2018.09.12 update

Vol.06 ESOW|東京・下町発信のストリートアート(1/2)

ISETAN MEN'S netにて新たに始まった連載企画「ART UP by International Creators」。本企画では、従来より密接な関係にある「ファッション」と「アート」にスポットを当て、様々なアーティストをキュレーション&紹介していく。

第7弾は日本のストリートカルチャー、そしてグラフィティカルチャーの初期から第一線で活躍するペインターのESOWが登場。8月に鵠沼海岸に位置するスタジオ・レオンにて開催していた個展に在廊していた彼を訪ね、様々なことを訊いてみた。口数少なげながらも、その言葉の端々には彼がこれまでに浸ってきた濃厚な文化の重みが感じられた。

イベント情報

ESOW ライブペインティング

□9月12日(水)11時~18時
□本館6階=催物場/C-6柱

 

ESOW

東京出身、スケーターとしても活躍するペイント・アーティスト。17歳で渡米しグラフィティと出会い、日本画とストリートカルチャーを融合させたかのような作風でも知られる。東京の下町を中心に活動する「緑道會」のメンバーでもあり、その活動はキャンバスから壁画、アパレルなど多岐に渡る。

絵は無限。終わりがないからこそ楽しい。


大瀧ひろし(O3)が立ち上げた東京を代表するスケートボードチーム「T19」のメンバーにも名を連ね、浅草「フウライ堂」を拠点とする絵描き集団「緑道會」としても活動。

さらに、中目黒・目黒銀座商店街にあった伝説的ギャラリーとして、後に書籍も刊行されるなどして語り継がれている「大図実験」にも参加していたESOW。元々はサーフィン、そしてスケートボードに魅了された青年だったという彼が、絵を志すようになったのは、アメリカへの滞在、そして自らのスケートに限界を感じ始めたのがキッカケだったという。

「ある時期を境に、第一線でスケートをやっていくのが厳しいなって思ったんです。僕らが絵を描き始めた頃は、アメリカではいっぱいあったグラフィティが、東京にはまだほとんどなかった。当たり前ですけど、良くも悪くも今より緩かったですね。それがどんどん厳しくなっていくにつれて、キャンバスとかに描くようになっていきました。今でもストリートグラフィティは大好きですけど」


最初はスケートボードに絵を描いたり、親しいハードコアバンドのロゴとかを描いていたというESOWだが、知人の伝手で由比ヶ浜の海の家に絵を描く仕事をもらい、そこからプロの絵描きとしてのキャリアを歩み始めることに。

「最初は足が大きくてダボダボのパンツ履いてるような、ベタなBボーイキャラを描いてたんですけど、いつまでもアメリカの真似しててもしょうがないなと思って。何となく日本っぽい要素を取り入れるようになりました」

アメリカへの憧憬を抱き、ストリートに身を置いてきたことで培った鋭い感性と、浅草などの下町で育ったバックボーンを活かし、和なテイストも取り入れていくことで、彼の作品はより高いオリジナリティを獲得していく。


「昔から水木しげる先生の漫画も好きでしたし、地元のお祭りにもよく参加していました。そういうところからの影響はあるかもしれないですね。画題は不吉なものより縁起の良い物をチョイスすることが多いです。それも日本古来の物、熊手とかダルマ、福助とか。そういう物を描くのが好きですね」

また、まるで八十万神(やそよろずのかみ)を想起させるような、物に命を吹き込むような作品も多いESOW。なんでも、無機質なものに命を入れることが好きで、スプレー缶に顔を描いたり、瓶から手を生やした作品なども生み出している。

さらに特筆すべきは、彼の多才さ。グラフィティやイラストだけでなく、カリグラフィーも手がけている。使用する画材もスプレー缶、アクリル絵の具、筆ペンと様々だ。

「結構グラフィティを描く人って、レター、タグ、スローアップとか、それぞれに特化した人が多いんですけど、自分は全部描けるようになりたいなって思って」


今回の個展でもサーフィンボードや木材、食器、果ては古き良き時代を感じさせるタバコ屋の看板など、様々な物をキャンバスとし、自由な作風を遺憾なく発揮していたESOWだが、彼の今後の展望について訊いてみると、彼らしい言葉が返ってきた。

「終わりも、ゴールもないし、無限。だからこそ楽しいと思います。何か目標を立てているわけでもないので、好きな絵を描き続けるだけですね。目標があると、それを達成してしまった時に終わっちゃうような気がして。」


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