皮革のプロに聞いた、長く使うための鞄(レザーバッグ)のお手入れ。
新しい靴を買うときは「お手入れグッズ」も一緒に購入を考えるのに、鞄を買うときはケアアイテムまで思いが至らない――今、そのことに気づいたあなたに、「鞄のお手入れ」をご提案します。シューケアブランド<M.MOWBRAY/M.モウブレィ>を扱う株式会社R&Dの齊藤 誠さんからさまざまなケアテクニックを教わりました。
お手入れ基本編
皮革のケアは、人間の肌で考えるとその重要性がわかる
齊藤 最近は、新しい鞄を購入されたお客さまから、革のお手入れについてと尋ねられることが増えてきました。そう話すのは、シューケアブランド<M.MOWBRAY/M.モウブレィ>を取り扱う、株式会社R&Dの齊藤 誠さん。今回、齊藤さんに革鞄のケアテクニックについて伺いました。
「レザーのケアはよく「スキンケア」にも例えられます。何もケアしないとどんどん乾燥していくのは人間の肌も皮革も同じ。乾燥すると表面が硬くなってトラブルが起こりやすくなります。男性も、洗顔をしてから水分と栄養を与えるベーシックなスキンケアはかなり浸透してきているので、手順は理解していただきやすいと思います。きちんとケアしていけば皮革本来の魅力が増しますので、ぜひとも習慣化してほしいものです。」
池澤 私も仕事柄、通勤電車の中で男性のビジネスバッグをついつい見てしまいますが、革がカサカサになった状態で使用されているのをよく見かけます。靴も鞄も同じ皮革製品なのに不思議ですね。バッグのケア方法は靴と同じと考えていいですか?
齊藤 はい、全体をブラッシングでホコリやゴミを払ってから、リムーバーで汚れを落とし、クリームで栄養を与えて、防水スプレーをかけるという手順はお馴染みだと思います。
池澤 レザーのケアはよく「スキンケア」にも例えられますよね。
齊藤 そうですね。何もケアしないとどんどん乾燥していくのは人間の肌も皮革も同じです。乾燥すると表面が硬くなってトラブルが起こりやすくなります。
池澤 男性にも、洗顔をしてから水分と栄養を与えるベーシックなスキンケアはかなり浸透してきているので、手順は理解していただきやすいと思います。
齊藤 きちんとケアしていけば皮革本来の魅力が増します。きれいにエイジングさせていくためにもぜひケアを習慣化してほしいです。
鞄はもちろん財布や名刺入れもケアが必須
齊藤 「まず鞄のお手入れには、馬毛ブラシとクリームを用意します。 ブラシの種類には馬、豚、山羊などいろんなものがありますが、基本的には馬毛で大丈夫です。馬毛は毛先が細くて密度が高く、やわらかいのに適度な弾力があるので、革の肌理や縫製糸の隙間のホコリ落としに適しています。豚毛は硬く、隙間があるので、靴のコバや靴底の汚れ落としに向いています。」
池澤 革の色が落ちしてしまうか心配ですが…。
齊藤 革本来の油分と染料がくっついたものが落ちているだけで、直接的に染料が落ちているわけではありません。ただ、手染めや後染めの皮革にはデリケートなものもあるのでご購入時にケア方法も確認しておきましょう。
池澤 これも靴と同じように、まず目立たない場所でクリームを使ってみるのが大事ですね。ブラシは馬毛がいいんですか?
齊藤 馬、豚、山羊などいろんな種類のブラシがありますが、馬毛で大丈夫です。スエードにも使えますが、スエードには靴にも使うゴム状のブラシを使って、スエード専用栄養スプレーをおすすめします。
池澤 またコードバンには専用クリーム「コードバンクリーム レノベーター」を使ってください。コードバンの補色・栄養・ツヤ出しのほか、ガラスレザーの補色・ツヤ出しにも使えます。ブライドルレザーにも使えますよ。薄く塗ってブラシをかけるとツヤが出ます。
ツヤを出さず皮革の風合いを生かす保湿用クリーム
保湿用に「デリケートクリーム」も用意したいですね。水分を多く含み、油分を抑えめにしているので、ツヤを抑えながら革本来の風合いを活かしてくれます。洗浄成分はありませんが、革の表面を撫でるようにクリームを行き渡らせると、表面の汚れも拭き取れます。」
お手入れの頻度としては、鞄の使用具合によりますが、毎日使っているなら1ヵ月に一回がおすすめ。しっかり手入れすることで革の風合いを保つことができるので、エイジングも美しく仕上がるそうです。
トラブル対応編
ついてしまった手垢などは落とせる?
