【インタビュー】<Tamme/タム>の期間限定ショップが伊勢丹新宿店メンズ館に初登場。デザイナーの玉田達也氏が語る、“気品漂うストリートウェア”の真髄とは?
“元サカイ”という期待値の高さに違わぬ、ハイレベルなクリエーションで注目を集めるブランド<Tamme/タム>が、10月12日(水)から10月18日(火)までポップアップイベントを開催する。伊勢丹新宿店メンズ館初登場となる<タム>とは、一体どんなブランドなのか。そして気になる2022年秋冬の最新コレクション、期間限定ショップの中身とは? デザイナーである玉田達也氏が、メディア初となる対面インタビューに答えてくれた。
ミリタリーウェアを更新した、“気品漂うストリートウェア”
ミリタリーをベースに、クラシックとモダン、ラグジュアリーとストリート、スタンダードとアバンギャルドなど、さまざまな既存の概念やスタイルをミックス。ニュートラルな視点で再構成することで、唯一無二の“気品漂うストリートウェア”へと昇華させる話題のブランド<Tamme/タム>が、伊勢丹新宿店 メンズ館6階 メンズコンテンポラリーに初の期間限定ショップをオープンする。日本を代表するデザイナーズブランドで研鑽を積むこと6年、2021年秋冬シーズンに満を持して自らのブランドを立ち上げた玉田達也氏に、自身のキャリア、また<タム>というブランドが志すものについて、<タム>の2023年春夏の展示会場で訊いた。
「ぼくが洋服づくりを志して文化服装学院に入学したのは、18歳の頃。自分自身が本当に着たいものを作ろうと思ったのがきかっけでした。装苑賞をいただいた作品だけでなく、学生時代の制作はむしろウィメンズの“見せる”服をメインに製作していましたが、並行して自分が着用する服も当時から自作していたんです。やっぱり“着る”ものと“見せる”ものでは、つくるときの考え方がまったく違いますから……。自分のブランドである<タム>も、まずは“着る”メンズブランドとしてスタートさせようと決めていました」
中学、高校生時代に古着と出合い、ファッションに目覚めたという玉田氏。なかでも強く惹かれたのがミリタリーウエアで、「ギミックが多く、機能的なディテールが豊富なのが魅力」と感じたのだとか。母親の影響で幼少時からDIYやものづくりに親しみ、「プラモデルのような感覚で好きになった」と、そのきっかけを教えてくれた。
とりわけ、ニッチだが洗練された雰囲気のヨーロッパものにより魅了されたというのも、玉田氏が手掛ける<タム>のコレクションを見れば腑に落ちる。
「もちろん単純に好きなだけではないんです。テックウェアやワークウェアなど現代の洋服はミリタリーウェアをベースにしているものが多く、その構造やディテールには合理的な必然性がある。だから<タム>もミリタリーウェアをベースとしながら、エレガントなシルエットを描く“気品漂うストリートウェア”に仕上げています。誰もが知っているような定番モデルではなく、マイナーだけれど美しいヨーロッパものをソースとすることが多いのもポイントかもしれません」
さまざまな要素をミックスし、研ぎ澄まされたニュートラル
ただミリタリーウェアをアレンジしアップデートするだけなら、過去に多くのデザイナーが取り組んできたことだ。だがミリタリーウェアから特定の要素を抽出して自らの創造的“ブラックボックス”に投入し、さまざまな要素とマッシュアップすることによって独自のクリエーションを生み出しているのが、<タム>を唯一無二のブランドたらしめている最大の要因だろう。「ミリタリーに限らず、過去の衣服や文化の歴史のなかでは素晴らしいプロダクトが無数に存在しています。その1つ1つに焦点を当てながら、でもその対象や固定観念に決してとらわれることなく、常にフラットで“ニュートラル”な視点で制作することを心がける───これが学生時代から変わらない、ぼく自身のものづくりの基本コンセプトなんです」
こだわりつつも偏りすぎない、ニュートラルという立ち位置。これこそ玉田氏らしさであり、<タム>らしさの真髄といえるものかもしれない。Tammeというブランド名も、フランス語の男性と女性を意味するhommeとfemme、そしてtamadaの名を融合したものだ。
「<タム>はメンズブランドです。ジェンダーフリーであることを意味しているわけではなく、男性性と女性性、クラシックとモダン、ラグジュアリーとストリートなど、相反する要素が共存し内包されるような、気品のあるストリートスタイルをつくりたいと思っていることを象徴しているんです」
男性的な無骨さと女性的な優雅さ、テーラリングに用いられる上質なファブリックとテックウェアのような機能やシルエットなど、多くの要素が複雑に絡み合い美しく融合している姿は、まさに<タム>ならでは。それが玉田氏いうところの“気品漂うストリートウェア”として、エッジィでありながら日常的に楽しめるものに仕上がっているというわけだ。
