【特集】革新し続ける<ヨウジヤマモト プールオム>における“定番”とは? 比類なきデザインコードと多様な個性で“再定義”した、トップメゾンのアイデンティティを可視化する!
5月18日(水)から5月31日(火)まで伊勢丹新宿店メンズ館 ザ・ステージにて開催されるのは、デザイナー山本耀司氏が手掛ける<Yohji Yamamoto POUR HOMME/ヨウジヤマモト プールオム>における“定番の再定義”を企図するポップアップストア───その名も「REDEFINING」。パターン、テキスタイル、加工に見られる“らしさ”とともに、近年新たに加わったアートやライフスタイルという要素にも着目。革新すれども変わらぬ真髄を凝縮し、孤高のメゾンを“再定義”する!
革新のモードブランドを“定番”で再定義する、画期的イベント
1984年に<Yohji Yamamoto POUR HOMME/ヨウジヤマモト プールオム>が発表されて以来、時代に流されない反骨精神で走り続けてきたこのデザイナーズブランドが、“定番”というものに向き合った───。5月18日(水)から2週間、伊勢丹新宿店メンズ館1階 ザ・ステージにて開催される「REDEFINING」とは、そんなエポックメイキングなポップアップストアとなりそうだ。
今回の取り組みで顕になるのは、究極の着やすさを追求した“パターン”、流れるような落ち感や質感を表現するための“テキスタイル”、そして絶妙なニュアンスを醸し出す染めやシワなどの“加工”などが、ヨウジヤマモトという世界的デザイナーのシグネチャー、すなわち“定番”となってきたデザインコードであるということ。
さらには内田すずめ氏らに代表される“アーティスト”たちとのコラボレーションや、香りやタオルといった“ライフスタイル”アイテムへの拡張など、クリエーションを前進させる新たな要素まで網羅することで、<ヨウジヤマモト>がイメージする男性像そのものを“再定義”していると言っても過言ではない。
店頭に並ぶのは、そんな“定番”を象徴する<ヨウジヤマモト プールオム>2022年秋冬コレクションからピックアップされた、キーアイテムたち。そして発売されたばかりのフレグランスシリーズやリラックスウエア、タオルなどを含めたライフスタイルコレクションまでもが、一堂に介する圧巻のラインナップだ。
アーティストとの協業と、こだわりのテキスタイル
まず最初に注目したいのが、<ヨウジヤマモト プールオム>の2018年春夏コレクションで美しくも不気味な『幽霊画』を描き、鮮烈な邂逅を果たしたアーティスト、内田すずめ氏との最新コラボレーションだ。
内田氏自身のドキュメンタリーを題材に描かれた作品世界は、眩い光と深い闇が見事に共存。理想と現実の狭間で揺れる、人間の業と生々しい情念を見せつけるかのようだ。2018年春夏以来毎年、およそ5年にわたって<ヨウジヤマモト プールオム>との合作を継続している。
そんな内田氏との最新コラボレーションアイテムが、このイベントにて先行発売される。これまでには幽霊などが題材とされてきたが、今回は「本当に大事なものは目に見えない」というテーマの下、内田氏らしくも王道的で荘厳な、美人画によるコラージュを披露。目に見えないからこそ、記憶の中から何度も取り出して想像したり、眺めたりしてしまう。そうして瞼の裏に浮かび上がる像の「不完全さ」を魅力に思い、複数枚の鉛筆スケッチを組み合わせたコラージュで表現したという。そこには幽霊画のような物恐ろしさはなく、繊細さと儚さ、神々しさに満ち溢れた世界観を堪能できる。
そして、<ヨウジヤマモト プールオム>における代表的な“テキスタイル”である、製品染めシルク、コットンギャバジン、トリアセテートのタキシードツイルについても見ていこう。
製品染めシルクとは文字通り、縫製し終わった製品に染色加工を施し、独特の風合いや生地と縫製糸との色調のコントラストが楽しめるもの。軽やかで上品かつ滑らかな光沢を放ち、天然素材ならではの味わい深い経年変化や丈夫さによっても、長期にわたって愛用するにふさわしいものだ。高級感のある素材にあえて一手間を加え、ニュアンスや奥行きといったものを表現しているのが、いかにも<ヨウジヤマモト プールオム>らしい。
同じくコットンギャバジンも、その堅牢性や着用を重ねることによって生まれる味に特徴がある天然素材。<ヨウジヤマモト プールオム>にとって欠かせない要素のひとつでもある、ミリタリー由来のアイテムやデザインとの相性の良さもポイントだ。
適度な厚みとハリがありながら、しなやかで軽やかな着心地を生むコットンギャバジンは、このブランドならではの流麗なシルエットと合わさることで、モッズコートやショートブルゾン、カーゴパンツなどのオーセンティックなアイテムをスペシャルな逸品へと昇華させている。
最後に紹介するのは、トリアセテートのタキシードクロス。つまり木材パルプを原料とした天然繊維で織り上げた、元来はフォーマル向けの光沢系織物だ。もしも数十年後に着用できなくなってしまったとしても、生分解性がある(土壌や水中の微生物により分解される)ため環境負荷がほとんどないという点も素晴らしい。
<ヨウジヤマモト プールオム>では近年、シーズンを問わず使用されているテキスタイルで、気品漂うツヤ感と柔らかさ、肌触りの良さという長所がある。メンズのカジュアルウエアとしては決して一般的なものではないが、ジェンダーや既存の常識に囚われないブランドの姿勢を象徴するものといえるだろう。
