スーツを着る機会が減ったと言われていますが、一方で必ずスーツを着なければならない機会もあります。それは冠婚葬祭をはじめとする式典に出席するとき。もうすぐ訪れる卒業・入学シーズンは、正装で臨む席が多い季節でもありますので、特別な日のためのスーツは必携です。

そこで今回、「卒業式」を控えスーツ選びに悩む2人の男性に、オーダースーツ担当スタイリストが接客するシーンを再現してみました。ハレの席に既製品ではなくオーダースーツで望みたいという理由はさまざまですが、的確な答えを提案できるスタイリストの存在は心強いものがあります。

さらに今シーズンから、オーダーした日から2週間でお渡し可能な「クイックオーダープログラム」が始まりました。仕事などで忙しく、直前までスーツの用意ができなくても、まだ間に合うオーダーは安心です。特別な日に特別な一着で出席すれば、後々の思い出は深いものとなることでしょう。

Case1.
3月の卒業式＆謝恩会で着るスーツをオーダーしたい！

吉田：3月の卒業式のためにスーツをオーダーしたいのですが。

羽鳥：学生さんでオーダースーツされるとは意識が高いですね。

吉田： 就活のときにスーツをオーダーしたら、第一志望に内定したので、やっぱりスーツはオーダーがいいと思ったんです。

羽鳥： 既製服はブランドの個性を着るものですが、オーダーはご自分の個性を表現するものです。そうお考えになれば、今回のスーツも、どのようなものがいいか明らかになるでしょう。

吉田：やはり自分の個性を全面に出したいと思っていますが、正装すべき卒業式ですからあまり派手なものは望んでいません。


羽鳥：クローゼットには、どのようなスーツをお持ちですか？

吉田：就活で着たものと、バイトで着ていた黒いスーツですね。

羽鳥：それではクラシックなネイビー系のスーツがおすすめです。最近の若い方は黒を好まれますが、じつはスーツの基本はネイビーなんです。

吉田：そうなんですね。ではネイビーの生地を選びたいと思います。ちなみにシャツとネクタイは、あまり持っていないのですが。

羽鳥：礼装として着られるなら白シャツにネイビー無地のタイをあわせましょう。すっきりと端正ですし、厳かな会場でも馴染むでしょう。入社式はもちろん、その後のビジネススーツとしてもあわせられるし、フレッシュさもアピールできますよ。



吉田：じつは別の日に謝恩会やゼミの卒業パーティーがあります。そこでパーティー用のスーツとして着られるようなスーツも検討したいのですが。

羽鳥：かしこまりました。それではグレーのスーツなど…。

吉田：できれば、もう少し個性のある、あまり他の人が着てないスーツがいいのですが。

羽鳥：それではソラーロなんていかがでしょう。ドレープの加減で光沢が浮き上がります。太陽の生地「サンクロス」とも呼ばれる、南イタリアの雰囲気ある生地なんです。


吉田：この生地なら友人と被らなそうですが、あわせるシャツやネクタイが難しそう。

羽鳥：グリーン系のソラーロの場合、ネクタイに寒色系が入っていると合わせやすいと思います。オレンジ系のソラーロなら暖色系ですね。

吉田：なるほど、そういうコツがあるんですね。

羽鳥：ソラーロの上級者は、あえて反対色の色を使います。というのもソラーロは、表と裏で異なる色の糸を使って織られているからです。光沢の加減は裏地が発色するので、ネクタイの色も合わせると着こなしやすいんです。

吉田：とても参考になります。ますますソラーロのスーツが着てみたくなりました。

Case1.
＜着用編＞後日仕立て上がったスーツを着用してみました。

オールオケージョンに対応するネイビースーツ

ネイビー無地は礼装からビジネスまで着られるオールオケージョンスーツ。ネイビーの濃さで個性を表現できますが、明るいものほどカジュアルに見えるので、あえてミディアム〜ダークトーンを選ぶと大人の落ち着きあるスタイルとなります。白シャツ、ネイビーソリッドタイに黒のストレートチップで合わせれば、卒業式はもちろん、社会人として入社後もさまざまなシーンで着用可能。スタイルはインターナショナルなテイストを取り入れた「ディプロマティコ」です。

ドレープと光沢で華やかさと個性を表現できるソラーロ

光の加減でベージュとグリーンの光沢が浮き上がるソラーロのスーツ。ストライプのシャツとグリーンのネクタイ、ポケットチーフにもグリーンを配して、華やかなスタイリングとなりました。こちらのモデル名は「MI6」。イギリスのモダンスーチングをイメージして、ラペルは細身で肩まわりもコンパクト。スラントポケットにチェンジポケットをあしらって、華やかでスタイリッシュな印象を与える事が出来ます。

