【特集】シューケア3大ブランドを比較!靴磨きのプロが教える必須道具の使い方と選び方とは。
今回は、シューケアブランド大手3社が一堂に会し、必須道具の使い方とその選び方、各ブランドのマストアイテムなど、それぞれを使う意味についても語り合っていただきました。
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座談会参加者
靴を長く履くための“正しい”お手入れ
三橋 まず靴に対して、女性は「汚れてからどうしよう?」と思いますが、男性は「こうならないようにするにはどうしたらいい?」というアプローチです。ですから、男性は靴磨きを趣味的にとらえると好きになる傾向にありますね。
齊藤 男女ともそうですが、時折スーツやジャケットをきれいに着ていても平気で汚れた靴を履いている人がいますが、きれいな靴を履いていれば、よりきちんと装って見えます。
中野 電車の中でビジネスマンの靴を見ると、磨いていないのが気になりますが、それ以上に形が崩れている人が多い印象があります。
三橋 お客さまからは、「どうしたら光るの?」とよく聞かれますが、まず“シューケアとシューシャインの違い”を理解してほしいですね。シューケアは靴を長く履くための“素材を保つお手入れ”のことです。革はタンパク質の塊(かたまり)で、10%ほど油があれば良い状態を保てる素材なので、シューケアは「革の油分が減るのを補ってあげるもの」と解釈すると分かりやすいと思います。
齊藤 シューケアは、簡単にいうと「汚れを落としてクリームで栄養を与えてツヤを出してあげる」プロセスで、女性の化粧に例えると、クレンジング(洗顔)→基礎化粧品(化粧水・乳液など)→メイクアップという順と同じ。クレンジングしてあげないと厚化粧になって肌の傷(いた)みに繋がるように、革も3回塗ったら1回ぐらい汚れを落としてあげるようアドバイスしています。
三橋 齊藤さんの言うとおり、革も髪もタンパク質なので、「汚れ落とし=シャンプー、クリーム=リンス、缶ポリッシュ=ヘアワックス」と例えて説明します。シャンプーとリンスは月に1回ぐらいはしてほしいですね。
3大ブランドの「売れてるアイテム」を解説
三橋 <ブートブラック>は<コロンブス>の染料など革製品の仕上げ材の技術を利用して10年前に誕生したブランドで、私は3年前から商品企画に携わっています。先ほど言ったように、「革は油で潤(うるお)すので、それなら徹底的に油を入れよう」というコンセプトがあり、ホホバ油を主体に製品を展開してきましたが、新しい「コレクションズ」ラインは、保革効果の高いアルガンオイルを主体にしています。齊藤 私はもともと靴磨きが好きですが、仕事上、「説得力につながる」ので、手入れは欠かしません。イタリア発の<M.モウブレィ>の人気製品「デリケートクリーム」は、保湿と栄養に特化し、蝋(ロウ)と油分を抑えた栄養クリーム。水分の多いクリームなのでベタつかず、サラッとした仕上がりが特徴です。
中野 フランス発の<サフィール>の中でも最高品質を誇るハイグレードライン<サフィール ノワール>で最も支持をいただいているのは、天然成分にこだわった靴クリーム「クレム1925」です。1925はパリ万博で金賞を受賞した年で、これ一つで汚れ落とし・栄養補給・ツヤだし・撥水・補色の5役をこなします。
中野 <サフィール>は昔から「水を入れない」製法にこだわっていて、近年処方が変わり、保湿成分のシアバターを配合。さらにより良いものになりました。クレム1925も乳化性クリームのような柔らかさを持ちながら「水分ゼロ」を実現。ワックスを使わずに光らせたい方にお薦めです。また、<サフィール ノワール>は「色づきがいい、浸透力が高い」と評判で、水を使っていないので雨でもクリームが流れにくく効果が長く続きます。つまり手入れの頻度が減り、コスパが高いので、「シューケアは面倒くさい」人に最適。クリームを塗布するのは1~2週間に1回ぐらいで、曇ってきたらブラシで磨くとツヤが戻ります。
シューケアのプロたちが他社製品を品評
三橋 <M.モウブレィ>の製品は伸びの良さや香りを含めて、使っていて気持ちいいですね。看板のデリケートクリームも安心して使える栄養クリームです。<サフィール>はまずパッケージがカッコイイ。「靴磨き=趣味」と捉えると、見た目は大事です。また、日本では出せない香りや、明度のあるポップなカラーは魅力的です。
中野 ケア商品は原料のコントロールなどが難しいものですが、<ブートブラック>に限らず<コロンブス>は製品が安定しているイメージがあります。<M.モウブレィ>は、さまざまなメーカーのリクエストに対して細かく商品を作っていくのがすごい。クリームは伸びが良く、よく考えられていると思います。
