Vol.8 山瀬まゆみ|国境や年齢を超える、かくも美しき色の世界(2/2)
- 08.15 Thu -09.17 Tue
- 伊勢丹新宿店 メンズ館2階 メンズクリエーターズ/アートアップ
今後も感情の赴くまま、自由で伸びやかな作品を創り続ける
近年〈COMME des GARCONS〉のアート制作にも携わっているが、これはどういった経緯で始まったのだろうか—
「単純にご縁があったんです。友人がアーティストを絡めたプロジェクトを担当している部署に所属していて、その中の候補としてピックアップしてもらったっていう感じです」
世界的なメゾンの制作に携わるのはかなりテンションも上がりそうなものだが—
「うーん、どうですかね(笑)。シューズはペイントだけだったので、本当にただただ無心で作業をするっていう感じでした。もう1つのカバンの方は文字を書いていて、これは定番商品化されたので今後もずっと続けていくものなのですが、文字っていうのは私の中で作品っていう感覚がなかったんですよね。実は以前、字をキャンバスに書いていたことがあって、当時自分の中ではあまりしっくりきていなかったんです。でも〈COMME des GARCONS〉での制作を通じて、わりと新たな感覚が得られたので、今後アーティストとして活動していく際に、何らかの形で作品に反映されることがあるかもしれません」
今回の展示では絵画以外に立体の造形物も展示する。立体制作を始めたきっかけは—
「大学はロンドンの学校で勉強をしたのですが、向こうのアートは結構コンセプチュアルというか、(作品に対して)必ず理由が必要だったり説明ができないと、作品として成り立たないっていう授業の教え方で、当時路頭に迷ってじゃないですけど結構悩みまして…。そのときは色んな表現を模索していたのですが、そんな中で、立体で作った作品がすごい評判が良かったんですよね。それから立体と絵っていう二つ分けて創作するようになりました。最初の頃のこんなに抽象的な感じじゃなくて、生き物とかもっとわかりやすい感じのものを作っていたのですが、それがどんどん近づいていっていって今の形になりました」
絵を描く時と立体を作る時のテンション、向き合い方に違いはあるのだろうか—
「テンション的にはちょっと違いますね、やっぱりプロセスが違うので。ただ表現したいことは同じです。自分の感情だったり、存在はするんだけど実際には目に見えないものを表現したいという思いは、絵と同じで作っています。向き合い方も同じで、どちらも生活の一部的な感じで作っていますね。生地を縫いながら他のことを考えていたりとか、絵も描きたい瞬間が訪れたら描くし。あと全部が同時進行的にやっていたりするので、途中まで縫って一旦放置して絵を描いて、さらにそれに飽きたらやり残しの立体を縫ったりっていう。全て気分で作っています。料理と一緒で「今日はパスタの気分だからパスタを茹でよう」とか「コーヒーでも飲もうかな」とかあるじゃないですか。フラットに言うと、あれと同じです(笑)」
そんな山瀬さんには今後、自身が作品を制作するにあたって意識することがあるそう—
「大きな場所で個展をやりたいっていうのはあります。あとさっき話たようなコンセプチュアルなアートについてなど、一時期アーティストとして悩みましたが、今は本当に作品に対してすごく気持ちよく向き合えています。こうやって伊勢丹さんから展示のオファーがくることは素直に嬉しいので、そういう感じで今後も、自分の中で環境とともにやれることを一生懸命にやっていけたらいいなって思います」
イベント情報
山瀬まゆみ 作品展「colours」□8月21日(水)〜9月17日(火)
□メンズ館2階=メンズクリエーターズ/アートアップイベント詳細はこちら▶
Text:Kei Osawa
Photo:TAGAWA YUTARO(CEKAI)
お問い合わせ
メンズ館2階=メンズクリエーターズ
03-3352-1111(大代表)
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