【特集】<TOKYO SANDAL>ブーツメイドなサンダルを語る。デザイナー徳永勝也氏×伊勢丹バイヤー宮下対談
ここ数年、夏場になると伊勢丹新宿店にも、サンダル履きで訪れる人は少なくない。昔ならカジュアルなサンダルは海山のリゾート専用、もしくはワンマイルエリアでちょっとつっかける、そんな履き物だったはずだ。しかし今、ニュースタンダードな時代、サンダルの地位は向上し、革靴やスニーカーに比肩する正式なシューズのカテゴリーにある。そんな新たなドレスコードの時代に、<TOKYO SANDAL/東京サンダル>は誕生した。デザイナーは徳永勝也。ざんばら髪を束ね、大型バイクを駆る、ワイルドな彼の素顔とともに紹介しよう。
開催場所:伊勢丹新宿店メンズ館地下1階 紳士靴
初めて作った靴は、レディース靴
「初めて靴を作ったのは、学生のとき。友人がファッションショーをやるから、靴を作ってくれないかと頼まれたんです。手を動かすことが得意だったので、ふたつ返事で引き受けました。それが、こんなに難しいものだとは…」。
以来、靴作りに魅せられ、ブーツを愛し、今日に至るまで、シューズデザイナーの肩書を背負う。
メンズ館シューズバイヤーの宮下と訪れた、ここ浅草の「The Boots Shop」は、シューズデザイナー徳永勝也氏の全コレクションが揃う場所。トタン張りの外装に、ブーツと革小物であふれかえる店内は、NYブロンクスあたりの倉庫を思わせる雰囲気がある、徳永氏が自らディレクションしたものだ。店前にはスタッフが乗る旧型のハーレーダビッドソンと、徳永氏の愛車であるヴェスパが停められていて男クサさが全開。なのに最初に作ったのは、レディース靴だったとは意外だ。
宮下 当時は90年代半ばですか?
徳永 アントワープ6が日本でも注目されてた頃。ファッションに勢いがあって、面白かった時代です。僕も、今みたいなスタイルじゃなかったんです(笑)。27歳で<Rolling dub trio>を立ち上げたときも、最初はブーツじゃなくて短靴を作ってたし。
宮下 えっ、それじゃ、なぜブーツを?
徳永 バイクが好きだったこともありますが、あるときブーツを作ってみたんです。やっぱり老舗のワークブーツを参考にするじゃないですか。そうしたら日本の技術では、どうやっても作れない工程がいろいろと出てくるんです。似たようなことはできるけど、より本物に近づけたい、再現したいと試行錯誤しているうちに、極めていった感じです。
宮下 国産ブーツとして注目され、雑誌にも紹介されていた<Rolling dub trio>が気になって、僕も何度か足を運ばせてもらいました。かなり、こだわりが強くて、のめり込む方なんだなって(笑)その頃、店にサンダルがあって、ちょっとびっくりしたことを覚えています。
徳永 一番最初は、サンダルというより一枚革のストラップシューズで。オールシーズン履ける「ヒールホールド スリッポン」というモデルでした。踵部分の革を外側に折り返すことでヒールにフィットする形状でストラップを使ったデザインでした。本格的にサンダルに取り組んでみようと思って、<TOKYO SANDAL>というブランドで独立させたんです。
日々、進化を続ける「TOKYO SANDAL」
宮下 たしか今よりソールも分厚かったですよね。
徳永 3ミリほど分厚かったと思います。鞣し方の異なる革を張り合わせて、ソール自体がシャンク(※靴のインソールの埋め込む芯地)の役割を果たすようにしています。ヒントになったのはバタフライチェアやスケートボードに使われる成形合板。硬いけどしなることで、反発して歩きやすいうえに、アーチのサポートができるように土踏まずがカーブしています。この技法は、いまも毎年少しずつレシピを変えて継続しているんです。
宮下 普段ブーツを履く人が、夏にスニーカーは履かないけど、ビーサンじゃヤワ過ぎるとして人気だったんですよね。
徳永 僕自身、某有名サンダルを履いていましたが、もう少し足裏に合ったものが欲しいなと感じていて。聞いたら、周りにも「合わない」っていう人が、結構いることに気づいたんです。それで人間工学に基づいた、もっと日本人の足裏に合うモノを作ろうと思ったのがきっかけです。
宮下 革も国産でしたか?
