2020.02.07 update

【インタビュー】世界に放つ「山梨ジュエリー」の輝き──。ビッグコラボが絶えない<IVXLCDM>の美学

日本、アジアのみならずヨーロッパなどのファッション先進国からも熱い視線を送られている、山梨・甲府発のジュエリーブランド<IVXLCDM>。国内の人気ファッションブランドのアクセサリー製作を皮切りに、立ち上げから13年目を迎える現在、コラボオファーが絶えない稀有な存在となっている。

同ブランドは2月5日(水)から21日(金)にわたり、メンズ館6階=メンズコンテンポラリーにてポップアップを展開。伊勢丹では2度目となるポップアップを前に、ジュエリー業界を牽引してきた同ブランドのデザイナー、上島徹也氏にインタビューを敢行した。

これまで、メディアへの露出も少なく、あまり多くを語ることがなかった同氏に、山梨におけるジュエリーの歴史から、ブランド立ち上げの経緯、物作りに対するこだわりなどについて語っていただいた。

時代を超えて継承されるハイジュエラーを目指して


――まず初めに、山梨が生産拠点とのことですが、山梨で製作するメリットを教えてください。

業界以外の方にはあまり知られていないことなのですが、例えば“岡山のデニム”“鯖江の眼鏡”と同じように“山梨のジュエリー”と言ってしまっていいほど、山梨にはジュエリーの歴史があります。約5000~3000年前の縄文時代の遺跡から水晶の原石が発掘されていますし、江戸時代から貴石の研磨や加工技術が発展していき、現在も生産量は日本一。私自身山梨出身で、小さい頃から宝飾品関係のお店や会社に囲まれて育ったので、貴石やその加工品などいつも身近に感じていました。


山梨・甲府発のジュエリーブランド<IVXLCDM>デザイナー、上島徹也氏。


――そこからブランドを立ち上げようと思ったきっかけについて教えてください。

もともと服好きということもあり、将来はファッションに関わる仕事がしたいと漠然と考えていまして、高校卒業後は地元の美術専門学校のジュエリーデザイン科に進学しました。卒業後は地元の貴金属屋に就職して、百貨店や呉服店の催事でジュエリーを展示販売する仕事をしていました。ある時、山梨でセレクトショップをやっていた友人が、東京でブランドを立ち上げることになって、「アクセサリーを作ってもらえないか」という依頼があったんです。本職があったため、片手間のバイト感覚で手伝い始めたことがすべての始まりでした。

あれよあれよと瞬く間に大きくなっていってしまって。ブランドの成功に貢献できたことに対する喜びを感じる一方で、デザイナーとして自分のアイデアで勝負してみたいと気持ちも芽生えてきました。そして、2007年にIVXLCDMを立ち上げたんです。ちなみにブランド名は、ローマ数字の1、5、10、50、100、500、1000の頭文字を並べたもの。これには時代を超えて受け継がれていってほしいという願いを込めています。

――2009年にはパリコレ時期にも展示をされています。

今もそうですが、当時からIVXLCDMでオリジナルアイテムを展開しつつ、他社ブランドのアクセサリー製作を請け負っていました。いわゆるOEMですね。そこで繋がりのあるブランドさんたちが、こぞってパリコレに出展していたので、ダメもとでトライしてみたのが1回目でしたね。甘い考えだったかもしれませんが、将来的には世界に山梨ジュエリーの魅力を知ってもらいたいと考えていたので、良いステップになればいいなと。



――そこでいきなり世界的なセレクトショップとの契約が決まりますね。

正直あまり手応えを感じられないまま帰国したのですが、その数日後に海外から1件のFAXオーダーが届いたんです。そこにはあのパリの名店、COLETTE(コレット)の文字があって、「これ本当にあのコレット?」って。イタズラなんじゃないかと信じられず、スタッフに何度も何度も確認したのを覚えています。結局間違いではなく、無事取引が始まりました。

 

ポップアップ1週目と2週目、それぞれにビッグなコラボレーターを用意


――今回は2週に分けてのポップアップですが、1週目と2週目で、それぞれ目玉となるアイテムがあるとお聞きしています。まず1週目の目玉は何でしょうか。

世界的に有名なグラフィックアーティスト、アンドレ・サレヴァとのコラボジュエリーです。彼が生み出したアイコニックなキャラクター「Mr.A」をモチーフにK18ゴールド製、シルバー925製のペンダントやブレスレットなど、計4型13種類を展開します。すべてにシリアルナンバーが記載された、数量限定のコレクションです。


