【対談】サステナブルと向き合うことはファッションを愛し続けるためにできることのひとつ
ファッション業界は環境負担が大きいという現実
谷口:岡野さんが環境省で「ファッションと環境」のタスクフォースを立ち上げたきっかけはなんだったのでしょうか。岡野:生産や染色の過程で大量の水を使用して排水する、CO2を排出するなど、ファッション産業は環境負荷が大きいと言われています。ネガティブな意見もあるのですが、もともとファッションはひとの気持ちをワクワクさせてくれたり、豊かにしてくれるものです。服の価値って値段だけではないですよね。デザインもそうですし、デザイナーの想いもそう。それなら「サステナブル」であることもこれからの服の価値ではないかと考えたんです。
谷口:服をたくさん売っている自分たちからしても、服を着ることとサステナブルであることが両立できる世の中になりつつあるような気はします。
岡野:SDGsという言葉が世の中に浸透して、環境を守るためにやらないといけないと皆さん意識はしていると思うのですが、いざアクションとなるとなにをすればいいのかわからないという声も聞きます。衣食住というようにファッションは暮らしにはかかせないものですから、自分の身近なところから始められるサステナブルを「ファッションと環境」というテーマで発信していければと思ったんです。webページではサステナブルファッションに取り組んでいる企業さんの事例も取り上げています。
檀:私は岡野さんたちが製作した環境省のホームページを偶然目にしたんですけど、「環境省っぽくないぞ、おしゃれだぞ」って思いました(笑)。「ファッションと環境」というテーマにあって、トップに掲げられていたのが「今持っている服を大切に着よう」でした。これは〈サルト〉が取り組んでいることそのもので、私のために作ってくださったホームページじゃないかと思ったぐらいで環境省にすぐメールをしました。
岡野:檀さんの思いの丈が綴られたメールが僕のところに届きました(笑)。
谷口:そのときに檀さんのなかにも「サステナブルファッション」のためになにかアクションを起こすべきという想いがあったんですか?
檀:ホームページには「お直し」がキーワードのひとつとして挙げられていました。なので、そのお直しというモノを具体的な実例で紹介していく必要があるんじゃないかと岡野さんにお伝えしたんです。
岡野:サステナブルな素材で作った服や靴というのは増えてきていますが、本質はやはり「今持っている服を大切に着る」ことだと思っていたので、それをビジネスとして実行している檀さんからのご連絡はうれしかったですね。
谷口:SDGsって実はよくわかっていないというのが多くの方の本音だと思うんです。でも<サルト>さんのように「服のお直し」という自分に身近なところでサステナブルを実践してくださっている企業があるとわかりやすいですよね。
檀:服のお直しというサービスは時代の影響をすごく受けるんです。震災のときは世の中がモノを大切にすることに気持ちが向かいお直しの持ち込みが増えました。今はサステナブルへの意識から着なくなった服をリメイクして蘇らせたいというオーダーが増えています。「メタボ」という言葉が流行したときは頑張ってスリムになった方からウエスト直しの注文が殺到しました(笑)。
谷口:<サルト>さんがメンズ館の常設ショップになったのは2014年からですが、お客さまのニーズは確かに変わりました。レベルの高いお直し技術を求めるというよりも、「もう少し長く着たい、もう一度着たい」というお客さまばかりです。結果的には服をより愛する方たちが増えたんじゃないでしょうか。
大切な一着を生まれ変わらせるのが〈サルト〉のお直し
谷口:3月23日(水)から三越伊勢丹グループでは「三越伊勢丹が考えるサステナブル」をテーマにthink goodキャンペーンがスタートしますが、メンズ館5階では<サルト>さんを大々的に取り上げます。
檀:お直しというとどうしてもボタンの付け替えや裾丈の詰めのようなイメージがあると思うんです。ですが、一着の洋服がまったく新しい姿に生まれ変わることも<サルト>のお直しということを知っていただきたいです。
岡野:「お直し」という言葉の概念を変えていきたいですよね。
谷口:<サルト>さんでは実際に着物がワンピースになったり、シャツに変わったり、大胆なリメイクを手がけているので、その実物の展示も考えています。think goodでのプロモーションをきっかけに、<サルト>さんのように服を生まれ変わらせる「お直し」に取り組んでいる企業があることを知っていただきたいと思っています。
檀:私は「お直し」という言葉、概念を海外にも持っていきたいんです。イタリアや英国で<サルト>のことを話すとすごくマニアックなことのように捉えられるんですけど、決して特別なことではないですから。なので、その前にまずは日本で「お直し」を根付かせたいんです。
谷口:自分がThink goodキャンペーンで<サルト>さんにお声がけしたのは、まさに檀さんの想いと同じです。祖父や父が愛用していた服を受け継ぐ、引き継ぐ、それを現代で着こなすことを提案したかったんです。服が古くなったら買い替える、捨てるのではなく、お直しをして「一着の服を長く着る、長く愛し続ける」という選択があることに気づいていただけたらと思います。
岡野:ファッションを楽しみながらサステナブルに貢献できる選択ですよね。
クオリティの高い服を選ぶことがサステナブルにつながる
檀:<サルト>のお客さまは若い世代もすごく増えていて、若い方ほどSDGsへのアクションは積極的なように感じています。岡野:SDGsに関心を持ち、「このままではいけない」と選択を探している若い世代の方が増えているので、こちらとしてもさまざまな切り口を提示していかなければと思っています。「ファッションと環境」というチームも立ち上がってまだ1年弱なので、まさにこれからです。
檀:百貨店などでクオリティの高い服を買って、それをケアしながら着続けるというのは車のメンテナンスに近いと思っています。洋服もアフターフォローができることに多くの人が気づくと、若い方にも「いい服を買おう」という空気が広がっていくのではないでしょうか。
岡野:売って終わり、買って終わりではなく、そこから関係性が始まるのは百貨店だからこそですよね。
谷口:百貨店は元気がないと言われ続けていますけど、百貨店だからこそ提供できることがまだまだあると考えさせられました。
岡野:これまでのような大量生産、大量消費というのはビジネスとしては行き詰まってきていますし、数回着ただけで、あるいは一度も着られることもなく廃棄されている服があるという現実は、作っているデザイナーさんもメーカーも、売っている百貨店も、誰もハッピーな状況ではないです。ファッションは時代を創っていくモノで、時代を映す鏡だと思っているので、今はサステナブルをベースにしながらどれだけワクワクとした提案ができるかということではないでしょうか。
谷口:そうですね。自分たちも積極的な提案で頑張らないといけないですね。おふたりのお話はとても勉強になりました。今日はありがとうございました。
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- 開催場所:伊勢丹新宿店メンズ館5階 メイド トゥ メジャー
- 価格:スーツのリメイク 55,000円から
- お渡し:約1か月後から
*お直し箇所によってお値段が変わります。詳しくは店頭スタッフにお尋ね下さい。
*お持込みの衣料品に第三者の商標権、著作権、肖像権、パブリシティー権などの 存在が予想される場合や、衣料品のデザインなどが公序良俗に反すると思われる 場合には、 製作をお断りさせていただくことがございます。
データ 「可燃ごみ・不燃ごみに出される衣類の量と焼却・埋め立て量」
『「ファッションと環境の現状」や、「サステナブルファッションへの関心」のほか、「ファッションとの環境へのアクション」など、“これからのファッションを持続可能に”をテーマにさまざまなコンテンツをご覧いただけます』▶「環境省_サスティナブルファッション」
*撮影時のみマスクを外して、撮影を実施しています。
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伊勢丹新宿店 メンズ館5階 テーラードクロージング
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