孤独の素敵な伴侶

とある日曜日。パイプ愛煙家のお客さまが多くご来店された日がありました。
本日はパイプに関するエピソードをご紹介します。


「島地さんのパイプポーチは美しいですね。」と声をかけられると、島地氏はポーチを手に取りくるくると眺めながらこう言いました。
「そうだろう。このパイプポーチは<グロースヴァルト>というメーカーに作ってもらった優れものでね。パイプが二本入って、パイプを吸うのに必要なものは全て収まる素敵なポーチなんだ。他にも四本入りと一週間分を収納できる七本入りのウィークリーパイプポーチもあるんだよ。」
島地氏はちょっと自慢げです。




そんなにパイプを入れるとなると、いったい何本持っているのかという話に。

「おおよそ50本かな。」

お客さま方は驚きのご様子。そこにツッコミが入りました。
「そんなにお持ちならホコリを被っているものもあるんじゃないですか?」
そうそう。お客さまが聞いていなければ私が聞こうと思っていました。
そんなに持っていたらお気に入りのものを使いまわして、せいぜい3本くらいがスタメンだろうと思うわけです。
しかし私とお客さまは島地氏の愛する名品に対する思いをまた感じることとなるのです。

「いや、そんなことないよ。」
「毎日吸うパイプを変えているからね。吸ってやらないと『ご主人、私のことお忘れですか?』とパイプが夜泣きするんだ。だから、愛らしくて順番に吸ってやりたくなるんだよ。」

これには「大切になさってるんですね。」とお客さまも関心されていました。

「パイプは孤独の素敵な伴侶だからね。」

今週の格言


なるほど、そんな思いがあったとは。それにしても伴侶の数が多いのは、島地氏ってもしかして…さみしがり屋さん?
今週のおすすめの一杯は、テレビドラマでおなじみの<竹鶴>17年です。




プロフィール - 島地勝彦


メンズ館8階=イセタンメンズレジデンス<サロン ド シマジ>のプロデューサー。1941年生まれ。青山学院大学卒業後、集英社に入社。「週刊プレイボーイ」に配属され、1983年に同紙編集長に就任、柴田 錬三郎・今 東光・開高健を回答者に据えた「人生相談」で一世を風靡し100万部雑誌に育て上げる。その後、「PLAYBOY日本版」「BART」の編集長を歴任。集英社インターナショナルの代表取締役を経て、2008年に退任。現在は作家・エッセイストに転向。

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