ファッション雑誌をたくさん並べた店が持てたら……


柴田 ジョン・レノンと、もう一冊の『TAKE IVY』の2冊の間には、ファッションの観点からすると距離があるような気がしますが……。

中武 通った大学が御茶ノ水にあって、近くでアルバイトを探して、神保町の古書店で働きはじめました。ただ大学に近いという理由でしたが、それが古本の世界との出合いです。古い雑誌が入って来ると楽しく読んでいたんですが、60年代の『メンズクラブ』を見て、この頃の日本人ってカッコいいなと思いました。
読んでいくうちに「これがアイビーっていうものか…」と思って、ふと親父のスイングトップを思い出したんです。

柴田 なるほど、そこに繋がっていくわけですね。

 


中武 着るものを選ばない親父の一張羅な感じと、アメリカの学生達のバンカラなイメージが妙に結びついたんです。
初めは「トラッド」がどうこうというより、ジャケットを着て下は短パンみたいなバランス感覚だったり、切りっぱなしのコットンパンツだったり、日本の気候や情緒では辿り着けないような合理的感覚に惹かれました。
一見フツーな感じだったりもするのですが、くだけていてもだらしなく見えないし、ユニフォーム的でもその人の個性が出ているような不思議なカッコよさ。それから純粋にアイビーにハマって、英国寄りだった自分が馬鹿にしていた“旧きよきアメリカ”も一転して大好物になりました。

柴田 当時はどんな格好をしていたんですか。やっぱりまんま『TAKE IVY』スタイル!?

中武 スタイルにバリエーションがあったのは変わりませんが、そこに『アイビー』という柱が加わった感じです。貧乏学生だったので基本古着ですが、<ブルックス ブラザーズ>も着ていました。
柴田さんには『TAKE IVY』はどんな本ですか。




柴田 教科書ですよね、『TAKE IVY』。でも、このまんまが似合う人と、似あわない人がいて、自分は…。若いころから似合う人はうらましいかな~(笑)

中武 今日持ってきたのは初版ですが、これを若い人にすすめても、あまりピンとこない人も多いみたいです。

柴田 今の若い世代はもっと「この」瞬間を大事にしますよね。感覚的に、動物的に。でもそのアンテナの高さには驚くばかりです。

中武 お客さんからは、「これだけファッション誌があるんだから、服も扱えばいいのに」などの声もありますが、スペースも必要だし、なかなか……。

柴田 あ、なるほど!たしかに、そんな『マグニフ』見てみたい!!じゃそれをうちでやりましょうよ!!(笑)




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【Amvai×徒然なるモノ語り】名著から紐解く達人のファッション考


■Amver 古書店 店主 中武康法(Yasunori Nakadake)
1976年宮崎県出身。大学入学と同時に上京。それから間もなくして、世界的な古書店街である神田神保町にて古書の道へと進む。10年以上の古書店勤務を続けるなかで、過去のファッション雑誌を顧みることの面白さと重要性を見出してゆく。2009年、同じ神保町の地に古書店「magnif/マグニフ」ヴィンテージマガジンを中心としたその品揃えは瞬く間に注目を集め、開業から今日まで多くのマスコミに取り上げられる。特にメンズファッション関連の品揃えには定評があり、服飾メーカー、デザイナー、ファッション雑誌編集者、そして多くの洒落者や趣味人たちが足繁く通う店となっている。最近ではアパレルショップ、百貨店などのイベント協力など、その活動の幅は更に広がりを見せている。

magnif(マグニフ)
東京都千代田区神田神保町1-17
TEL・FAX : 03-5280-5911
OPEN:11:00~19:00(定休日:不定休)
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