雑誌『Begin』が仕掛ける「新しい生活様式」のためのレザーブランド
なんでもできるスマホの普及とキャッシュレス化が進んだことで財布の役割が変わってきたり、テレワークの推進で家事と並行して自宅で仕事をしたり、新しい生活様式は確実に私たちの生活に浸透しています。すると革小物の存在意義にも変化が見られ、新しいデザインや仕様のレザーアイテムが望まれるようになりました。「でも革質は、昔ながらの上質にこだわりたい!」そんな、こだわりの革好きたちのために、〈TOKYO LEATHER CLUB/トーキョー・レザー・クラブ〉が立ち上がりました。
〈トーキョー・レザー・クラブ〉商品一覧を見る
現代人のためのレザーアイテムを読者とともに企画制作
いま革好きの間で、〈トーキョー・レザー・クラブ(以下TLC)〉が話題となっている。TLCは雑誌『Begin』が運営するECサイト「Begin Market」で立ち上げた革製品専門ブランド。昨秋ローンチされ、商品点数はまだ財布とベルトの2品目だが、高品質なレザーを使ったアイテムは、すでに完売商品も出るなど人気なのだ。たとえばすでに完売となった“ガチャベルト”(追加予定あり)は、近年定番化したセットアップスーツに合わせるベルトとして誕生したものだ。スタンプ入りで品質保証されているホーウィン社のクロムエクセルレザーを使った細幅ベルトは、剣先を垂らすことを想定して長さが設定されている。ビジネスのときはしっかりループに通しつつ、カジュアル時はリラックスした感じに剣先を垂らすことができる。さらにバックルは独・フィドロック社のマグネットバックルを採用し、「カチャン!」と小気味良くセットできる留め外しが心地いい。
3つ折り財布はホーウィン社のクロムエクセルレザーを採用したものと、国産コードバンの2種類を用意。ホーウィンのモデルは人気の“N0.8カラー(バーガンディ)”を指定するなど、革好き、靴好きなら垂涎ものの選定だ。この財布、札入れ部からコインケースとカードケースが取り外し可能となっていて、ワンマイル外出や手ぶらで出かけるときなどは、必要なピースだけ持ち歩ける仕様になっている。スマート決済が一般化している現代に即したデザインは、現代人の都市生活に相応しいレザーアイテムを作り出す、TLCらしいアイデアといえる。
〈TLC〉のブランドのテーマは「革好きのための“真心結社”」。新しい時代に即した革製品の企画とともに、最高級レザーを使い、職人仕事を駆使した作り込みまで、『Begin』読者のお眼鏡に適う革製品をリリース。さらに今後は、読者から「こんなアイテムが欲しいんだけど」という声を集め、実現させようという動きもあるという。
この2月、伊勢丹新宿店メンズ館では、TLCと手を組んで、新たにリリースされるマーケットバッグ他、これまでのコレクションを一同に介したポップアップが開催される。これに合わせ、マーケットバッグの最終チェックに都内のファクトリーを訪れた関係者に話を聞くことができたので、その模様をレポートしよう。
目利きの『Begin』と老舗のレザーファクトリーがタッグ
「『Begin』の読者は目利きが多く、とくに革製品にはフェチとも言うべきこだわりの強い方が多いんです。そういった方々に満足いただける製品を、採算度外視で作り出すために、オーガナイザーの小野寺さんと東京を代表するレザーファクトリーのSADOさんにご協力をいただきました」
そう話すのはビギン編集長・光木拓也さん。自身もかなりの“目利き”。光木さんが注目するアイテムは完売必至とも言われ、多くの伝説を生んできた張本人でもある。国内外のレザーファクトリー取材の経験も豊富で、いいものを見分ける目は確かである。そんな彼が注目したのが東京の下町にあるレザーファクトリー「SADO」だ。創業昭和26年というSADOは、これまで多くのセレクトショップ、ブランドのレザーベルトのOEM生産を手掛けてきたメーカーで、今回のTLC企画にはベルト以外の革小物にも挑戦している。今回の企画を担当する甲野 敏郎さんに話を伺った。
「これまで弊社はベルトをメインに様々なスモールレザーを生産してきました。TLCはベルト以外の製品も、これまでにない新しい時代のレザー製品ということで一緒に企画から携わらせていただいています。弊社が長年培った技術力をフルに発揮して、参加させていただいています」。
