〈ヴィブラム〉「コンパウンド(配合)」が拓く靴の未来。|ISETAN靴博2020


イタリアで登山靴のソールとしてスタートし、現在はラバーソールの代名詞的存在である『ヴィブラム』。その真価は、形 状とともに素材の「配合」にある。

グリップ性とトラクションを一貫して追求。


「私たちは、山で生まれたブランドなんです」。こう語ったのはヴィブラム・イタリアのパオロ・マヌッツィ社長。登山家であった創業者ヴィターレ・ブラマーニ氏は、安全で快適な登山を可能にするため、1937年、当時まだ革底が主流だった登山靴に、タイヤ製造の技術を応用したラバーソールを発表した。どんな状況下でも高い活動性を発揮することを意図し、「Carrarmato(カラルマート、キャタピラの意)」と名付けられたソールは、その後「タンクソール」とも呼ばれ世界中で人気を博す。


「CARRARMATO(カラルマート)」は、イタリア語で「キャタピラ」を意味する語をその名に冠した、〈ヴィブラム〉の代表的なソールパターンであり、創業者のヴィターレ・ブラマーニが手がけたパターンでもある。登山のために開発され、その後はカジュアルシューズやワークシューズなどにも使われ、広く知られる存在となった。

現在は登山だけではなく、ワークシューズや、ファッションなどのライフスタイル、そしてシューリペアに、幅広く高品質のアイテムを提供しています」とマヌッツィ社長。さらに彼は自分たちを「コンパウンド(配合)の会社」と称する。つまり、ゴムの組成によって、ソールに求められるさまざまな機能や性質を実現させるのだ。そして「創業当初から追求してきたことは、グリップ性とトラクション(摩擦力)」だとも。

さらに彼は、それは都会生活を送る我々の足元にはまだまだ不十分で、今も必要とされている要素だと言う。「みんな、実際に転んでみないとなかなか気づかないものですが」。現在は、より軽さや薄さを追求したソール開発の一方で、90%以上が天然由来の素材による「N-OIL」といった、環境にも配慮した配合のソールも登場している。もっとも、再生ゴムを使った「ECOSTEP」は’94年から販売されているというから、サステイナビリティに関しても同社は先駆的といえるだろう。



石油の使用量を90%以上カットした自然由来の配合でできた「N-OIL(ノイル)」。着色に関しても、ダヴィンチが画材として使用していた天然の色素を使っているという。写真はこの配合を使ってつくられたタンクソール。少し透明感があるような色合いが独特だ。

靴博期間中は会場内に〈ヴィブラム〉の特設ブースが出現。雨、ぬかるみ、泥など濡れた路面で優れたグリップ力を発揮するMEGA GRIP(メガグリップ)、濡れた氷上で安全に歩行するために開発されたARCTIC GRIP(アークティックグリップ)コンパウンドというヴィブラムが誇る2つのテクノロジーを、靴博会場に設置されたテストマシンで実際に体験できるデモンストレーションイベントを開催する。

Photograph:Takao Ohta
Text:Yukihiro Sugawara

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