〈アシックスランウォークリード〉未来に向けた革靴を考える。|ISETAN靴博2020
革靴とスニーカーの垣根を超え 独自の靴として認知される「ランウォーク」。 さらなる進化に込められた、 理想や思いについて聞いた。
GEL内蔵ソールが導く、革靴の未来。
近年、さまざまな場面でその名を耳にする〈アシックス〉のシューズ〈ランウォーク〉。今回、靴博にてプレゼンテーションされるのが〈ランウォーク〉の新たな地平、「ASICS RUNWALK LEAD (アシックスランウォークリード)」である。
「スポーツシューズをドレススタイルに落とし込む、という発想で、3年以上かけて開発されました」
こう語るのは、当初から開発に携わってきたウォーキングデザインチームの三浦裕司氏。ちなみに名称の「LEAD 」とは、「Life to Enjoy, Active, Dynamic 」の頭文字をつなげたもので、そのキーワードは、〈アシックス〉創業者鬼塚喜八郎氏が1983年に〈アシックスウォーキング〉を始める際に掲げた、「健康と豊かな感性を持った人間性の回復」というコンセプトを、現代の状況を踏まえて見直した結果、導かれたものという。当時企画チームに所属していた三浦氏は次のように話す。
「その特徴は、トラディショナルなドレスシューズのスタイルと、衝撃緩衝材GELを搭載したソールが、靴の機能やつくりとしても、外見的にも、組み合わされていることにあります」
アッパーはフランス原皮を国内で鞣したキップレザーを使い、足を包みこむような履き心地のボロネー製法でつくられている。その一方でソールは、スポーツシューズ開発者も交えたディスカッションや、アシックススポーツ工学研究所でのテストなどを繰り返して、クッション性を発揮する衝撃緩衝材GELも含め、やわらか足を包み込む履き心地に調整されているという。さらに、今回はラストもゼロベースから開発された。
〈アシックスランウォークリード〉の最終サンプル。ラウンドトウの新ラストの形状は、100万人以上の足形データを基に設計されている。
「革靴において、このアシックスランウォークリードは、いわば進化の未来形ではないでしょうか」
三浦氏のこのように明快な言葉は、彼自身の経験から導かれたものでもある。英国コードウェイナーズカレッジで靴に関して学んだのち、イタリアにてシューズデザイナーとしてさまざまなブランドを手がけてきた三浦氏は、その過程で、革靴のありよう、中でも革底に疑問を感じるようになったという。
「100年以上も変わらない製法のレザーソールには、靴づくりとして、それ以上の先が見えなかったのです。現状を打破し、未来に向け新しい靴を生み出せるのは、こうしたテクノロジーを取り入れた靴づくりなのではと思いました」
そして、今回の新たな靴が確立した「ドレススポーティシューズ」をどう発展させていくかがデザイナーとしての関心事だとも。
「この形は、スニーカーではラフすぎて、ドレスシューズだとカタすぎる、ビジネスシーンの今を反映したものでもあります。快適に歩くことから、履くことが喜びをもたらし、より活動的になる、そうした靴をさらに追求したいですね」
三浦裕司
〈アシックス〉ウォーキングデザインチーム所属。英国コードウェイナーズカレッジにてシューズデザインを学び、卒業後はイタリアにてシューズデザイナーとして活動した後、〈アシックス〉入社。〈ランウォーク〉とセレクトショップとのコラボレーションなども手がけている。
photographs:Takao Ohta
text:Yukihiro Sugawara
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