光木さんと甲野さんを結んだのは、自らもレザーブランドの企画・販売を手掛けているデルタ・小野寺武人さん。こだわりの商品ばかり取り扱う『Begin』でもお馴染みのメンツだ。
「以前、イベントでSADOさんとコラボさせていただいてからのご縁なのですが、今回TLCの立ち上げには、革を知り尽くし、技術力あるファクトリーさんの協力が不可欠だと考え、お声がけさせていただきました。SADOさんはレザーベルトがメインと思われていますが、スモールレザーの作り込みも非常にレベルが高いんです」。
オフィスにはスモールレザーのサンプルが所狭しと展示されているが、たしかにそのどれもが革質、縫製、コバの磨きまで完璧な手仕事がされている。聞けば長野県・飯田市に工場を構えているが、仕上げなど細かな作業は本社2階のフロアが工房となっていて、職人が腕を奮っているのだという。
許可をいただき2階へ上がると、10名ほどの職人さんが、真剣に作業に向き合っている。北側の窓に向かってレザーの焼印を押す機械で、TLCの刻印を入れる作業をしていた。「力の入れ加減が難しいんです。入れすぎると焼け焦げますし、足りないとカスレます」。革質によって手加減を変えるという、頼るのはすべて職人の「勘」。マニュアルのない工程に、職人気質の一瞬を見た。
厳選素材でサンプル5回制作したマーケットバッグが登場!
今回、マーケットバッグの企画は、伊勢丹メンズのバッグ担当バイヤー植松が、小野寺さんに送った一通のメールに始まるという。
「コロナ以降、男性のバッグの需要にも少なからず変化が見られます。とくにここ数年で一気に広がったエコバッグ、マーケットバッグは、お客さまから相談を受けることも多くなりました。小さくたためるエコバッグは、男性にとっては少々気恥ずかしいものが多いようで、ちょっとコンビニに行くのにも使える買い物バッグはないでしょうか?という声にお答えしたくて、小野寺さんに相談したんです」(植松)。
ちょうどその頃、小野寺さんも〈TLC〉でマーケットバッグの企画を考えていたという。小野寺さんが所有していたナイロンのエコバッグを、革でアレンジできないかと甲野さんに相談を持ちかける。最初は革を薄く漉いて折り畳めるクタクタのショッピングバッグを企画したのだが、耐久性が足りない。そこで裏地をつけ、端を折り返し2重にしてみたところ、今度は重すぎて持ち歩きずらいものになってしまった。それならあえて靴用の革を使い、しっかりしたマーケットバッグにしてはとサンプル製作5回目にして、ようやく納得のいく製品ができあがった。
「革はクラークスのデザートブーツで有名な英チャールズ.F.ステッド社のスーパーバックを選びました。ここんちの工場に取材に行ったことがあるんですが、一般的に革を鞣す際、アイロンで革を引っ張って繊維を引き伸ばして少しでも要尺を広く仕上げるんですが、ステッドはそれをやらないんです。だから革が密でしっかりしている。デザートブーツの吐き口が立ったまま、ヘロンとならないのは、そういう理由があるんです。毛足の短いスエードは、傷つきにくくて色が抜けにくく、この質感が長持ちするんです。ベージュカラーとブラックを選んだのも、クラークスのデザブらしい色を選びたかったからです」(光木)。
厚さ2ミリのスーパーバックを、エッジ切りっぱなしの状態でマーケットバッグの形状に縫製。一枚使いにしたことで裏側の強度も保たれ、バッグはしっかり保型されている、サイドの縫い合わせが角にないため、丸みがあるのも普段使いしやすいカジュアルな雰囲気だ。
2月16日(火)発売の『Begin』4月号誌上で詳細についてレポートされ、同日Begin Marketと三越伊勢丹のECサイトでも販売が開始される。そして2月24日(水)からは伊勢丹新宿店メンズ館地下1階でポップアップストアが開催の運びだ。これまでWEBでしか販売されていなかったアイテムが店頭で買える唯一の機会。ひと目見て、触ってから買いたいという方は、この機会をお見逃しなく!
〈トーキョー・レザー・クラブ〉商品一覧を見る
- 2021年2月24日(水)~3月9日(火)
- 伊勢丹新宿店 メンズ館地下1階 バッグ
Photograph:Hiroyuki Matsuzaki
Text:Yasuyuki Ikeda
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