きました。小さなスペースで造っているのを見て衝撃を受けて、「ビールって造れるんだ、自分でも」と思い、ビール造りを調べ始めたのがきっかけです。
杉田 耕史さんのカレー作りと、祐理子さんのビール造りはシンクロするんですか?
祐理子 ビールのレシピを考えるときに、「何と食べたい、どう飲みたい」というのは考えますが、マリアージュ的なことは特別考えませんね。季節感は大事にしていますが。
耕史 店では毎日4種類のカレーと、6~8種類のクラフトビールが飲めますが、お客さんの方がペアリングに詳しいです。店側では提案のようなことは特にしていませんね。
祐理子 カレーは日替わりで週に20種類ほど作り、ビールも月に4~5種類は新しいビールをリリースするので、組み合わせは無限です。店に来て好きな味を探してほしいし、発見してほしいので、あまり縛られずに造っています。
杉田 お店に来て、お客さん一人で、カレー4種がけ、ビール3種飲み比べをしているのを見ると、「豪遊しているなぁ」って思います(笑)。カレーとビールをかけ算して、自分だけの好みを見つけるのは楽しいですよね。
旅行して、ご飯を食べて、ビールを飲んで、店で出すという好循環
杉田 祐理子さんの造るビールに、いわゆる"定番"はありますか?
祐理子 これまでに200種類以上造っていますが、特に定番はありません。広島・呉のレモンや山梨の桃やブドウを使ったり、クランベリーを使ったビールもあります。
杉田 これまでで一番変わったビールは何ですか?
祐理子 そうですね、ヒノキを使ったビールを造りましたが、ヒノキ風呂を囓っているような味でした(笑)。
杉田 ヒノキ風呂を囓ってる! 飲んでみたいですね。これまで自信作ってありますか。
祐理子 まだ納得できるビールはないですね。ビールは香り、素材選び、フルーツとのコラボなど、なんでもできます。今、木樽に2年間ほど寝かす「バレルエイジド」を初めて仕込んでいて、出来上がりが楽しみです。
杉田 耕史さんはカレー作りで何を大切にされていますか。
耕史 毎日4種類のカレーを店で出していますが、カレーとお米の一体感を大事にしています。カレーは自分が食べた引き出しの中から現地っぽい味を目指して作り、お米は日本米、玄米、インドのお米などをチョイスします。即興で作るカレーもあって、書き出したらたぶん数百種類は作ってきましたね。
杉田 数百種類のカレーが耕史さんのアタマの中にあるわけですね。好きなスパイスは何ですか。
耕史 何周も回って(笑)、コリアンダーが普通に好きです。何にでも合う、縁の下の力持ちですね。最近は、「少ないスパイスで美味しく作る」のが面白いので、2~3種類のスパイスで豆のカレーを作ったりします。
杉田 アンドビールのカレーは副菜もスパイスが多彩に効いていて、一皿の中で何通りも味わえるのが好きです。
祐理子 お隣の「まめくらし研究所」の宮田さんが来たので、夏にピッタリのサワータイプのすっぱいビールをお出しします。パイナップルを囓ってるぐらいの柑橘感が楽しめますよ。
「私の身体はアンドビールでできています」という宮田サラさん登場!
宮田サラ(以下、宮田) 初めまして。アンドビールの隣りで「まめくらし研究所」という雑貨屋をやっていて、この高円寺アパートメント全体の「女将(おかみ)」として運営をしている宮田です。
祐理子 このアパートの若女将で(笑)、住宅のコミュニティー運営など広く活躍されています。
杉田 いただいたビール、本当にすっぱいですね。でも喉ごしが爽やかです。お隣さんということは、宮田さんはアンドビールのことを知り尽くしていますね。
宮田 毎日カレーが違うので、毎日来れちゃいます(笑)。お腹が空いて隣りに来れば美味しいカレーが食べられて、その隣りがコーヒー屋さんなので、おやつにコーヒーを飲んで、夜になったらビールとおつまみを食べてと、まさに“私の食卓”ですね。
杉田 こういうコミュニティーに美味しい店があると、食べに来ると誰かしらいて、みんなのリビングダイニングのようでしょうね。
宮田 一度豪雨の日があって、アンドビールに来たらこのアパートの住人が集まっていて、本当に「開いてて良かった」って思ったことがあります。この場所は高円寺と阿佐ヶ谷のちょうど中間で、どちらも街イベントが盛んですが、高円寺フェス・阿佐ヶ谷のジャズストリート・七夕などと、ゆるやかに繋がりながら、点が面になるような開かれたコミュニティーを育てていきたいなと考えています。
ファッションみたいな自由度がカレーにもビールにもあっていい
耕史 杉田さん、今日のカレーは「スリランカチキン」と「塩麹(こうじ)レモン鶏キーマ」です。2種掛けでいいですか。杉田 妻と一緒に来ると、2種がけを2つ頼んで、その日の4種類全部を食べるのが楽しみです。今日は2種類で我慢します(笑)。ビールは、2番の「Step by step」をお願いします。
祐理子 「Step by step」は、今までやってこなかった“一つの種類のホップだけを使ったビール”です。1番のベリー色ビール「Cranberry Milk Shake IPA」もお薦めです。
杉田 いただきます! スリランカチキンは、辛みが強いですがサラサラしていて、スカッとするキレのあるスパイシーな味ですね。こってり感やボテッとした感じがなくて、食べ終わったらさっぱりしますが、後から辛みが追いかけてきます。塩麹レモン鶏キーマは、カレーというか何というか、新しい感覚のキーマで、麹の塩梅でさっぱり食べられます。
耕史 塩麹レモン鶏キーマは店で初登場です。すっぱめでサラッとした夏カレーですが、今度いつ作るかわからないので、“一期一会のカレー”ですね。
杉田 ポテトサラダのサンマと梅が新鮮な組み合わせで、ビールのお供に最高です。
祐理子 杉田さんのお仕事のファッションバイヤーはどんな視点が必要ですか。
杉田 今はメンズ館4階 メンズラグジュアリーのバイヤーをしていますが、いわゆるメゾンといわれるブランドは、パリコレやミラノのファッションショーでとても挑戦的なことをしています。そういう挑戦やそこから受ける刺激は、ファッションで一番大事で、一番楽しい部分です。耕史さんと祐理子さんの話を聞いていると、いわゆるカレー屋やクラフトビールは世の中に星の数ほどありますが、お二人が現状に甘えず“挑戦”を表現していることに共感できるし、それを楽しんでいるように見えました。ファッションみたいな自由度がカレーにもビールにもあっていいですね。
耕史 私たちも世界を旅しながら、いつでも「発見・出合い・共感」です。
杉田 アンドビールの「こうあるべき、ではなくて、これはどう?」という姿勢は、ファッションに通じるものがあります。今日はごちそうさまでした!
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Photograph:Tatsuya Ozawa
Text:Makoto Kajii
*撮影時のみマスクを外して、撮影を実施しています。
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