2020.02.04 update

【インタビュー】松田智沖(ジョン ロブ ジャパン社長)|今こそ伝えたい、<ジョンロブ>の真価と新たな魅力

<JOHN LOBB/ジョンロブ>が表現する多彩な魅力と、良質な紳士靴のあり方とは。日本にて長年同ブランドを率いて来たリーダーにお話を伺った。


ジョン ロブ ジャパンの松田智沖社長


ビスポーク(オーダーメイド)メーカーとして150年以上の歴史を持ち、1981年にレディメイド(既製)靴を発表してからは、高級既製紳士靴の最高峰として君臨し続けている<ジョンロブ>。2014年からはウィメンズ&メンズファッションで活躍していたパウラ・ジェルバーゼをアーティスティック・ディレクターに迎え、従来の英国伝統の靴づくりに、ブランドルーツに根ざしたフィロソフィやモード感を盛り込み、さらにはメンズの革靴のみならず、スニーカーやウィメンズシューズまで幅広く展開するようになった。

そんな<ジョンロブ>が、今の時代に改めて提示したいものとは何だろうか。ジョン ロブ ジャパンの松田智沖社長はその理由を次のように語った。

「いまあるジョンロブのイメージを、一度リセットしたいという気持ちがあります。ジョンロブは高級でクラシックなシューズ、ある程度キャリアや年齢を重ねた方が履くブランドというイメージをお持ちの方が多いと思います。でも、例えばミニマムな美しさのあるモードブランドの服を着た若い方が、ジョンロブの靴を履いたとしても、それは似合うと思うのです。もっと幅広い感性に、ジョンロブのいまを知っていただきたいんです」

 

いまを見据えた、「シティ」と「フィリップ」



2020年春夏シーズンでは、限定モデルとして4種のシューズが用意されている。中でも注目は、人気のラスト(木型)8695を使った、キャップトウオックスフォード(ストレートチップ)「シティ」と、パンチドキャップオックスフォード「フィリップ」の2モデル。以前から<ジョンロブ>を知る人にとっては、懐かしい、かつての名モデルの復刻と映るかもしれないが、その意図は単なるリイシューではないと松田社長は言う。

「こうしたエクスクルーシヴモデルのリクエストをお受けしたのは、8695というラウンドトウのラストが持つボリューム感が、今という時代の感覚に合っていると思ったからです。これらは、むしろ現代の若い人たちの感性に向けたものです。決して古いものを引っ張り出してきたわけではありません」


確かに、来季のトレンドのひとつ、ユニフォームテイストのセットアップなどには、通常展開している流麗なラスト7000の「シティⅡ」よりも、今回の復刻「シティ」のほうが似合いそうだ。またエプロンフロントダービー(Uチップ)の「シャンボード」は、そのワーク由来のスタイルや、「クラシックラバーソール」の採用で適度なカジュアル感があり、昨今のファッションに合わせやすくなっている。人気のローファー「ロペス」の別注モデルは、屈曲性をもたせたテンシル・コンストラクションによる柔らかな足入れ感で、素足でも履けそうだ。

良い靴は、美しく、そして長持ちする


さらに松田社長は、<ジョンロブ>というブランドが追求している価値として、次のように語った。

「いい靴を少しでも長く使っていただくことを、常に軸としています。それはジョンロブ、そして高品質な靴が持つDNAです。少し話がずれるかもしれませんが、昨今インタビューで必ずサスティナビリティについて話題になります。ただ、もともと弊社の靴自体にサスティナビリティ性があるというか、長く、一生を通じて履いていけるものです。逆に言えば、いかに長く履けるかを念頭に、ものづくりをしています」


<ジョンロブ>が至高の紳士靴たるゆえんは、その姿の美しさだけではなく、堅牢性や耐久性にあるのだという。そうした中身の充実は工房の職人たちによる、丁寧なつくりが実現しているとも。さらに松田社長は、<ジョンロブ>がこだわり続ける、通常アッパー(靴上部の革)に使っているフルグレインのカーフレザーについて次のように説明した。

「フルグレインのカーフとは、動物(牛)の原皮をそのままの状態でなめした革、ということです。現在は原皮の表面を加工して、皮の表面についた傷など無くし均質にした革を使う場合が多々ありますが、ジョンロブではそうしたレザーは使っていません。そして、フルグレインの革は呼吸するのです」

選りすぐった素材と、高い技巧を使ってつくられる<ジョンロブ>の靴の魅力は、「プレシャスライン」にも表れている。日本でも限られた店舗にしかない、良質なクロコダイルやリザードレザーを使った定番モデルがそれだ。

「ジョンロブと密接な関係があるエルメスにて開発されているプレシャス・レザーから、靴づくりに適したものを取り入れています。バックスキンのクロコダイルレザーなどを既製靴として展開していますが、バイ・リクエストでオーダーすることも可能です。よい品質の革を、安定して使うことができるようになり、こうした取り組みが実現しました」

「良い靴とはどんなものか、を確認しに来ていただくのでもいいと思います。その上で、ご自身に合ったサイズで、ジョンロブの履き心地を味わってほしい。さらに履き込んでいったなら、5年後10年後、より良さを味わっていただけると思います。そういう靴と出合っていただける機会が、ジョンロブだったらうれしいですね」


Photo:Tatsuya Ozawa
Text:Yukihiro Sugawara(LAST)
 
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