【インタビュー】高田朋佳|いま「ニューコロニアルスタイル」をシンガポールから発信するショップが注目される理由とは?
しかし出張や転勤で訪れるジェットセッターにとって、モールには名の通ったラグジュアリーブランドこそ出店しているが、仕事とリゾート、両方のライフスタイルを満足させる服を手に入れることは難しかった。そこで2013年、2人の日本人が<コロニークロージング>を誕生させた。
シンガポール発のセレクトショップ<コロニークロージング>とは
「シンガポールから日本の高感度なファッションスタイルを発信する」。「コロニークロージング」は、そんな思いから誕生したセレクトショップ。日本の有力ショップの中核を担っていた、河村浩三氏、佐藤賢介氏の2人が立ち上げた。元ビームスのバイヤーとしてメディアにも多数登場してきた高田朋佳氏は、Instagramのフォロワー数9万人を超える、SNSでも有名なメンズファッションのインフルエンサーでもある。先の河村氏・佐藤氏と親しくしていた彼は、昨年、コロニークロージングへの合流を決意。妻と幼い3人の子どもたちに先行して、単身シンガポールへと渡っていた。
「店のコンセプトが面白いと思ったのと、自分がこれまで積み上げてきた経験を活かせるのではないかと考え、昨年、シンガポールへ渡ることを決断しました。ビームス時代、ピッティをはじめ買付けなど海外出張を重ねるなかで、真の富裕層のスタイルについて学ぶ機会があり、シンガポールという成長著しい街でビジネス、カジュアルともに新たな枠組みの中で、グローバルかつラグジュアリーなスタイル提案ができることに魅力を感じたんです」。
<コロニークロージング>のテーマは「ジェットセット」と「ラグジュアリーリゾート」。世界中を飛び回るビジネスエリートと、彼らが休日に英気を養うための休養地で着るカジュアルウェアの2軸だ。ときにエグゼクティブに相応しいクラシックなスーツ&ジャケットスタイルも、空港やホテルのラウンジで寛ぐときにはリラックスした印象を備えておきたい。休日に海沿いのカフェやコンドミニアムのプールサイドで寛いだり、家族で買い物に行くときの気軽なカジュアルにもクオリティは担保したいのだ。
「シンガポールは常夏の国。国土は東京23区とほぼ同じで、年間の平均気温は27度です。日本のように四季を楽しみながら服を着替えることはできません。その代わり、素材や色柄で季節を感じたり、普段はドレスクローズにしか用いない素材をカジュアルウェアに用いるなど、この地ならではのスタイル作りを提案しています」。
ショップ内装は建築家・谷尻誠氏が設計。コンクリート打ちっぱなしの店内に、自然の大木が聳えることで、無機質と有機物のミックスが図られている。中心地から少し離れたリバーバレー沿いにあるUEスクエアー・ショッピングモール内にあり、周囲はオフィスタワーやコンドミニアムが立ち並ぶ。日系レストランも多く、平日昼間は観光客だけでなく、海外ビジネスマンも多いエリアだという。
「人種や国籍がミックスされているシンガポールで、ラグジュアリーとカジュアル、リラックスとクラシックなど、様々なスタイルとカルチャーをミックスしていくことがコロニークロージングのテーマです。世界的なドレスコードの変化がみられるなか、シンガポールだけでなく、東京・アジア、ヨーロッパやアメリカでも通用する、グローバルな時代のスタンダードスタイルであると確信しています」。
3月に仕事のため一時帰国し、すぐに戻るつもりが、帰国直前に現地がロックダウン。戻る目処が付かないまま、日本からなにかできることはないだろうかと模索する日々を送ってきた。そんな中で高田氏は、シンガポール滞在中から更新してきたInstgramやYouTube番組「TAKADA CHANEL」の更新を続け、定期的に配信しているインスタライブ中継も視聴者数は1000人を超える。さらに日本人向けECサイトの構築まで、すべて自分ひとりで続けてきた。<コロニークロージング>に掛ける思いが伝わる。
