「スタイリスト」という仕事と、お客さまと向き合う気持ち


佐藤 自分はメンズ館2階=インターナショナル クリエーターズにいてお客さまと接していますが、お客さまには服についての「文脈」を楽しんでいただけるよう、接客させていただいてます。服の裏側には必ず音楽や映画といった文化などの「文脈」があると思います。そういう裏側を具現化しながらストーリーとして伝えられるのがスタイリストで、「物語」というソフトな部分と、「服のクリエーション」というハードな部分を合わせて伝えていきたいと思っています。

谷口 自分はスタイリストは動くマネキンかなと思っています。1階=シャツタイにいますが、自分の理想は、「あなたの着ているスーツとネクタイ、カッコイイわね」とお買い上げいただくのがベスト。一緒に働いている先輩たちの着こなしは、毎日バリエーションが違って、接客でもうんちくがあるので、日々勉強になっています。

川端 自分は、店頭での相談役になれたらいいなと思っています。お客さまは「新しい服を着たいけれど、それほど冒険できない」という方が多いので、お客さまがその日イメージした近いものをお薦めしつつ、次回のご来店に繋げて、信頼関係ができたら……と思います。

谷口 信頼は大事ですよね。自分も三越伊勢丹に入社して1着目のスーツは、憧れているスタイリストが着ていたスーツを見て、同じものをその日に購入しました。

佐藤 信頼していただくためには着こなしはもちろん、会話なども大事。絶えず勉強していかなければと思います。

【ここで、先輩の大坪からONE POINTアドバイス】
大坪 イセタンメンズの若手たちがこういう意識を持っているのは頼もしい限り。同世代のお客さまにも「伊勢丹で買い物するのが楽しいな」「伊勢丹に行けば何か発見があるかもしれない!」というワクワクした気持ちを持っていただけるような、接客をしてもらえればと思います。


スーツを着て社会人として働きはじめてわかったこと


佐藤 自分がメンズ館で働いていて、ファッションに対して目が肥えていることを前提にして、世間ではスーツは本当におしゃれ着ではなく仕事着なんだなと痛感しました。いざ着るとなるとどうしてもコンサバになってしまうのも理解できるので、「クールビズ」導入のときのような官民がタッグを組んで社会的な概念を変えるぐらいのことをしないと、スーツをおしゃれに着るという意識が芽生えるのは難しいかも。

谷口
通勤電車の中で見るサラリーマンは、靴の手入れをしていない人がよく目に付きます。メンテナンスして履けば愛着も変わってくるし、スーツの着こなしの見え方もグッと変わってくるのに……と残念ですね。日本のサラリーマンは疲れている印象があるので、服で少しは変えられるはず。自分は好きな服を着ると気合いが入ります。

川端 父と兄は本当に普通のサラリーマンなんですが、自分がメンズ館で働きはじめて、「紳士大市」でスーツを買ってくれたり、2人ともスーツに前向きになってくれました。佐藤君はスーツを着て“女性の目線”は気にする?

佐藤 いや、あまり気にしないかな…。ホテルとか場所によってはスーツかなとは思うけど。

谷口 僕は気にしますね。カッコイイって思ってもらって損はない!(笑)。でも、今日の3人のスーツの着こなしなら、女性は川端君を評価するかな。

川端 そうですか? まったく無難な着こなしだけど……。

谷口 女性はまず「清潔感」なんですよ。ネクタイ選びでも、女性はドットのネクタイが好きで、褒め言葉の一番は「可愛い」。僕が今しているペイズリーよりドットが可愛い(笑)。

佐藤 確かに、谷口君の好きなスタイルは、オヤジウケだよね。

谷口 自分は「男同士でカッコイイ」と思える着こなしが好き。女性ウケはしないんです(笑)。

川端 谷口君はクラシコなおしゃれ上手だし、佐藤君は細部まで気を遣っていてすごい。自分は万人受けする誰にでもできる着こなしで、トピックには上がりません。この2人は自分にないものを持っていて本当にカッコイイです。

【ここで、先輩の大坪からONE POINTアドバイス】
大坪 お互いのスーツの着こなしを褒め合うのはすごく良い事だと思います。誰しもやっぱり褒められたいですし(笑)
気持ちも前向きになりますし、注意されれば改善しようと思います。それに、『また褒められたいなって』と思うので、コーディネイトに対しての意識が高まる。僕は、日常でのちょっとしたきっかけで意識は変わるものだと思いますので、後輩には「今日の着こなしかっこいいね!」ってよく声を掛けるようにしています。
そうやってお互いを高め合い、お客さまへ的確におすすめ出来るよう、日々勉強してほしいですね。