ウェブメディア『Shoegazing(シューゲイジング)』が開催する、靴づくり世界選手権とは。
2018年に第1回が開催された、『World Championship in Shoemaking(靴づくり世界選手権大会)』。この大会を発案し実行したのが、スウェーデン発のウェブメディア『シューゲイジング』を主宰するジェスパー・インゲヴァルドソン氏である。
もともとジャーナリストとして活動していたジェスパー氏は、あるクラシックなウールコートの購入をきっかけに、紳士の装いに関心を持つようになり、早速メンズスタイルに関するウェブサイトを始めた。ほどなくしてロークの靴との出合いから紳士靴の世界を追求し始め、『シューゲイジング』を立ち上げたのだった。
そんな彼が靴づくりの選手権を始めるにあたって念頭にあったのは、古き良き時代のコンテストだったという。
「写真や実物で、100年以上も前のコンテストの靴を数多く見ました。20世紀初頭には靴のコンテストは大きなイベントで、多くの靴職人たちがすばらしい靴を出品していました。私はその時代に回帰したいと思ったのです」
このように語るジェスパー氏。また彼は、より多くの人にハンドメイドの靴を知ってもらい、それが現代に有意義なものであると理解してもらいたかった、とも。ゆえに世界各国で上位者の展示を行えたことは、大きな成果だったと話す。
第1回はブラックのキャップトウオックスフォードが課題靴で、世界から30の靴職人が作品を応募した。第2回の課題はブラウンのフルブローグオックスフォード、前回を超える40名の参加があった。
「参加者たちから、選手権の靴をつくったことで、よりよい靴職人になれた、という声を聞いてうれしく感じました。それはまた、彼らの将来の顧客が享受する価値をもたらしたことになるのですから」
現在は靴づくりの選手権のほかに、靴磨きとカラーリングの選手権も同時に行なっている。「靴磨きの選手権は、靴のマニアではない人たちにも訴求するので、3大会の組み合わせは実に有効だと思います」とジェスパー氏。今後はアーティスティックな靴づくりの選手権もやってみたいと、さらなる意欲を見せていた。
1st DANIEL WEGAN
ブラウンのフルブローグオックスフォードが課題だった第2回の靴づくり選手権大会。第1位を獲得したのは、前回第2位だったダニエル・ウィガン氏。細身でダイナミックなシルエットが目を惹くが、特筆すべきはアッパーのクロージング(縫製)で、ウィガン氏の手作業で縫われている、1インチ21ステッチは通常ミシンよりも細かいという。
2nd CHRISTOPHE CORTHAY
ウィガン氏同様2回目の出品。前回は極めてアーティスティックな作品だったが、今回はオーセンティックなスタイルをベースに、ディテールに独自の美意識を盛り込んで順位を上げた。アッパーに現れる曲線を引き継ぐようなヒール底部の形状や、各所に配されたオレンジのカラーリングが、彼の個性を物語っている。
3rd EIJI MURATA
「あたかもコンピュータか、3Dプリンターでつくったような精確さ」とジェスパー氏が評した、日本人靴職人が手がけた作品。ラストシルエットやスタイルは先の2作に比べオーセンティックだが、ディテールは実に繊細。ごくスムーズに仕上げられたヒールの積み上げ、破綻のないライン。それらは靴に「静けさ」を生み出している。
World Championship in Shoemaking 上位作品をISETAN靴博2019で展示。
9月11日(水)夜には「shoegazing」編集長ジェスパー・インゲルヴァルドソン氏と上位3名によるトークショーを開催予定。