徳永 最初はそうでした。栃木レザーとかも使ってみたり。でも最近は、サステナブルやエシカルといった時代のキーワードに影響されたわけじゃないけど、もっと柔軟なモノ作りに意識が変わってきました。今回のコレクションの多くには、エコーレザーを採用しています。
宮下 地球環境に優しい作り方で、サステナブルを掲げる、Apple Watchのストラップにも採用されてるレザーですね。いま世界中が注目しています。
徳永 ソールもオリジナルなんですが、一部ビブラムソールを採用したりもしています。
宮下 このソール、オールソール修理もできるんですよね。
徳永 革靴と同じように、サンダルも修理して長く履くという考え方は大切だと思っています。これまでは、あまり自分の作品を説明することなく、わかってくれる人だけに伝わればいいやと思っていたんですが、これからは伝えていくことも使命だなって思っているんです。
遂に満足できるレベルに達した自信作のグルカ
宮下 <トーキョーサンダル>は「セッタ」や「タビ」、「ワラジ」「ミズヒキ」といった、和の要素あるサンダルのコレクションが人気です。もともと日本は草履の文化ですが、レザーのサンダルに「和」のテイストって面白いですよね。
徳永 トングタイプのサンダルというと、草鞋が思いついたので、実際に本物を買ってきて分解して研究したんです。突っ掛けタイプのサンダルっていうと、温泉旅館の玄関に用意されている、あのカランコロン鳴るサンダルを思い出させて、それで「オンセンサンダル」というモデルを作ったこともあります。でも、とくに日本にこだわってきたわけじゃないんです。今回、伊勢丹のポップアップには、グルカサンダルが登場します。
宮下 今年グルカは、メンズ館でも夏前からすでに動き始めていて、めちゃくちゃ人気です。
徳永 これまでグルカは、2度ほどトライしてきたんですが、納得行くものじゃなかったので、今回再挑戦させてもらいました。ようやく納得の行くモデルが出来上がりました。
宮下 形も美しいですね。トウステッチが入っていることで、ちゃんとつま先が立体的に立ち上がってます。
徳永 そこが、ポイントなんです。グルカって、トウ部分のレザーが当たって痛いじゃないですか。靴って、履いているときに不快な要素は、できるだけ排除したいので。
宮下 オリジナルパターンのソールは、どこか日本の家紋にある「三つ盛り亀甲」を思わせるデザインです。金具もオリジナルで、アーチサポートのあるソールも履きやすさのポイント。それだけでなく、このグルカはコーディネートに取り入れやすそうなところが良いですね。
徳永 そこも、やはり考えています。僕自身、コーディネートに合わせにくい靴は履きたくないし、足元だけ浮いても嫌なので。
宮下 ベーシックカラーなところも合わせやすさのポイントです。伊勢丹のお客さまは圧倒的に黒のレザーサンダルを好む傾向にあるので。
徳永 同じデザインでサイズ展開を豊富に揃えているのも特徴です。店に男性と女性2人で来て、同じモデルを男性は黒、女性は白で買われていく方もいらっしゃいます。
宮下 サンダルって、もうかなり革靴感覚で市民権を得ていると思うんです。デパートにサンダルで来られるお客さまは、以前より格段に増えました。今回のポップアップショップで、これまで<東京サンダル>を知らなかった人には、ぜひこのブランドを知っていただきたいですし、ご存知の方には、ぜひ新作のグルカを見ていただきたいです。
徳永 秋からはブーツのコレクションも伊勢丹で展開します。その前哨戦となる靴博では、コードバンのブーツを発表するので、ぜひ見ていただきたいです。
- 開催場所:伊勢丹新宿店メンズ館地下1階 紳士靴
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Text:Yasuyuki Ikeda
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