靴から生まれたアート。
ハンドメイドの靴づくりをベースとした作品。──三澤則行

三澤則行
ビスポークの靴職人として独立した時から、靴づくりと平行して、作品づくりをおこなってきた。「クラシックな紳士靴では表現できないようなものを作品として発表していました」と三澤さん。当初は手間暇をかけた作品が多かったが、手間や器用さとアート性との違いを感じ、最近ではクラフト的なアプローチから離れたものを
つくることも多い。「自分にしかできない、靴づくりをベースとした作品とは何かを、いつも考えています」。


スニーカーの「劣化の正当化」を作品に。──SHOETREE/シューツリー

杉本浩介
念頭にあったのは、ゴミとも見なされるようなものにいかに価値を生み出すか、という遊び心だったという。かくして導かれたテーマが「劣化の正当化」。加水分解したりして履けなくなったスニーカーを使い、植物とともに再生させる。侵食されたように、アッパーのデザインにあわせてコケを配置して、森で置き去りにされた靴をそのまま持ってきたイメージを具現化した。今回のISETAN靴博には、新たに花瓶型の「KICKVASE」が登場。

ISETAN靴博に合わせて制作された花瓶型の「KICKVASE」。緑の部分はコケ、靴が置かれた板には焼きを入れた桐を使っている。マネキンを使って表現された脚部の内側にはグラスが配されて、草木をいけることができる。

KICKVASEのバリエーション。花瓶型であることがわかりやすいようにあえて切り花をディスプレイした。従来は小さな鉢植えのグリーンを配した作品が多かったが、こうした花瓶型は花卉によって印象が大きく変わるのでより多彩な楽しみ方ができそうだ。
新たな地平を目指し、あえて面倒な方法を。──バナナヤマモト

叶佑也
「点描画家」として活動して、今年で3年目。前職は保育士、灰谷健次郎作品に触発され、子どもの感性を得るため選んだ職だった。そしてより広い視野、新しい体験を求めて絵を描き始める。「点描は、自分にとって一番気持ち良くない、面倒な方法として選びました。そうすることでより遠くに行ける、面白くなるかもと」とバナナヤマモトさん。1日6時間以上点を打ち、1週間程度でA4サイズの作品が完成する。「圧倒的にやること」という作家の言葉には、凄みが感じられる。


靴修理をベースに生まれた作品。──RECOUTURE/リクチュール

広瀬瞬『リクチュール』代表
『リクチュール』の主たる業務は、スニーカーを含む靴の修理。しかし彼らが追求するのは、修理の技術や方法をベースとした物づくりだ。「単に元に戻すのではなく、新たなものへ発展するような修理。さまざまに実験する中で、作品やカスタマイズの方法が生まれます」このように語るのは、リクチュール代表の広瀬瞬さん。おなじみのスニーカーにステッチダウンでソールをつけた靴には本物と本物を組み合わせるという意図が込められている。


Photo:Toru Oshima,Takao Ohta(portrait)