2013年に島瀬敬章さんによってスタートし、＜ZUCCa/ズッカ＞や＜TSUMORI CHISATO/ツモリ チサト＞などを擁するA-netグループのブランドとして2014-15年秋冬コレクションでデビューした＜タクタク＞。3月30日（水）より2階＝インターナショナルクリエイターズで初のポップアップを開催しますが、デザイナーの島瀬さんは、「アンダーカバーの横でポップアップができることにすごく緊張し、期待し、ワクワクしています。まずぜひ試着してください。着てみないとわからないし、着ることで会話も生まれます。高円寺の直営ショップでは、＜タクタク＞が考えていることを少しでも知ってほしいので、お客さまに『着てください』と直接お願いすることもあります」と言います。


パリから帰ってきて思ったこと

日本に戻って、3年前にパタンナーと街を歩いていたときに、「まずシャツ1枚から作って売ってみないか」という会話から＜タクタク＞はスタートしました。ブランド名とコンセプトは決まっていたので、まず名刺を作って、ネームタグを考えました。

ブランド名の＜タクタク＞は、「時間＝時計」のtictac（チクタク）から、自分の名前の「takaaki」から、同じ言葉を2回重ねる連続性、記号性から、覚えやすい擬音からなど、由来はいくつかあります。


タグに時間を刻むことで、互いの思い入れが生まれてくる

＜タクタク＞のネームタグは「○」で、これは「針のない時計」を意味します。もともとブランドは自分と他者の家畜などを区別するための焼印を意味しますが、「ブランドが提示するもの」を深く考えると、タグでの差異化になります。ひと目見て分かるブランド＝タグに、お客さまの刻印＝時間を入れ込むことができれば一人ひとり違うタグになります。

服を作った僕たちを忘れられると困りますが（笑）、買った人との“共有の場”としてタグに時間を刻み込んで、着た時間が蓄積していくことを願って、時間をスタンプで刻印することを考えました。タグに時間を刻むこと、自分の行動が入ることで感情的な部分も上がっていくし、物と物が人を介して動くときに思い入れも生まれ、捨てられない服になっていく。スタンプはメンズ館でのポップアップにも持っていきます。


お客さまと共に頭を働かせ、新しい発見を知るための第一号店

東京のファッションブランドがショップを構えるとき港区や渋谷区を選ぶでしょうし、服を作り始めたら普通は卸（おろし）から始めますが、＜タクタク＞では逆なことをやりたかったので、まず直営店を持ちたかった。自分の中に「古くて良い時間が蓄積された空間、建物」というイメージがあって、面白いところを探していたら、高円寺北口で見つけました。

以前のダンススクールの看板はそのまま、ブランドの「○」の白のネオン管だけ足しています。最初は誰も洋服屋だとは思いませんが、「ここは何だろう」と入る出会いの瞬間に、ちょっと感情的な部分が底上げされるのかなと思います。


まだ歴史の浅いブランドをより良く見てもらうためには、すでにある物を見つけて、そこに「時間」を付け足していくことが必要です。この場所で時間がゆっくり流れる瞬間があって、「僕たちはここにいるよ」というのを知って感じてもらって、「なぜお客さまはわざわざここまで足を運んだのか」とお互いが意識し、刺激し合える場が見つかりました。

高円寺から見ると、同じ沿線にある新宿は、まさにサテライト的。新宿で見て気に入ってくれた人は、フルラインナップが揃っているここに来てくれると思っています。

左から、コート 59,400円、パンツ 22,680円、シャツ 19,440円、Tシャツ 12,960円、コート 39,960円

＜タクタク＞にはシーズンテーマはありません。あえて言えば、今の気分を吐き出すこと。自分を含めて今の人が感じていることを、エゴではなく、時代の空気感を含めて、臨機応変に対応していきたい。服を着ることは受け手側の自由で、テーマを作っていろんな情報を絡め取られるのも嫌だなと、自分がまず感じてしまいます。

今回のメンズ館でのポップアップでは、お客さまの手描きによる「we are here-t」という企画も行います。1枚のTシャツに「I’m here」と描いてもらい、そのサインをプリントしたTシャツを実際に作ろうと思います。ぜひサインをしに来てください。


＜タクタク＞はみなさんが普段メンズ館で見ている服とは異質だと思います。服のカッティングはモードのバランスで作っていますが、モードを着ている人も着られて、カジュアルや古着好きの人も「これなら着たいな」と思ってもらえるコレクションになっていると思います。自分も初日の水曜、そして土日にショップに立ちます。どんなお客さまの反応が見られるのかとても楽しみです。

 

Photo：Okada Natsuko

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