鞄の表面は気づかないうちに結構汚れているものです。手垢でエッジが真っ黒に汚れていたり、いつのまにか気が付かないシミなどが付着していたり。靴の汚れ落としに「クリーナー」を使うのは常識ですが、鞄の汚れ落としにも使えるクリーナーをご紹介いただきました。
「<M.モウブレィ>ではステインクレンジングウォーターを使います。革の表面の古いクリームの油分などを落として通気性を良くするんです。その後から、クリームを使って栄養を与えてください。革の汚れを落とす目的は、毛穴の中に詰まっている汚れを落とすことです。人間のスキンケアで例えるなら、化粧を落としてスッピン状態に戻すことですね。新品の靴は、履き下ろす前に革にクリームを与えてから履き始めますが、鞄も同じです。製品が出来上がってからお客さまの手に渡るまで時間があるので、革はスッピンではなく敏感肌のような状態だと考えてください。使う前に、ブラッシングして、クリームを与える基本のケアでOKです。 雨に濡れた後の靴や鞄ににじみ出てくる、白い汚れ(塩分)にも使えますよ。」
基本のケアに+αで水濡れを防ぎたい
ちょうど雨に濡れたときのお話しをいただいたところですが、雨対策には事前のお手入れが大切です。天然素材の牛革は、水が染み込みやすい部分とそうでない部分があり、水に濡れるとその境目がムラになりやすいのです。事前にクリームを塗ってコンディションを整えてから、防水(はっ水)スプレーを吹きつけておくと、よりダメージを受けにくくなります。
「 <M.モウブレィ>のスプレータイプ栄養剤、ナッパケア ソフトレザー用 栄養・防水(はっ水)スプレーを推奨します。このスプレーは、防水(はっ水)成分が含まれているので、全体にかけてあげるだけで、皮革ケアの役割と防水(はっ水)効果が得られます。 短時間で乾きやすいので、お出かけ前にお使いいただけます。
もうひとつのプロテクターアルファーラージ オールマイティ 撥水・防汚スプレーは、水濡れ対策とともに、雨に濡れた後のケアにも役立ちます。こちらは革や布地などオールマイティな素材に使えます。雨や雪、ホコリ、ゴミ、油分などの汚れをプロテクトして、防水(はっ水)と防汚効果があります。靴やバッグにはもちろん、雨が激しいときは傘にもお使いいただけます。」
擦れるところが色落ちしてきたかもしれない
長く使っていると身体に触れる箇所の色が薄くなって革の地の色が浮き上がってきたり、日に当たって色が褪せてくるのが気になる方もいることでしょう。実際に革の色は革本来の油分とくっついて多少落ちることはありますが、直接的に染料が落ちることはありません。ただし手染めや後染めの革製品にはデリケートなものもあるので、ご購入時にケア方法も確認しておきましょう。
「コバなど革の断面や、鞄の四隅の色が傷んで落ちてきたときは、市販の補修用クリームを塗ることで多少はカバーすることができます。しかし革製品の色と同じ色が会ったとしても、使っているうちに色味や風合いが変わってきますので、まったく同じ色に塗り重ねるのは一般の方には難しいかもしれません。よほど使い込んで傷がついたり、革の表面が削れてしまって色がハゲてきた場合も個人で補修することは難しいと思います。このようなときは専門の革修理のリペアショップへお持込ください。
乾燥させてしまったらヒビ割れしてきた
傷んでしまったり、多少傷が付いたぐらいなら、使い込んだ自分だけの「味」と納得することもできそうですが、ケアを怠って表面が乾燥してひび割れてきてしまったら、味出しどころではありません。
「細かいシワ程度のひび割れならば、栄養クリームで改善することがあります。硬く乾燥した革にブラシや布で丁寧に塗り込んで、乾いた布で拭き取ったら、2〜3日おいて油分を馴染ませたら、また同じ作業を何回かに分けて行います。完全に割れてしまったら、リペア工房へ。そうなる前に、普段から表面各部のチェックも行いましょう。」
大切な鞄にカビを生やしてしまった
使わなくなってしまってあった高級鞄や、普段使っていても、ふと気がついたらカビが生えていたなんてこともあります。カビを生やしてしまうまえに、早めのケアをしておきたいところですが、やむをえずカビてしまった場合は、プロにお任せください。
「鞄の表面だけにふわふわと生えている白カビ程度なら、カビ落としを使用してカビをしっかりと除去したのち、栄養クリームを与えれば蘇ることもあります。アルコールは革色を落としてしまうこともあるので、使用しないでください。革の繊維の中にまで根が生えてしまったカビは、対応が難しくなります。カビをブラシでこすってみて、跡が消えない場合は、早めにリペアショップにお持ちください。」
鞄を保管するときはカビ対策として、ホコリや汚れを落としてから、室内の気温の変化が少なく湿気の少ない場所に仕舞います。クロゼットなど下部は湿気が溜まりやすいので、高い場所が安心です。購入時についてきた布製の袋に入れておくと、湿気や温度の急激な変化が少ないので安心です。
Photo&Text:ISETAN MEN‘S net
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