齊藤 <ブートブラック>はなんといってもハイシャイン専用の「ハイシャインクリーナー」が素晴らしいです。ワックスを落とす作業は苦労するし、力の加減が難しいものですが、非常にきれいになってビックリしました。<サフィール ノワール>は缶入りワックスの「ミラーグロス」が秀逸。鏡面磨きはマスターしたいものですが、これを使うと簡単に光ります。お客さまに他社製品のことも聞かれるので、気になる商品は自分で必ず使いますね。
誰もが憧れる“鏡面磨き”の難しさと魅力
三橋 「革は油だけ入れてあげればいい」と言いましたが、「水」の役割も大事です。先にご紹介した「乳化性クリーム」は、水が含まれているので、塗るだけで“革の毛穴”が広がり、広がった毛穴にクリームが均一に入るので、ブラッシングも楽になります。一方、鏡面磨きに使う「シューポリッシュ」は革に油を入れて表面をコーティングするもので、キズなどを防ぐ大切な役割も果たします。シューポリッシュを塗った上に水を使うことで表面を均一にするのですが、これが技術的に難しく、テクニックが必要です。
三橋 初心者の方には、その加減がわかりにくいですが、一番悪いのは「光らない」からと水を使いすぎることです。毛穴が広がって、そこをさらにこするので、摩擦熱が出て、余計に毛穴が広がって革を傷めてしまいます。水の役割は革にとって本当に大事なんです。<ブートブラック>の「ハイシャイン ベース」と「ハイシャイン コート」は、役割を別々に持たせたもの。ベースは油性で水が入っていませんが、コートは水が入った乳化性。ベースで革の表面にある凹凸を埋めてフラットな状態にし、次に油の層の上にしっかりと水でコートします。2アイテムで効果をしっかり出せて、薄塗りで鏡面仕上げができます。
中野 <サフィール ノワール>は、先ほど齊藤さんにお誉めいただきましたが、「ミラーグロス」がハイシャイン用です。従来のポリッシュに比べて、“ツヤを早く出す、強く光らせる”ために開発されたワックスで、カルナバワックスやモンタンワックスをはじめとした高級天然ワックスをふんだんに使用しています。
意外と知らない、シューズキーパーの選び方
三橋 シューズキーパーを入れるタイミングって人それぞれだと思いますが、私は帰宅してすぐ入れます。革は汗や水を含むと繊維が緩(ゆる)みます。水分が入って膨張したあとに徐々に乾燥していきますが、「キーパーに沿って収縮したほうがより良い状態」になると思っています。皆さんはどうですか?中野 私は一晩おきます。靴の汗や水分をある程度放出したほうがいいと思っているからです。
三橋 革は繊維のかたまりなので、型崩れ防止はもちろん、繊維を均一にするのがシューズキーパーの機能です。洋服のハンガーと同じで「形を整える」もの。靴の革は伸びる部分と伸びない部分があるので、「伸びないところをきちんと合わせあげる」のがシューズキーパーの役割です。<コロンブス>が作っている「イセタンメンズオリジナル」のシューズキーパーは、「全体的に張って形を整える」という考えのドイツの木型をベースにしていますが、「点で押さえる」キーパーなどもあるので、靴を購入したときに一緒に買うのが間違いがないですね。
<イセタンメンズ>
シューツリー 7,700円
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齊藤 弊社が扱っている<Sarto Recamier/サルトレカミエ>のシューズキーパーには3つの型があり、いずれも吸湿性に優れたブナ材を使っています。「SR200EX」(8,640円)は、甲に厚みがあって、イタリア靴メーカー系シューズのシェイプなどにも適したモデルです。また「SR300EX」は、幅と高さがしっかりあって、アメリカ靴や日本製の靴などを含む全般にフィット感良く対応します。
<サルトレカミエ>
シューツリー「SR300EX」 10,450円
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中野 フランスの靴木型製造メーカーが立ち上げた<LA CORDONNERIE ANGLAISE/ラ・コルドヌリ・アングレーズ>のシューズキーパーは、モデル「EMB551」が人気で、甲が薄く立ち上がりが急な英国靴に最適なフォルム。ヨーロッパのハイブランドの靴にも合わせやすい木型だと好評です。
<ラ・コルドヌリ・アングレーズ>
シューキーパー 11,550 円
Photo:Tatsuya Ozawa
Text:Makoto Kajii
*価格はすべて、税込です。
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