このフォーマル感のある素材を、今季はオープンカラーの半袖シャツやサルエルパンツというカジュアルアイテムに採用している。真夏の猛暑にもエレガントに対応しうる涼やかさを発揮し、対極的なキャラクターの融合によって生み出される絶妙な佇まいも魅力的。間違いのない、マストバイアイテムだ。
“身につけるアート”で示す、デカダンスとオプティミズムの融合
2022年秋冬の<ヨウジヤマモト プールオム>は、ヨウジヤマモト青山店を舞台にランウェイショー形式で発表された。写真機が登場した19世紀初頭に遡り、古い写真に写る男たちの洒落た着こなしを着想源としたという最新コレクションは、テーラードが中心の非常にクラシカルなもの。だが随所にヨウジ流の遊び心やモダンさを感じさせるものだった。そんななかでもとりわけ目を引いたのが、退廃的な世界観と荘厳な描写で知られるポーランドの芸術家、ズジスワフ・ベクシンスキー氏(Zdzislaw Beksinski)とのコラボレーション。主に死や絶望、廃墟などをモチーフとするその作風から、“終焉の画家”とも呼ばれる鬼才、ズジスワフ・ベクシンスキー氏。生涯ポーランドを出ることのなかったという彼は、2005年にすでに他界している。しかし内田すずめ氏との共通項も感じるこの孤高アーティストとの協業を決意させたのは、山本耀司氏自身がもつ死生観によるものかもしれない。
今季、ズジスワフ・ベクシンスキー氏の作品が採用されたのは、リラックスしたオーバーサイズのアロハシャツやロングシャツなど。このうち全5柄のアロハシャツは、伊勢丹新宿店メンズ館先行発売となる。タキシードクロスを使用したカジュアルアイテムと同様にこのアロハシャツも、デカダンス(退廃)とオプティミズム(楽天主義)という死と生、緊張と緩和といった相反する要素がマッシュアップされた、<ヨウジヤマモト プールオム>を象徴するような傑作だ。
「REDEFINING」という挑戦で、“定番”とはなにかを問い直す
アーティストとのコラボレーションとともに近年の<ヨウジヤマモト>を彩る新たな要素として欠かせないのが、フレグランスやリラックスウエア、タオル、ターバンといったライフスタイルコレクションだ。ジェンダーレスな新フレグランスシリーズとして登場した「オドゥール ヨウジヤマモト」は、「香水嫌い」とも言われる山本耀司氏が、強い香りによってつける人の個性を覆い隠してしまうことのないように、そしてつける人やシーンを選ばないように意識したという、繊細で軽やかな香り。オー・デ・コロンやルームディフューザー、サボン、リネンスプレーなど、バリエーション豊富なアイテムを展開し、日常のあらゆる場面でお気に入りの香りに包まれることを可能としている。
おうち時間など他人と対面しない場面でより深いリラックス感を味わいつつ、<ヨウジヤマモト>のデザインコードに準じたスタイリングを楽しめる、リラックスウエアも見逃せない。巷で人気の「パックT」ならぬ「パックポロ」(2枚入りポロシャツ)や、裏毛コットン素材のスウェットフーディー、パンツなどは、いずれもシーズンを問わず買い足すことのできる、新定番となりそうだ。
また昨年12月に発売したばかりのオーガニックタオルシリーズには、新デザインのビッグタオルやタオルターバンが加わった。生産を請け負う<イケウチオーガニック>は、上質なタオルの生産地として世界的に知られる、愛媛県今治市のオーガニックコットン専門タオルブランド。工場・直営店の消費電力のすべてを風力発電でまかない、世界最高水準の安全な繊維製品の証であるエコテックス・クラス1まで取得しているという、品質にも企業姿勢にも信頼の置けるコラボレーター。
その新作タオルは、サイズ、デザイン、色味、パイルの長さなど、細部にまで徹底的にこだわったオリジナル仕様。ラグや大判ストール、タオルケットなど、自由な使い方が楽しめる。柄には<ヨウジヤマモト プールオム>のアーカイブからピックアップした、「鳩」や「スカルローズ」というアイコニックなモチーフを採用し、シグネチャーロゴとともにジャガード織りで表現しているという名品だ。
このリラックスウエアやタオルなどは、<ヨウジヤマモト メゾン>という名のもとに、ライフスタイルカテゴリーのさらなる充実を担っていくことになる。
これまで<ヨウジヤマモト プールオム>には、白Tや5ポケットのデニムパンツなどを除き、シーズンを問わず購入することができるような、いわゆる“定番”アイテムは存在しなかった。しかし社会の規範に縛られることなく、自由な精神を“背中で語る”というダンディズムがブランド創設からおよそ40年も変わることなく進化を遂げてきたのは、間違いなくその根底にパターンやテキスタイル、加工などの“定番”的デザインコードが存在し、異なる才能である気鋭のアーティストとの協業からインスピレーションを受け、社会の変化に合わせて新たな取り組みに挑戦することを“定番”化させてきたからに他ならない。
“定番”というアイデアによって、ヨウジヤマモトを“再定義(REDEFINING)”する───。こんなワクワクするようなポップアップを、見逃すわけにはいかないだろう。
- 伊勢丹新宿店メンズ館1階 ザ・ステージ
Text:Junya Hasegawa(america)
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