ネクタイで遊べばナポリ流のスタイルに



こちらはベージュとオレンジの糸を使ったソラーロを使ったモデル。肩パットを省いて極薄の副資材を使って、「マニカカミーチャ」と呼ばれるシャツ風の袖付け、腰ポケットはパッチ式にしたナポリ風の仕立てにしました。ネクタイは大胆なペイズリー柄にして、足元も茶色のローファーを合わせるなど、南イタリア・ナポリのお洒落なビジネスマンをイメージしたスタイリングです。

Case2.
普段の仕事にも着られる卒園式スーツをオーダー

山形：息子の卒園式に合わせて、スーツをオーダーしたいと思っています。

羽鳥：普段のお仕事はスーツスタイルですか？

山形：スーツやジャケパンが多いですが、タイドアップしないことも。最近はタートルニットを合わせています。

羽鳥：お手持ちのスーツは、どのようなものが多いでしょう？

山形：普段はネイビー無地が多いです。たまにグレーを着ていると、褒められますね（笑）。

羽鳥：柄物などはいかがでしょう？

山形：あまり得意じゃないです。

羽鳥：それでは今回、礼装にも相応しいグレーにされては。仕事にも着回せる落ち着いたミディアムトーンがよいのではないでしょうか。

山形：仕事にも着られるのはありがたいですが、このグレーですか？


羽鳥：小さいと色濃く見えがちですので、生地バンチで見るより反物で見たほうが濃さがわかると思います。ビジネススーツにも着られるチャコールグレーですが、落ち着いた印象なので卒園式の会場では気品のある印象を与えると思います。

山形：ではこちらの生地でお願いします。

羽鳥：スーツのモデルは、礼装したときかっちりした印象が出せるように、やや構築的な「イングリッシュブレード」が良いと思います。ポケットはフォーマル使いができるように、フラップなしの両玉縁にしておきましょう。


山形：シャツやネクタイはどのようなものが良いのでしょう？

羽鳥：卒園式ではシャツは白。ネクタイは光沢のある紺無地のものがいいですね。お仕事に着ていかれるときは、ネクタイをレジメンに替えるだけでいいのでは。

山形：なるほど。これなら卒園式に出席した後に、午後出社ができますね。

羽鳥：先程、タートルニットを着られることもあると仰っていましたが、春はクルーネックのニットをあわせてもよいのではないでしょうか。


山形：ありがとうございます。コーディネートまでご紹介していただたのでひと安心です。ただ、ひとつだけ不安があって…。

羽鳥：どのような？

山形：実は卒園式は来月なんです。あと1ヶ月もないんですが間に合いますか？

羽鳥：通常メイドトゥメジャーの納期は4〜6週間なのですが、今年から「クイックオーダー」というシステムが始まりました。アップチャージ料金16,500円でご注文から約2週間後に、店頭で受け取れます。

山形：それは助かります。卒園式までには受け取れるんですね。これで心配事はなにもなくなりました！

Case2.
＜着用編＞2週間後に袖が通せる！仕立て上がったスーツを着用してみました

フォーマルにも相応しいチャコールグレースーツ

日本の礼装は黒が多いですが、じつは欧米の礼装はグレーを着ます。そこで生地はオールシーズン着られる素材を選び、色目はミディアムよりやや濃いチャコールグレーに。フラップレスの玉縁ポケットは、室内できる礼服の典型的なデザインですので、インターナショナルな感覚に長けたグローバルスタイルといっていいでしょう。Vゾーンは白シャツ＆ネイビータイ。白のポケットチーフを添えることで、フォーマル感も高まりました。ネクタイは光沢のあるサテンやツイルのものが、卒園式というハレの席に相応しい着こなしです。

ネクタイを変えるだけでビジネススーツに

先程のスタイルからネクタイだけストライプのものにチェンジするだけで、ビジネススタイルにも対応できます。午前中の卒園式に出席後、午後から出社するにも便利ですね。「イングリッシュブレード」ならではの肩構築とウェストの絞り具合は、スタイリッシュにも重厚な印象にも見せてくれるので、大人っぽいスーツスタイルに仕上げてくれます。

白スニーカーをあわせたセットアップ風のスタイルも

シャツ＆タイの替わりにインナーはクルーネックのニットを着て、足元に白いスニーカーを合わせれば、最近ニューノーマルなビジネススタイルとして定着してきたセットアップ風のスタイリングに。軽快なビジネススタイルですが、しっかりフィットするオーダースーツだからこそ、着崩したときも品格を損ないません。よくあるカジュアルショップのスーツ風セットアップとはひと味違う、ドレス感あるスタイリングとなるのです。






Text：Yasuyuki Ikeda
Photograph：Tatsuya Ozawa

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