<WH/ダブルエイチ>|ふたりの洒落者がつくる、現代に有効な靴とは。
──イセタンメンズ別注モデルがISETAN靴博に登場するそうですね。
干場 ぼくはプレーントウを好んで履きます。ミリタリー由来のシューズなので、キャップトウほどかしこまらないで済むからです。そんなぼくが冬に履きたいとかねてリクエストしてきたのがジップアップのブーツでした。
坪内 ペコスブーツをモチーフとしつつ、ステッチまでブラックで染めて、木型もいちからつくりました。
干場 ご覧いただければわかるように、筒がとっても細い。テーパードさせたデニムとの相性は申し分がありません。
坪内 今日はサンプルが間に合わなかったけれど、干場さんが大好きなプレーントウももちろん仕込んでいますよ。ミッドソールにレッドをかませたプレーントウです。
干場 インソールも真っ赤っかなので、座敷に上がるようなシチュエーションに履いていけば女子受けも抜群です(笑)。
ツーといえば、カー。
──それにつけてもドレス顔のアッパーにスニーカーソールを履かせるという発想にはしびれました。
坪内 履き心地を追求したシューズって、それまで野暮ったいイメージしかなかった。しかし、やりようはあると思っていました。遡れば90年代のイタリアにはその兆しがみてとれた。そろそろやりたいなと策を練っていたところ、<コールハーン>の「ルナグランド」が出た。
干場 あれは衝撃でした。ただ、ぼくにいわせればすこしカジュアル過ぎた。いまのビジネスシーンで履けるシューズができないかって悶々としていました。
──そんなときに坪内さんとご一緒する機会があったわけですね。
干場 ええ。これ幸いと思いの丈をぶちまけました。ツボさん行きつけの立ち呑み屋からはじまった初会合はカラオケまで堪能するフルコースでした(笑)。腰を抜かしたのは、想像と寸分違わぬサンプルが上がってきたこと。打ち合わせ自体は10分かそこらだったのに(笑)。
──それは60歳を過ぎても衰えることのない強靭な感性、そして40年かけて蓄えた経験の賜物ですね。
干場 ツボさんだからできたことだと間違いなく思うんですが、WHにはプレーントウだけで6型あります(笑)。
坪内 ファーストコレクションはよりドレッシーな顔つきを意識しました。コバはウェルトをかませたようなツラにして、張り出しも抑えた。干場さんやお客さんの声に応えているうち木型もソールもボリューミーになっていきました。
干場 張り出したコバはいろんな意味で(笑)、男の憧れですから(誌面では書けないのですが、心理学者のフロイトも顔負けの考察でした。気になるかたは靴博の対談で尋ねてみてください)。
──WHはどこか遊び心が感じられるのもいい。ふたりは業界で1、2を争うモテ男ですが、共通項はチャーミングなところ。マインドが表れているんですね。
Text:Kei Takegawa
Photo:Yoshihiro Tsuruoka