「日本にいながらできることを少しずつ始めています。それまでは実店舗が最優先でしたが、コロナ渦にあってEC(ネット通販)の活用にも力を入れようと思うようになり、以前から本国サイトで展開していたのですが、日本語版を立ち上げることで日本のお客様にも買いやすい環境を整えています」。
自ら買い付けてきたコレクションは、これまで付き合いのあったイタリアのブランドだけでなく、新たな出会いから見つけた新進のメゾンを取り扱っている。そして「こんな服があったらいいな」と自分たちの足で工場探しから始めたオリジナルブランドまで、<コロニークロージング>の目指すライフスタイルを具現化するコレクションが揃えられた。
「最先端の金融シティでECやSNSなどを駆使しながら、商品の梱包・発送や動画編集、インスタ投稿も手作業でやってる。そういうところもデジタルとアナログのミックスなのかなって(笑)」
そういって笑う高田氏自身、ショップの打ち出しやトレンドのど真ん中ではなく、少しだけ道端を歩くような着こなしを貫いてきた。それこそがドレスとカジュアルの垣根を越えた、新時代のミックスクロージングだったはず。いま多くのバイヤーやスタイリスト、ディレクターらが、自分たちの手でメディアを立ち上げ、ファッション業界を盛り上げようとしている。彼は、そのリーダー的存在なのだ。
この夏、ジェットセッターが注目するジャケットとは?
高田氏が今、もっとも注目するブランドは<SACCO/ザッコ>。シンガポール在住のドイツ人が立ち上げたジャケット専業ブランドは、英・サヴィル・ロウのカッターが引いた型紙に、VBCカノニコのホップサック生地を使い、伊・ナポリのファクトリーが縫製する、グローバルかつダイバーシティなジャケットブランドだ。「シンガポール在住のドイツ人、アレクサンダーハッシャーが立ち上げた<ザッコ>は、コロニークロージングが提案する、ジェットセッターに向けた一枚仕立ての軽いジャケットです。仕事のオフィスからオフのホテルラウンジまで、様々なシーンに対応できるエレガントな一着になっています。毎シーズン10色ほどカラーバリエーションが登場するのですが、ビジネス着用できるベーシックなネイビーやグレー、ブラウンのほか、オレンジやパープルなど、リゾートならではのカラーバリエーションも人気が高いコレクションです。今シーズンは、糸の段階で杢糸を使ったホップサックを採用することで、単色ではなく深みとニュアンスある発色になっています」。
自身が出演するYouTube動画「TAKADA CHANEL」でも、今季の<ザッコ>について詳しく紹介されている。明るめのカラーのジャケットも、シンガポールの街には溶け込んで映える。南国のリゾートや、ラグジュアリーなホテルのラウンジにも、きっと似合うことだろう。
三越伊勢丹オンラインストアでは、店頭未展開の厳選アイテムがラインナップ
「この7月から、三越伊勢丹オンラインストアで、これまで伊勢丹新宿店メンズ館では展開していないアイテムを、ご覧いただけるようになったのも新たな試みです。コロニークロージングの世界観をより深く感じていただける機会になると思います」。
三越伊勢丹オンラインでは伊勢丹新宿店 メンズ館では通常展開していない<コロニークロージング>のオリジナルコレクションをラインナップしている。そこでこの夏、注目のアイテムを高田氏に紹介してもらった。どれも、コロニークロージングの想いが詰まったアイテムばかりだ。
寛ぎの時間を大切にする「ラウンジシャツ」
「シンガポール在住のジェットセッターたちは、週末になるとそれぞれの国へと帰国するのが常。彼らのオフシーンは、オフィスからそのまま空港へ向かって、ラウンジでゆっくりと寛ぐ時間が大切です。そんなとき、ジャケットを脱いでも、硬い衿のシャツでは仕事の疲れを引きずったままですよね。そこでオリジナルのラウンジシャツを企画しました。エグゼクティブが着慣れたビジネスシャツに多用されるトーマスメイソンのシャツ生地を使い、ドレスにもカジュアルにも着られる一枚です」。
