2020.06.22 update

【インタビュー】<ニコライ バーグマン フラワーズ & デザイン>が、 20年間変わらずに大切にしていること。

2020年にブランド創立20周年の節目を迎える<ニコライ バーグマン フラワーズ & デザイン>。デンマークで生まれ育ったニコライ バーグマン氏が、ブランドを立ち上げる場所に日本を選び、20年続けられたのはどうしてか。これまでの歩みと、未来の展望を伺い、ファンに愛され続ける理由を探ります。


ニコライ バーグマン 

フラワーアーティスト。2001年に自身のフラワーブランド <ニコライ バーグマン フラワーズ & デザイン>を設立。東京・南青山の旗艦店をはじめ、国内外に14店舗のフラワーブティック、ギャラリーの他、 2つのフラワー カフェ、バーガーショップを展開する。近年では、フラワーアートの個展も精力的に行い、2018年4月に福岡・太宰府天満宮で開催された『Hanami 2050』では4日間で約2万人の来場者数を記録し、大きな反響を呼んだ。

植物が身近な環境で育ち、花に触れることが好きな少年だった。

──どのような幼少期を過ごしましたか。

お母さんはフローリスト、お父さんは鉢物の卸業、おじいちゃんはりんご園。そういった自然に囲まれた環境で過ごしていました。花や植物は、身近にあり当たり前の存在でした。

──フラワーアーティストを志したきっかけを教えてください。

デンマークでは、自分が本格的にこれから何をするか決めるために、15歳の時に職業体験を用意してくれるんです。3つの職場を1週間ずつ体験します。その3つは自分で決めるのですが、僕は、1つめにオフィスワーク。2つめは馬の蹄を取り替える仕事。3つめは、花屋を体験しました。この職業体験を終えた時、自分が花に触れることが好きだということに改めて気づきました。花屋での仕事が楽しくて、改めて花に触れることが好きで、花屋の仕事がしたいと思い始めました。


──どのような経緯で日本にいらしたのですか。

卒業訓練を終えて、卒業旅行で初めて来日しました。「お父さんの仕事関係のデンマーク人の知り合いがいる国」なので、仕事の経験をさせてもらえるだろうと考え、卒業旅行の行き先に日本を選んだんです。それが初めての来日。知り合いに紹介してもらって、川越にある花屋で働かせてもらいました。当初は特に思い入れもなかったのに、デンマークに戻って振り返ってみると、日本で過ごした時間がいかにチャレンジに満ちていて楽しかったか気が付いた。そのときのことが忘れられなくて、1年近く経ってからまた日本へと戻り、川越の花屋で働かせてもらうように頼んだんです。それから日本に住み、あっという間に20年以上が経ってしまいました(笑)。

花束を贈るのが照れくさい人も、フラワーボックスならぴったりですよ。

──日本でブランドを立ち上げようと思ったのはなぜですか。また設立当初の心境を教えてください。

当時勤めていたお店に、自分が作った商品を飾っていたんです。その商品があるセレクトショップのバイヤーの目に留まったのが、ブランドを始める第一歩になりました。ブランドを始めてすぐに注目を浴びた訳ではなかったんです。でも焦らなかった。なぜかというと、揺るぎない自信があったからです。自分の作品とお店に自信を持っていたので、今はお客さまが来なくても、毎日お店を完璧な状態にしていれば絶対に認めてもらえると信じていました。だから毎日お店を完璧にし、直感を信じて続けました。

──ブランドのアイコンでもある「フラワーボックス」はどのようにして誕生したのですか。


とあるブランドのパーティーのギフトの依頼がきっかけです。「600個のフラワーギフトを用意して欲しい。ただ置き場がないので、積み重ねられるようなフラワーギフトが欲しい」というものでした。正直、お花を積み重ねるなんて、当時は考えられないものでした。ブーケやアレンジメントを箱に入れたりしましたが、見た目も綺麗でなく、予算も合わず……。試行錯誤する中で思いついたのが、箱の中に直接花を入れるアイディアでした。これがフラワーボックス誕生のきっかけです。

──ニコライさんの作品には、北欧と和の融合による他にはないスタイルを感じます。クリエーションの源はどのようなシーンから湧くのでしょうか。
今は箱根に公園を作っているのですが、箱根の大自然で過ごしている時や、旅行や仕事で日本の様々な場所を訪れるとインスピレーションが湧いて来ます。今は、日本と海外を行ったり来たりする生活。人種やその土地の色や文化、様々な違いがクリエーションの源になっています。

