新社会人、新しいスーツの選び方。入社前に知っておきたい最新ビズスタイル(1/2)
リクルートスーツから着替えるフレッシャーズのため、理想的なビジネススタイルを伊勢丹メンズ館のスタイリストが提案する本企画。今回は加速するビジネスカジュアルの広がりを踏まえて、業種別にビジネススタイルを提案する。例によってモデルは今春、三越伊勢丹に入社が内定している2名の学生。皆さんのビジネススタイルはどこまでOKか、思いを巡らせながら参考にしていただきたい。
新入社員としてのビジネススタイルの基本とは?
4月から社会人となる学生も、新生活に向けてフレッシャーズらしいビジネススーツを用意しようと思っている頃だろう。だがここ最近、ビジネススタイルは急激に変化していることをご存じだろうか。IT系やベンチャーなど若い企業だけでなく、大手メーカー、銀行でさえカジュアルOKまたはカジュアル推奨の職場が増えているのだ。
ドレスコードにお堅い企業でさえノータイのビズスタイルを推奨している時代に、新入社員だからとタイドアップを強要されることはないはず。だが新入社員にこそ、ビジネススタイルの基本となるタイドアップを学んでほしい。その理由は、服装は社会人としての立場を表すものだからだ。
「フレッシャーズがネクタイをするのは、新社会人としての所信表明と受け止めてほしいですね。」伊勢丹メンズ館のイメージコンサルタントである関川晃彦は言う。
関川は地下1階から8階まで全館通してお客さまをご案内できるスタイリストだ。リクルートスーツからフレッシャーズ、役付きビジネスマンのプレステージスーツまで、服はもちろん靴や鞄、さらには休日のカジュアルから最新モードまでも案内できるスペシャリスト。
今回は、業種別に望ましいビジネススタイルを比較しやすくするために、ネイビー基調でコーディネートしてもらった。ドレスコードに厳しい企業ではいかに装うべきか、ジャケパンスタイルや、カジュアルビズまで様々なスタイルを提案してみたい。
まずは、今回モデルとして登場いただく2名のリクルートスタイルからチェックしてみよう。
入社を控えた三越伊勢丹内定者2名のリクルートスーツ姿をチェック
山本 晴さんは、学生時代に強豪サッカー同好会に所属。3年時には全国優勝も果たしているスポーツマンだ。「接客業に興味があって」三越伊勢丹を志望。だがビジネススーツに関してはあまり知識がないという。
「ビジネススタイルに大切なのは清潔感だと思います。清潔感のためには、サイズの合ったスーツを着る必要があると聞きました。でも具体的に、どこのサイズを気にしたらいいのかというところまでは知識がなくて…」(山本)
この日は就活時にも着用したダークネイビーのスーツ。某紳士服チェーンオリジナルのスタンダードなスーツは、細身のシルエットが若々しい。肩の構築性やジャケットの着丈はビジネススタイル向けとして十分だが、関川がチェックしてみると、袖の長さについて指摘があった。
「ジャケットの袖の長さが少し短いですね。それによって、ジャケットから覗くシャツが理想の長さよりも長めに出てしまっています。シャツのサイズも合ってないですね。裄丈といって背中心から肩先を通って手首までの長さを計測して、自分にあったシャツを選ぶことが大切です」(関川)
パンツの裾から靴下が覗く丈も気になるという。
「パンツの裾丈は、靴に触れるぐらいがビジネススーツの基本です。靴下が覗くぐらいの裾丈は、お洒落を意識したサイジングなので、もう少しビジネスマンとしての実績を積んでからトライしたほうが良いでしょう」(関川)
妻嶋陸哉さんは、アートやファッションに造詣のある文化系学生。学生時代はセレクトショップでアルバイトの経験もありファッションセンスも高そうだ。
「ストリート系やモード系ではビッグシルエットが流行ってますが、ビジネススーツはきちんと肩が収まるサイズや、袖丈が長すぎないサイズ選びが大事だと思います。このスーツは入社したらプライベート用にして、出社する用のスーツは買い直すつもりです。今日はその参考になると思うと楽しみですね」(妻嶋)
黒のスーツはカジュアル系セレクトショップのオリジナル。ビジネス用のスーツではなく、セットアップタイプなので、ジャケットは単品着用できるように着丈が短くコンパクトなフォルムだ。袖の飾りボタンは2つで、ディテールもカジュアルな雰囲気。パンツのシルエットも腰回りにゆとりがあり、膝下をテーパードさせたトレンドのシルエットを描いている。
「上下共地のテーラードジャケットとスラックスに見えても、デザインや仕立て方によってドレス系とカジュアル系とに分かれます。妻嶋さんのスーツはカジュアルですね。プライベートでお洒落して遊びにいくときはいいのですが、業種によってはビジネススーツとしては認められないかもしれませんね」(関川)
そしてシャツのサイズ選びにも関川からダメ出しが。
「ネックがゆるいのは、シャツのサイズ選びがドレスシャツとしては間違っています。身幅や袖丈はお直しで修正することもできますが、首回りはお直しができないので、きちんと採寸してジャストなネックサイズを選びましょう。それとネクタイですが、いまの状態は“結んだ”状態です。ネクタイは“締める”という言葉を使うように、ノットとシャツの間に隙間が出ないように締め上げるようにしてください。また、山本さんと反対に、ジャケットの袖が長すぎてシャツの袖が見えていない点も要改善です」(関川)
ファッションには自信のあった妻嶋さんだが、カジュアルには詳しくても、ドレスは経験不足の様子。
「パンツの裾は靴下が覗くぐらい、ちょっと短めが今っぽいと思っていたのですが、山本くんへのアドバイスを聞いて、トレンド=ビジネススタイルのスタンダードではないということを知りました。スーツを買い換えるときの参考にしたいと思います」(妻嶋)
ビジネススタイルが変化しても、装いのルールは知っとくべき
リクルート時のスーツを着てもらうことで、2人のスーツへの知識とビジネススタイル観を知ることができたが、リクルートスーツとビジネススーツは別物だ。入社後はビジネススタイルに対する心構えを持たなくてはならない。
「いまビジネススタイルが急激に変わってきています。これまでのような画一的なスーツである必要はありませんが、入社直後は新入社員としての心構えを具現化できるスタイルが必要です。フレッシャーズらしく基本に忠実なスタイルから、仕事を覚えていく手順と同じく、徐々にレベルアップしていけばいいのです。伊勢丹メンズ館でも、最新のデザイナーズブランドを扱う2階(メンズクリエーターズ)に配属された新入社員も、最初の半年はスーツにネクタイですから」
それではさっそく2人に、業種に合わせたビジネススタイルを着てもらうことにしよう。
フレッシャーズ必見、業種別のスーツ選びと着こなし4選
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