「少し衿先に丸みを帯びたドレスシャツは身頃のシルエットに、ややゆとりをもたせ、肩もすこしドロップショルダー気味になっています。ノータイでも様になる衿元の仕様まで計算しながら、すべて日本国内のシャツ専門工場で縫製しています。今日、僕が着ているミントグリーンのシャツも、まさにこのラウンジシャツ。カラーバリエーションを豊富に取り揃えることで、日常から非日常へ離脱する気分を揚げてくれると思います」。
アルカンターラの高級感をショートパンツに
「常夏のシンガポールでは、観光客もローカルも、カジュアルスタイルのときはショートパンツが機能的です。でもエグゼクティブが気軽に穿けるショートパンツはと聞かれたら、一瞬躊躇するかもしれませんよね。コットンのスラックス型ショートパンツや、クリース入りのリネンショーツなども思い浮かびますが、コロニークロージングではアルカンターラ(人工スエード)のショートパンツをリリースしました」
「見た目やタッチはスエードそのものですが、気軽に洗えて縮んだり色落ちすることもないイージーケアな一着です。ラフなショートパンツをラグジュアリーに変換するテクニックは、ストリートからクラシック、ラグジュアリーまで精通するコロニークロージングならではの一着です」。
セットアップで着るラグジュアリーな「ビーチパーカ」
「スーツやジャケットなどドレスクロージングに使うVBCカノニコのウール×シルクソラーロ生地を、ジップアップパーカに仕立てるという大胆な試みです。光の加減でブラウンとパープルが浮き上がるソラーロは、南イタリアで定番のスーツ生地ですが、カジュアルウェアに使われることは稀です。しかもビーチパーカに艶のある高級素材を使うというミックス感覚は、相反するものを掛け合わせていくコロニークロージングらしいアイデアだと思います。実際にプールサイドのビーチチェアで、ゆっくりと本を読むときに羽織ったり、海から上がって帰るときエアコンの効いた社内で羽織るのに最適な一着ではないでしょうか」
「ジップがゴールドにあしらわれていたり、同じ素材でグルカショーツがリリースされていて、セットアップで着ることができたり、大人の遊び着としてもおすすめします」。
リゾートの光量が似合う色彩のリネンシャツ
「アルビニ社のリネン生地をつかったプルオーバーシャツは、プールサイドシャツと名付けました。文字通り、プールサイドで水着に羽織るシャツです。フロントはプラケットからプリーツが裾まで伸びていて、まるで比翼仕立てのドレスシャツを思わせるデザイン。ボディシルエットもゆったりとしていて、プラケットの開きも大きいので、プルオーバー特有の着にくさを感じさせないほど、簡単にアタマからカブることができるようになっています」
「シンガポールなどリゾート地なら、素肌に一枚で着て胸元を大きく肌蹴る着方も様になりますが、東京では少々やりすぎ感も否めませんよね。そんなときクルーネックのTシャツを中に着てもサマになるように、前開きの加減が計算されているんです。カラーバリエーションも、リゾートの降り注ぐ太陽の光に映えるラインナップを揃えています」。
ラウンジから機内まで使える「ラウンジジャケット」
「今季初登場したミラノリブのニットジャケットは、コロニークロージングの自信作です。日本のニット工場で糸からこだわって作り上げたものなんです。ラウンジジャケットと名付けられているように、ホテルのラウンジでシガーを燻らせたり、カクテルグラスを傾けるのにぴったりな装いだと思います。ニットなので皺になりにくいですし、バッグに丸めて放り込んで持ち歩くのもOKです。空港のラウンジや機内のシートで寛ぐときにも、取り出して羽織るのにちょうどいいんです」
「パイピングとのカラーコンビネーションもポイントになったデザインに、胸ポケットのCマークはCOLONY CLOTHINGのイニシャルをかたどったもので、<コロニークロージング>のクラブジャケットといったところですね」。
*価格はすべて、税込です。
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メンズ館5階=メンズテーラードクロージング
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