【イベントレポート】靴磨き選手権大会が銀座三越で開催──プロシューシャイナー12名から初代チャンピオンが決定!
生中継した『ニコニコ生放送』の視聴者数は延べ2万5000人超え!――銀座三越を舞台にシューシャインの文化の発展と発信を目的としたイベント「GINZA SHOE SHINE FESTA 2018」の一環として、日本で初めて靴磨き日本選手権大会が開催。靴磨きを仕事とするプロのシューシャイナー12名がその技を競い合い、大阪を拠点とする石見 豪氏が栄えある初代日本チャンピオンに輝いた。
(左から)杉村祐太氏、山地惣介氏、石見 豪氏、佐藤我久氏
大会アドバイザーは、『Brift H』長谷川裕也氏
昨年5月にロンドンで初の「WORLD CHAMPIONSHIP OF SHOESHINE(靴磨き世界選手権大会)」が行われ、見事、「Brift H(ブリフトアッシュ)」代表の長谷川裕也氏が“世界ナンバーワン靴磨き職人”に輝いた。
「ロンドンから帰ってきた空港で、日本での大会を発案して、今回様々な協力をいただいて実施に至りました」と長谷川氏が率先して企画した靴磨き日本選手権大会は、世界大会をベースにした演目や審査基準が設けられ、シューシャイナーとして腕に自信のある12名が準決勝と決勝を戦った。
世界チャンピオンの長谷川氏は今大会の発起人としてアドバイザーを務め、大会当日は解説と司会を担当。初代日本チャンピオン誕生を多くのギャラリーとともに見守った。
大会を運営した銀座三越の佐藤真也は、「自分も長く紳士靴に関わっていますが、シューケア・リペアの件数や売上は毎年伸び続けていて、関心の高さを肌で感じ取っていました。昨年長谷川さんが世界チャンピオンになって、日本人の靴磨き技術の高さを改めて痛感し、長谷川さんと日本初のイベントを企画。シューケア・リペアの関心の高い銀座三越での開催に至りました」と説明する。
靴磨き選手権大会の“演目と審査基準”
大会は、全12名で本選を行い、準決勝3グループ(4名ずつ)を勝ち抜いた3名で決勝を行った。準決勝・決勝ともに制限時間は20分。出場者全員がヒロカワ製靴の<スコッチグレイン>を、コロンブス社やR&D社の道具を使って、まるっと一足磨いていく。
審査員は各協賛企業の代表者と有識者を含めた7名で、光沢感、磨きあがった靴の美しさの全体感、磨いている所作と特別評価(=誰に磨いてもらいたいか)の4項目にて審査。一人の審査員が「光沢感・全体のバランス・所作の3項目、各項目5点×3=15点」と、「審査員点+1点」を加えた16点×7人=112点満点で評価する。
磨く靴は、準決勝がスコッチグレイン社のダークブラウンで、決勝は難易度が上がってチェスナットを採用。ともに革は仏・アノネイ社のベガノで、決勝は大会特別仕様として、乳化性クリームのみで、最後のワックスがついていない状態の靴で競い合った。
決勝には、大阪の靴磨き専門店「THE WAY THINGS GO」のオーナー兼靴磨き職人の石見 豪(いしみごう)氏、長谷川氏率いる「Brift H」所属の山地惣介(やまじそうすけ)氏、「Y’s Shoeshine」のオーナー兼靴磨き職人の杉村祐太(すぎむらゆうた)氏の3名が勝ち上がった。
勝因は「決勝でのフルケア」、初代王者は大阪『THE WAY THINGS GO』石見 豪さん
決勝は、シューズチェック、道具セレクトのあと20分の競技となったが、立錐の余地もないほどのギャラリーが集まり、その熱気が会場全体を包んで、3名にはより難しい状況となった。
決勝も解説を行った長谷川氏は、「非常にたくさんの方が集まって、良い盛り上がりになりました。靴を磨く上で室温と光沢は密接な関係にありますが、会場が予想以上に暑くて、あの熱気の中で結果を出している3人はさすがにレベルが高かったと思います」とコメント。「この流れを繋いでいき、靴磨き文化を広めたい」と言及した。
決勝は、石見氏が112点満点中100点で優勝、2位は98点で山地氏、3位は90点で杉村氏という結果になった。
長谷川氏からトロフィーを授与された石見氏は、「大会が開かれるとわかってから、ヒロカワ製靴社を訪問して靴を磨かせてもらったり、コロンブス社とR&D社の商品を全種類揃えて研究もしました。毎日夢に見るぐらい本気で、毎日優勝していたので、ここまで一生懸命やってきたのが形になってよかったなと思っています。今日は難しい素材のベガノで勝てて光栄に思っています。皆さん、ぜひ店へ来てください」とスピーチ。
長谷川氏も、「実は、石見さんは事前にトロフィーのサイズを聞いてきた唯一の人で、それによって持っていくトランクの大きさを変えると、本気なのが伝わってきました。有言実行で素晴らしいと思います」と裏話を披露した。
優勝した石見氏は、「決勝の勝因は、クリーナー、クリーム、豚毛ブラシから乾拭きして、ワックスを入れて、鏡面磨きまでフルケアをしたことです。スコッチグレインのチェスナットの色目が分からなくて、決勝は最後のワックスがついていない靴が出てきて、クリームを入れた瞬間にすごく色が沈んでしまったので、“これはまずい”と思ったんですが、修正ができて美しく磨けたので勝てるかなと思いました」と決勝を振り返った。
石見氏はキャリア6年目だが、出張靴磨きを3年やって、磨いた靴が約2万足。さらに店を出して約1万足磨き、トータル6年で約3万足を手がけ「徐々に腕を磨いていきました」と言う。大会の意義を問うと、「この大会をきっかけに靴磨き職人が増えて、クリーニング屋ぐらい町にあれば、文化として根づくと思います」と語る。
審査員特別賞は、名古屋で店を構える佐藤我久さん
熱のこもった決勝を終えて、審査員から「大会を通して身体全体を使って靴を磨いて、汗も一番かいていた」と賞されたのは、大会のために特別に作製したベストを着用して出場した、名古屋で店を構える佐藤我久(さとうがく)氏。
佐藤氏は、24歳で北海道帯広出身。学生時代に名古屋駅を拠点に全国の路上で腕を磨き、大学4年のときにクラウドファンディングを活用し、自身のこだわりをすべて詰め込んだ靴磨きスタンド「GAKUPLUS」を立ち上げた。
審査員特別賞の感想を訊くと、「中高と野球部に所属し、中学は北海道No.1チームで、高校も地元では有名校でした。自分は怪我がちでしたが、スパイクをきれいに磨くのが大好きで、自分のはもちろん友だちのスパイクもよく磨いていました。監督から、『佐藤はいつも道具をきれいにしているから代打で行け』と言われ、野球が下手でも道具を磨いていたら試合に出られることを知りました。それから名古屋の大学に入って、自分が憧れている長谷川裕也さんが20歳のときに丸の内の路上で靴磨きを始めことを知り、自分も大学2年生のときに名古屋駅前で路上靴磨きを始めました」とこれまでのキャリアを語ってくれた。
Photo:Tatsuya Ozawa
Text:ISETAN MEN'S net
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