2020.02.18 update

【インタビュー】アウトドアとファッションの垣根を超えて──。<and wander/アンドワンダー>で、自然と豊かなつながりを

アウトドアがベースになっていることは、一目でわかる。なおかつシンプルで見慣れたデザインながら、しかし確かに、時代が求める機能性とファッション性を備える。2011年の春夏からスタートし、瞬く間にファンを増やしたブランド<and wander/アンドワンダー>だ。

機能性を追求することによって、しのぎを削ってきた既存アウトドアブランドに対し、<アンドワンダー>はそこにファッションのエッセンスを加えて、業界に新しいムードをもたらした。山と街をつなぎ、自然を日常的に楽しめるような”気軽さ”がそこにはある。

伊勢丹メンズ館では、2月19日(水)よりメンズ館6階=メンズコンテンポラリーに直営コーナーをオープン。よりファッションに近い文脈での展開となるが、これはむしろ働き方、遊び方、ライフスタイルの多様化に伴うものであり、もはやそこに垣根はないということの時代性の表れでもある。


今回は、アウトドアとは真逆とも言えるモードの世界、<ISSEY MIYAKE/イッセイ ミヤケ>でキャリアを積み上げた同ブランドのデザイナー、池内啓太氏、森美穂子氏にお話を伺った。ブランドのフィロソフィー、定番アイテムについて、メンズ館での展開で期待することなど、幅広く語っていただいた。


野外でのアクティビティに耐えうる、なおかつ着て楽しくなる服を


──おふたりとも前職は<イッセイ ミヤケ>とのことですが、どのような経緯で<アンドワンダー>を立ち上げたのでしょうか。


池内 前の職場で同僚に誘われてキャンプをするようになったのですが、アウトドア専門店では、欲しいと思える服が少なくて。確かに機能面を見れば、厳しい自然環境にも対応する本格的な作りではあるものの、ファッションとして楽しめるかと言うとそうではない。キャンプ仲間にそんな話をしてみたら、皆同じように感じているみたいで。だったら自分たちが着たいものを、自分たちで作ってみようということになりました。ファッション性と機能性を併せ持つアウトドアウェアは、当時はどこもやっていない未知の領域でした。だからこそデザイナーとして表現できる余地が多分にあると判断し、2011年に<アンドワンダー>を立ち上げました。
ブランド名はドイツ語の”wandervogel”(ワンダーフォーゲル)から採っています。6000メートル級の山の登頂を目指すのではなく、「自然の中で自由を感じながら歩き回って楽しむ」くらいの温度感の言葉で、私たちのアウトドアスタイルにしっくりきます。多くの人の日常生活に、「自然の中で過ごす時間」を取り入れてもらえたら、という願いを込めて<アンドワンダー>です。

──ファッション性の高さが、他のアウトドアブランドとの大きな違いになっていると思います。

「他がこうしているから、うちはこうしなきゃ」ということは、あまり考えていないんです。他と違うものを作りたいわけではなくて、あくまで自分たちのライフスタイルにちょうどいいものを作りたいと思っています。だから自分たちにとって、どういう素材なら着ていて気持ちが良いか、どんな色や形がかっこいいか、というような点はすごく意識しています。シルエットも、機能性と同じくらい大切にしている要素です。細かい部分が積み重なって、結果的に差別化ができているのかもしれないですね。


池内 ファッション性だけが突出してしまって、アウトドア業界の人が私たちのアイテムを見たときに、「あれはアウドアウェアじゃない」と言われるような服作りだけは、しちゃいけないなと思っています。大切なことは、本格的なアウトドアウェアであり、デザインを楽しめるファッションであること、その要素は常に2つで1つですから。

