テーラー 佐藤 英明×バイヤー 鏡 陽介
三越伊勢丹バイヤー 鏡 陽介とテーラー 佐藤 英明
サイズ補正のためのものから個性を表現するための衣装へ
2014年にメンズ館5階に誕生した「メイド トゥ メジャー」コーナーが好評だ。8人の日本人テーラーが自身の世界観をフルアイテムで提案する「ハウス オブ テーラー」。ヘンリープールなど海外ブランドを扱う「ワールド ビスポーク テーラー」、プライベートレーベルの「オリジナルスタイル」の3つのカテゴリーで構成され、それぞれのベースモデルをもとに着る人に合わせた補正などを行う。今回はペコラ銀座の店主であり<ヒデアキ サトウ>の名前でハウス オブ テーラーに参加する佐藤英明氏をゲストに迎え、その魅力をうかがった。
鏡 陽介
三越伊勢丹 ビジネスクロージング バイヤー。クロージングのアシスタントバイヤー、バッグ&ラゲッジのバイヤーを経て現職。
――なぜ、いま「メイド トゥ メジャー」が求められているのでしょうか?
鏡 以前はサイズ補正のためだったのが、いまは個性を表現するためのものに変わってきている印象があります。メンズ館で展開しているテーラーを見ても、それぞれに趣味嗜好があってお客さまはそのスタイルに共感してオーダーしている。自己プロデュースのための衣装ととらえられている方が増えているようです。これは世界的な傾向だと思いますよ。
佐藤 ペコラ銀座はフルオーダーですが、いまはオーダーメイドもイージーオーダーとかいろんなものが出てきて、すごくハードルが下がってきています。選択肢が増えた分、試してみようと思う方が増えたんでしょうね。この分野では日本が世界でいちばん進んでいると思います。
鏡 あと「メイド トゥ メジャー」が受け入れられたのはフィッティングサンプルがあるからでしょうね。完成品をイメージできるは大きいと思います。この企画を始めるときに思ったのが、各テーラーがもっている独自のスタイルをうまく表現できないかと考えたんですね。それでお客さまには極力、フィッティングサンプルを着ていただいて、そのテーラーがどんなふうにネクタイを締めるとか、ポケットチーフはどう挿すかまで説明するようにしています。
佐藤 英明
1990年からミラノのテーラー、マリオ・ペコラで修業し、95年に帰国。2000年にペコら銀座を構える。イタリアらしい丸みのあるスーツが持ち味。
――オーダーの際のコツはありますか?
佐藤 やっぱり、いろんなものを見て、はおってみることですね。袖を通したときの感覚とか、鏡を見たときの自分の雰囲気とか。悩んだり迷ったりもするんでしょうけど、着たときの感覚を信じて決めたら、あとは細かいところは気にしなくてもいいかなと思います。
鏡 なにをつくるのか、先に決めてから生地を選ぶのがいいでしょうね。どんな用途で、どういうふうに自己プロデュースしたいから、この仕立てになって、この生地になる、というのが自然だと思うんですよ。逆に生地から入るとつじつまが合わなくなるケースが多い気がします。
佐藤 確かにそうですね。生地は最後のほうでいいんだけれども、それがなかなかできない方が多いですね(笑)。
メンズ館5階=メイド トゥ メジャーではさまざまな生地やボタンが選べる
トレンドに流されることなくスタイルを追い求めるようになった
―― 最近のオーダーの傾向を教えてください。
鏡 昔は既製服のトレンドをオーダーに持ち込もうとする方が多くいらっしゃいましたが、最近はずいぶん減りましたね。例えば<ヒデアキ サトウ>だと、多いのが"佐藤さんってどういう提案をしているんですか?"というような質問です。それで"ディテールはあまり華美に見えないのが佐藤さんらしいですよね"というと"そうしてください"となる。昔みたいにウンチク重視ではなくなっているところがおもしろいですね。
―― 生地選びのポイントはありますか?
佐藤 いろいろな生地を触ってみたり、考えてみたりするのがいちばんだと思いますが、さっき鏡さんが言われたように、こういうシーンで着たいというのを明確にしておくのがいいでしょうね。華やかな場で着たいなら光沢のある生地の方がいいでしょうし、出張に持っていきたいとなればシワになりにくい生地をおすすめします。それと自分の好みもあるけれど、服は他人に見られるものですから、その人の立場でもおすすめする生地は変わってきます。
鏡 佐藤さんのペコラ銀座とメンズ館の違いは、ペコラが佐藤さんの目線で選び抜かれた今のベストな生地が並んでいるとしたら、メンズ館は世界でいちばんバンチブックのバリエーションを揃えようとしているんですよ。例えば、お客さまが真冬にいらっしゃっても夏物の生地でオーダーできるとか、真夏でもツイードを選べるとか。とにかくネガティブな要素がないようにしたい。だから、生地を最後でいいということなんですけどね。
スーツ仕立て上がり 367,200円から *お渡し:約5週間後から
<エルメネジルド ゼニア>の「15milmil15(クインディッチ ミルミル クインディッチ)」と呼ばれる上質な生地で仕立てられた、<ヒデアキ サトウ>のメイド トゥ メジャーのスーツ。
佐藤 雑誌の切り抜きをお持ちいただいて"こういうふうに"と言われることがありますが、まったく同じようにはできないということを、ある程度、ご理解いただきいただきたいですね。
鏡 着る人に合わせるわけですからね。雑誌の話で思い出しましたが、これまでは"このデザインで"と言われていたのが、"このフィッティングでつくりたい"というお客さまが増えている気がします。無理なリクエストではないので対応していますが、これからはそういうオーダーの仕方が人気になってくるかもしれませんね。
*価格はすべて、税込です。
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メンズ館5階=ビジネスクロージング
03-3352-1111(大代表)