そんな玉田氏に大きな影響を与えたポーランドの芸術家、ズジスワフ・ベクシンスキーについても触れておきたい。多作、多才で知られる彼の作品との出合いをきっかけに、相対するものが共存する美しさ、強さに気づき、その後の制作につながっていったという。
「絵画だけでなく、彫刻やグラフィックなど、多方面で才能を発揮した方なのですが、その作品すべてが素晴らしくて。装苑賞をいただいた卒業制作も、学生として最後の作品だったからこそ、自分が本当に好きなものをテーマしたかったからベクシンスキーを選びました」
<タム>のコンセプトにもつながる芸術家との出会い、そして欧州ミリタリーウェアへの愛着は、2022年秋冬コレクションで「M89」というポーランド軍の名作フィールドジャケットを構造のベースとして採用していることにもつながっている。
2022年秋冬のテーマは、「12+1(トゥエルブ プラス ワン)」
それでは、最新の2022年秋冬コレクション、そしてポップアップで限定発売されるアイテムについて詳しく訊いていこう。今季のテーマは、「12+1(トゥエルブ プラス ワン)」。すなわち「13」という数字を探求したクリエーションだという。
「実は前のシーズン、トワル(試作品)を組んだり構造をつくるという作業をしているなかで、傾いたディテールというのをいくつかつくっていました。傾ける角度は特に決めずに、あくまでデザインや機能を考慮しながら直感に従っていたのですが、そのほとんどが偶然にも『13』度だったんです。感覚から生まれたこの『13』という数字に、何か意味があるのではないかと考えたのが、そもそもの発端でした」
コミュニティによって意味が異なり、ラッキーナンバーにも、忌み数にもなるこの「13」という数字を、<タム>としてどう定義するべきか? 玉田氏は「新たな構造をもって既存の事象を更新する」というブランドコンセプトと結びつけ、暦や単位として生活のベースとなっている数字の「12」に、異なる要素としての「1」を加え、まったく新しい価値を獲得したものと捉えたのだという。
「今シーズンは、ミリタリーというベースにトロピカルやギャバジンなどのクラシカルで上品な生地を合わせ、無骨なものを品よく仕立てるモダンクラシックを基本としています。そのなかで、たとえばベーシックな『M89』フィールドジャケットに『C1』というミリタリーベスト、あるいはキャップやグローブなどのコーディネートアイテムを差し込むことにより、『12+1』を表現しています。さらにディテールを『13』度傾けることで新たな機能を加えたり、見え方に変化をつけたりしているんです」
今季は一部のニットを除くすべてのアイテムに、この「13」度傾いたディテールが採用されているという。普遍的なもの(「12」)に新たな解釈やアイテムを加え(「+1」)、<タム>流に、モダンに更新したコレクション(「13」)を誕生させたというわけだ。
「ぼくはアイテムやカルチャーのサンプリングや組み合わせ方で見せることよりも、すでに存在するそれらを更新したり、その構成要素を分解して抽出し、他の要素と組み合わせて融合することで、新たな価値やスタイルを創造したい。そういう意味で<タム>のクリエーションは、再構築よりも再構成という言葉のほうがしっくりくるんです」
ポップアップでしか試着できない、限定アイテムも登場!
そんな<タム>の最新コレクションから、今回のポップアップに登場する限定モデルを玉田氏自ら紹介してくれた。GABARDINE MAGAZINE VEST M89
「ベースとなっているのは、ポーランド軍の『M89』フィールドジャケット。シンプルで上品なハーフコートなのですが、左身頃にかなり古いイギリス軍のマガジンベストを素材としたディテールを、13度に傾けて取り込んでいます。
多様で豊富なポケットを複雑なパターンで配置しているのですが、一部が身体の動きに合わせてヒラヒラと動くフラシになっていたり、現代的な身の回り品であるタブレットやノートPCなどを持ち運べるくらいの収納力をもたせているのが特徴です」
∠13° GABARDINE WIDE SLACKS
「こちらはインラインで展開されているパンツの素材違いで、『GABARDINE MAGAZINE VEST M89』とセットアップで着用できます。1930年代のフランス製ワイドパンツをベースにしたシルエットで、脇線を13度傾けることで前開きと一体化させ、その延長で裾開きのディテールを追加しているんです。
単純に線を傾けているだけなんですが、身体が入ることで構造が変化し、機能が加わったりするのが面白いですね」
これらのアイテムのみならず、<タム>2022年秋冬コレクションが一堂に会する、今回のポップアップは見どころ満載だ。
- 開催場所:伊勢丹新宿店 メンズ館6階 メンズコンテンポラリー
Text:Junya Hasegawa(america)
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