──ファッション性を高めるにあたり、トレンドはどのくらい意識していますか


いままでもそうでしたが、トレンドを加味した服づくりはやってきませんでした。ただし、一部のカジュアルなアイテム、例えばシャツなどはトレンドというよりも、自分たちの「なんとなく」なムードで色、襟の大きさ、身幅を変えています。それ以外のアイテムは、実はトレンドを入れることがあまりできないんです。アウトドアウェアには、天候や体温に応じて快適さを保つための「レイヤリング」という重ね着の方法があります。ベースレイヤー、ミドルレイヤー、アウターの3つに分けられて、それらは機能性が何よりも優先されるので、トレンドだからサイズ感を少しゆったりめにする、ということはあり得ません。
池内 モードとは違って、アウトドアにはできる範囲とできない範囲があるんです。その代わり、テクノロジーが進化して新しい素材ができたり、ずば抜けたテクニックを持っている工場と出会えたりすれば、次のステージへの扉が開く。結果そこから新しい服ができることもあります。


自然での時間をもっと実り多きものにするために


──ブランドのキーアイテムは何でしょうか

池内 定番で人気のアイテムは2つあります。1つはバックパックですね。これはエックスパックというヨットの帆に使われる生地を使用した30Lのもの。バッグの下部までジップを伸ばして開口部を大きくすることで、底にあるアイテムを簡単に出し入れできるのもポイントです。

  • <アンドワンダー>バックパック 35,200円


池内
一番変わっている機能でいうと、雨蓋が伸びるようになっていて、前に垂らすとチェストバッグとして使えるようになっています。山歩きをしている時、手元にあると便利な地図やカメラを収納できるようにするためのデザインですね。
 もう1つは毎年アップデートさせながら続けているコートです。脇の下を完全開放してポンチョとしても着れるので、中にバックパックを背負えるようになっています。


  • <アンドワンダー>コート 77,000円

シームやファスナーまで完全防水仕様で、フェスやキャンプでも需要が高いアイテムです。今期の柄は乾いた地面に生えた草花をイメージしていて、昨年テキサスを旅していた時に見た光景がデザインソースになっています。

──伊勢丹メンズではスポーツに特化したフロアから、メンズ館のカジュアルフロアに移ることになります。どんな反応が得られるか、こちらもこれから楽しみです。店長はメンズ館の<マーガレット ハウエル>で長らく働かれていた小山さんが担当されるそうですね。

池内 <マーガレット・ハウエル>とは親会社が同じなんです。今回は長い間メンズ館にいてお客さまの事をよく知る小山くんが店長をされるということで、心強く思っています。


小山 今回、メンズ館のアンドワンダー直営コーナーには、アウトドアをよく知るスタッフもいるのですが僕個人は、もともとアウトドアにどっぷり、という感じではないですし、<アンドワンダー>のウェアを身にまとうのも今回が初めてなのですが、僕と同じようなアウトドアの楽しさを知らないお客さまも多いと思います。それを逆手にとって、お客様に一番近い視点で、アウトドアや<アンドワンダー>の魅力を伝えられたらと思います。

──お客さまにもいろんな発見があって、ライフスタイルがより豊かになれば最高ですね。

池内 「アウトドア」か「ファッション」か、のような境界線を引いたクリエーションではなくて、両方を活かしたものづくりを続けてきました。伊勢丹ではファッション感度の高い、服好きな方々の目に触れることになると思います。そんな方々のワードローブにどのような形で取り入れられるかについて、とても興味がありますね。
小山 <マーガレット・ハウエル>にいた時のお客さまもたくさんいらっしゃいます。そういった方とは密にコミュニケーションを取って、ブランドの魅力を伝えていければと思っています。街中にいても機能性やデザインを通じて自然を感じることができるように、また快適な日常を過ごすために、色々とアドバイスさせていただければ幸いです。
どんなリアクションをされるのかなって不安もあります。でも、自然が人の生活に与える豊かさ、山で過ごす時間の魅力、そう行ったことが少しでも伝わればいいなと思っています。ブランドを通じて、店内のアートワークも含めて、感じ取っていただけると。自然の中で過ごすことによって、森林浴みたいな癒しの力や、非日常だからこそ学べる大切な気づきが必ずある。今までアウトドアに興味のなかった人たちに、そんな気づきを与えられるブランドになれたらいいなと思っています。

イベント情報
<アンドワンダー>プロモーション

Photo:Natsuko Okada
Text:Ryuta Morishita

*価格はすべて、税込です。

お問い合わせ
メンズ館6階=メンズコンテンポラリー
03-3352-1111(大代表)
メールでのお問い合わせはこちら