──ブランドとして伊勢丹メンズ館での役割をどうお考えですか。

メンズ向けの館に花屋さんというのは、とても斬新なアイディアですよね。声をかけてもらってすぐに「面白そう!」と思いました。特に伊勢丹メンズ館は、ファッションに敏感なお客さまが多くいらっしゃるので、そういった方へはどんな商品が響くかなと日々考えて、他のショップにはないようなシックでモダンなものを取り入れようと試行錯誤しています。フラワーボックスは、花束を送るのが気恥ずかしい男性にもぴったりなギフトですよ(笑)。

──2019年4月の、初めての"海外"出店の場所に、ロサンゼルスを選んだ経緯を教えてください。
©️Nicolai Bergmann Flowers & Design

ロサンゼルスは、ニューヨークほどの大都市ではないけど、エンターテイメントが盛んな街。世界中からたくさんの人が集まる魅力的なところです。この10年間、年に2回くらいは足を運びずっと物件を探してきました。ロサンゼルスにはアトリエやワークショップなどの形の花屋はたくさんあるけれど、意外とショップは少ない。それにしても、イメージしていたよりも大きなお店になったんですけどね(笑)。250坪より少し大きいくらいの広さです。あちらでは多肉植物や大きな鉢物が人気です。お花よりも、そういったインテリア性の高いアイテムが支持されていますね。日本では<ニコライ バーグマン フラワーズ & デザイン>がブランドとして認知されるようになってきましたが、ロサンゼルスでは現状まだ認知度はそこまで高くありません。

──海外進出をしてみて、改めてグローバルな視点から日本の良さをどのような部分に感じていますか。

海外で店舗を展開するのは、とても大変です。まさにこのロサンゼルスのショップで、カフェをオープンしようとしているのですが、営業許可を取るためのルールが複雑なため大変です。その点、日本はルールがきっちりと決められていて、あらかじめ細かいスケジュールも確定しているため、新しい事業の展開はしやすいと思います。日本人の几帳面な性格は、やはりビジネスにおいて重要であると日々感じています。

20年を迎えた今も変わらず、直感を信じ、植物の新たな価値やクリエイティブを発信する。


──この20年のブランドの成長についてご自身で感じる部分はありますか。

ビジネスは地道な努力と時間を重ねて成長していくものだと考えているので、この20年は、企業やブランドとのコラボレーションなど様々な挑戦や努力を重ねて、少しずつ広がっていったように思っています。今年20周年を記念した展覧会も予定しており、限定のフラワーボックスや20年の歴史を辿ったマガジンも発売する予定です。

──これまでの活動を振り返り、守り・継続していきたい部分、チャレンジしていきたいことを教えて下さい。

私は、自分の直感を大切にして様々なことに挑戦してきました。もちろん失敗もありますが、パッションがなくては成功しないと信じているので何事にもパッションを持って取り組みたいです。今は、海外での活動も多くなりました。YouTubeでは、世界のフラワーマーケットや、花を通じたワールドワイドな情報を発信しています。世界中のアートや建築、インテリア、ファッションやジュエリーからインスピレーションを受け、異素材と植物を組み合わせた世界に一つしかないアート作品を展示・販売する「Gallery nicolai bergmann」(東京都港区南青山5-5-20 / 2019年オープン)もその一つです。

「Gallery nicolai bergmann」

太陽の光が降り注ぐ店内が特徴的な建物の中でゆったりと作品と向き合える空間は、フラワーショップでは見られない、植物の新たな価値やクリエイティブを感じていただけます。ぜひ一度遊びにいらしてほしいですね。

──次の20年に向けて、今後の<ニコライ バーグマン フラワーズ & デザイン>はどのような未来を描いていますか。

正直、先を見ることはあまり意識していないんです。今やらなければならないこと、瞬時の判断や挑戦したいことを大切にしています。それで始めた事業もいくつかあります。もちろんビジネスとして考える部分もありますが、それ以上に私はクリエイターとして、可能性を狭めないようにフィーリングや直感を大切にしていきたいです。植物や自然を通じ、常に新たな可能性や価値を築いていきたいです。

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Photo:Yutaro Tagawa(cekai)
Text:Rio Hirai

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