2019.10.09 update

Vol.11 <amachi.> × Kurina Ninomiya|アートとファッションの間をたゆたうニットの未来(2/2)

10.16 Wed -11.01 Fri
伊勢丹新宿店 メンズ館2階 メンズクリエーターズ/アートアップ
一旦前半部分の取材を終えると、一向は吉本さんの手引きのもとアトリエ近くの山中へ。


こちらは普段吉本さんが気分転換をしたり、自然を感じたいときに訪れている場所だ。山道を登ることおよそ20分、街並みを一望できる場所に到着。初秋の心地良い風が吹くなか、今回の展示についてのことを中心に話を聞いた。


今回の展示の見どころは光を題材にした重層的なモチーフ


 

 

ーー展示会のオファーが来たとき、二人はどんな気持ちだったのか。

 

二ノ宮:単純に『人に見てもらえる! やったー!』っていう感じですかね(笑)

 

吉本:伊勢丹新宿店メンズ館2階っていうのは本当に都会の中心で、人の行き来もすごく多くて、自分にとっては都市のイメージそのものという感覚です。そういった場所にもすごく興味がありますし、そこで何かをできるというのは良いチャンスだと思っています。

 


ーー国内のみならず、海外からもお客さんも来場するが、今回の展示ではそういった部分も意識しているのだろうか。

 

二ノ宮:そうですね。結果的に人や情報で溢れる環境を意識したものになりそうです。まだ制作途中なのですが、今回の〈amachi.〉の秋冬のコンセプトは『光の記録』で、そこと繋がる「部屋に訪れる光や陰影」を出発地点にしています。

実は7月に、高円寺にある古い建物の2Fの屋根裏部屋みたいな「pocke」というスペースで滞在制作をしていたのですが、そこで作業をしていたら、そこに蜂が巣の材料になる木材の繊維を集めに来ていたんです。それが気になって蜂の事を調べていたら、そもそも蜂自体が社会性昆虫って呼ばれていて、女王とか生殖のための雄とか、それぞれに役割があって、集団で営んでいて社会性があるというところが見えてきて。それと屋根裏部屋みたいなひっそりとした場所で、訪れる光と陰影を観察するだけの日を何日間か過ごしていたら、そこが秘密の部屋に思えて来たんですね。社会との距離の取り方が最近の関心ごとだったから、人が社会から離れていくイメージやその方法についてだんだん考えるようになって……。

そこから観点が社会と一人の人間との距離感というか、そういう部分に徐々に移行していって。今回の作品はそういった、色々層が重なったものになっていると思います。

 


吉本:新宿っていう、社会を大いに感じる場所で、個展を通じてそういうパーソナルな部分を出すというのもまた面白いっていう。〈amachi.〉と新宿って、一見相容れなそうですけど、根本はすごい似ているのかもしれないですね。おそらくこのアートアップの企画を行なったことで、今後のもの作りにも何らかの影響があると思います。

 


二ノ宮:どっちも自然といえば自然ですからね。同じ生き物がいるわけですし。

 

吉本:すごく自分と近い環境で個展を開催するよりも、より異質な場所とかより異質な人に向けてやった方が表現の質も振り幅ができていいですよね。


ーー今後のブランドとしての展望を、吉本さんはどう考えているのだろうか。

 

吉本:ファッションを表現の手段として選ぶ時に、ずっと死ぬまでファッションをやっていきたいとは思っていなくて。ある一つのジャンルを突き詰めて、そこで突出することによって違うジャンルに波及できるっていうものとして1ジャンル選んで、それがファッションだったのです。ブランドはまだまだ小さいですが、3年めになってようやく少し未来が見えてきたので、今後より一層コラボレーションだったり、違うジャンルとの取り組みをやっていきたいですね。一つのジャンルとしてではなく、もっと大きな考え方や思考の方向として表現できたらいいなって思います。



イベント情報
amachi. × Kurina Nimomiya
「Obsevation Records of Light」
□10月16日(水)〜11月1日(金)
□メンズ館2階=メンズクリエーターズ
詳細はこちら▶

 

Text:Kei Osawa
Photo:Hideyuki Seta


お問い合わせ
メンズ館2階=メンズクリエーターズ
03-3352-1111(大代表)