2019.03.12 update

<COWBOOKS/カウブックス>|本を通じて本物の刺激と感動を与えてくれる書店(1/2)

誰もがテクノロジーやオンラインの恩恵にあずかり、求める情報を簡単に手にできるようになった現代社会。この便利ながらも無味乾燥なシステムの到来を予見していたかのように、本というアナログツールの本質的な価値や魅力を、静かに発信し続けてきたのが中目黒の小さな書店、<COWBOOKS/カウブックス>だ。世界中からファンが押し寄せるこのショップの吉田 茂氏を訪ね、伊勢丹メンズ館に期間限定でオープンする、“移動読書室”について話を訊いた。


感動と出合える、ローカルタウンの変わらぬ本屋


2002年の9月14日、東京・中目黒の目黒川沿いにオープンした<カウブックス>は、「自由」を合言葉に古今東西ジャンルを問わず、良質な書籍や雑誌、そしてその仕事から派生したオリジナルグッズを販売しているユニークな書店。自らの読書体験を踏まえながら、本と人とがさまざまなカタチで関わり合っていく“体験”を提供してきたのが、吉田 茂さんだ。


「代表を務める松浦弥太郎がブックセレクションを行いますが、私やほかのスタッフの意見も取り入れてもらっています。いわゆる専門書店と違うのは、扱っている本に特定のジャンルやルールがないこと。強いて言うなら、“刺激や感動を与えてくれる1冊”でしょうか。開店以来『Everything for the Freedom』というステートメントを発信し続けていて、とにかく自由であることを大切にしています。実店舗のオープン前は“助走期間”としてトラックで各地を巡る移動書店をやっていて、今もTRAVELING COWBOOKSとして不定期開催しているのですが、それも自由のための書店というコンセプトがあればこそです」

欲しいと思った本は、ワンクリックで自宅に届く──。そんな本との関わりは確かに効率的で無駄がない。だがそこに予期せぬ出合いや驚き、刺激的な人とのコミュニケーションは存在するだろうか? 世界的に書店が減少していっている時代において、<カウブックス>が17年近くも熱く支持され、変わらぬ人気を保ち続けている理由がそこにある。



「本を検索するためには著者名や書名の一部などの知識が必要ですが、『なんとなく気になる』くらいの気持ちで読書がしたくなるときもありますよね。そんなときに<カウブックス>を訪ねてもらえれば、スタッフとのコミュニケーションを通して興味をもっていただけそうな本や、新しい感覚や出合いを提供することができます。本屋ではあるけど、本を買うだけではなくて、この場に来ること自体に面白さや意味がある。そんな場所でありたいと思っています」

17年前とは打って変わって、中目黒の目黒川沿いは常に人通りの絶えない、人気のショッピング&観光エリアだ。

「この辺りは、元々自分たちの家や職場が近いホームタウン。いつも変わらぬ場所で変わらず営業している、そんな誰にとっても入りやすい、安心感のある本屋でいられたらいいなと思っています」

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