  • アンドレ・サレヴァ×<IVXLCDM>
    ペンダント K18(S)473,000円、(S)30,800円、(L)36,300円、 ラペルピン 19,800円、 ブレスレット 52,800円
    *伊勢丹新宿店先行発売


実はコレットで取り扱いが始まったのは、アンドレさんのおかげと言っても過言ではないんです。10年以上前に某セレクトショップのオーナーさんと、ホテルのラウンジで打ち合わせをしていた時、たまたま隣の席に居合わせたのがアンドレさんでした。オーナーさんが「上島くんは面白いことやっているから、アンドレも何か作ってもらったら?」と提案してくれたのがきっかけで、アンドレさんのためにジュエリーを作ることになりました。そして、アンドレさんのために作ったジュエリーに目をとめ、「素敵ね、それどこの?」と聞いてくれたのが、世界的に有名なコレットのバイヤー、サラさんだった。そんな裏話もあって、あのFAXが送られてきたというわけです。

――なんとも海外らしいエピソードですね。続いて、2週目の目玉アイテムは何でしょうか。


  • <ユニフォーム エクスペリメント>×<IVXLCDM>
    ジュエリーカラビナ (K18ゴールド×ダイヤモンド)2,475,000円、(SV925×ダイヤモンド)264,000円、(K10 イエローゴールド×ダイヤモンド)1,650,000円


今回で2回目となる<ユニフォーム エクスペリメント>さんとのコラボアイテムですね。前回も好評だったジュエリーカラビナをご用意しました。K18ゴールド×ダイヤモンドモデル、シルバー925×ダイヤモンドモデルに加えて、今回はK10イエローゴールド×ダイヤモンドモデルの3種類を展開します。開閉部には<ユニフォーム エクスペリメント>と<IVXLCDM>のロゴをそれぞれ刻印し、アクセントとしています。


――ジュエリーとしてカラビナを選んだのは、とても興味深いですね。

私自身の経験ですが、ちょうど車を買い替えた時、キーケースに鍵が全部入りきらず、収まりが非常に悪かった。ステンレス製のカラビナも使ってみましたが、今度は素材の安っぽさが気になってしまって。当時にしては奮発して買った車だったから、キーの存在感に負けないラグジュアリーさと、機能性を両立したキーホルダーが必要だと思い、最初は自分用のジュエリーカラビナを作りました。その後、<IVXLCDM>でも商品化した当初、サンプルを見ていち早く興味を持ってくれたのが、<ユニフォーム エクスペリメント>の清永(浩文)さんでした。結果、自分と同じ悩みを抱えていた多くの方々の共感を得て、今ではブランドを代表する定番アイテムとなっています。



――アイテムのクオリティーはどのように維持されているんでしょうか

基本的には、山梨屈指の技術を持つ特定の職人さんだけにお仕事をお願いしています。石屋、削り屋、磨き屋、留め屋など、各加工でトップレベルの職人さんたちをそろえています。アイテム一つ一つに、卓越した技術と情熱が惜しみなく注ぎ込まれていると言えます。生産効率を重視して、すべての加工ができるメーカーに任せたり、いつもお願いしている職人さん以外に任せるようなことは絶対にやらないですね。

――最後に、どのようなポップアップになってほしいですか

まずは<IVXLCDM>の商品を直接見て、触れてもらって、ゴールドやダイヤモンドなど素材の美しさ、加工の美しさ、手に取った時の存在感や高揚感などを感じていただけたらなと。そしてその裏側にある作り手の思いや生産背景まで、感じ取っていただけたら幸いです。


今はまだ「山梨といえば?」という質問に対して、「ワイン」とか「果物」と答えられる方が大半です。現段階での認知度は低いかもしれませんが、自分たちの信念を貫き、磨き続けることで、他の特産品や地場産業にも負けない輝きを放つことができると思っています。将来的に「山梨といえばジュエリー」と真っ先に思い浮かべてもらえる足掛かりとなる、そんなポップアップになればいいですね。


イベント情報
<IVXLCDM>ポップアップストア
  • メンズ館6階=メンズコンテポラリー

Photo:Ryuta Morishita
Text:Shunsuke Shiga

*価格はすべて、税込です。

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