2017.06.27 update

手仕事を大切に、素材の良さを最大限引き出す──帽子ブランド〈キジマタカユキ〉が目指す次なるステージ


帽子は着用して活きるもの。いろんなスタイルに合う帽子を作りたい。──モノづくりに真摯に向き合う〈KIJIMA TAKAYUKI/キジマタカユキ〉デザイナー木島隆幸が、次なるステージと位置づけたのが2017年秋冬コレクションからスタートさせる「HIGH LINE(ハイライン)」だ。約3年ぶり2度目のインタビューでは、同コレクションを話題の中心に、作り手としての新たな挑戦について伺った。


帽子の新たなスタンダードを作る


私はデザイナーというより職人という思いでキャリアをスタートしました。四半世紀以上帽子づくりに携わっていますが、今でも帽子を作る喜びは常にあって、制作過程の中での集中力に楽しさを感じています。そんな中で、帽子作りのルーツはオートクチュールにあって、そのときに培った技術を活かせないかと、ずっと考えていたんです。

そして、あるとき知人から、「〈キジマタカユキ〉の帽子が手仕事なのは消費者は知らないし、気づいていないよ。木島君の思いは全然伝わってないよ」と言われたことがあったんです。

従来のコレクションもアトリエメイドで、私たちは当たり前にやってきたことですが、「ハイライン」ではよりハンドの箇所を増やしています。ずっと人の手の仕事を大切にしてきたことを伝えるためにも、この「ハイライン」をスタートしようという決意に変わりましたね。


 
 
 

「ハイライン」のように、上位カテゴリーを設けるというとデザインや素材は特徴的なものになりがちですが、私のブランドでは、素材の良さをどうやったら一番引き出せるかに注力しています。実を言うと、私は帽子自体にデザイン性はそれほど求めていないんです。

オートクチュールならその人に合わせたデザインができますが、私は、今のストリートファッションを現代的に解釈しながら、クチュールの技術をフィードバックして新しいものを作っていきたいんです。現在は帽子に限らずどの世界でも良い素材を手に入れることが難しいものですが、一番重要なものこそ素材選び。素材を吟味して、時にはビンテージ素材も使っていきたいですね。

私が言うのも変ですが、「ハイライン」は、今に生きるデザイン、普遍的な価値を持つという突き詰めたミニマルな方向性が時代に合っていると思うんです。目指すは、スタンダードを踏襲するのではなく、新しいスタンダードを作ること。それが表現できればと思っています。


マシンメイドと手仕事を特徴を活かしたモノづくり

 

素材調達や手仕事の多さなどで、大量生産が難しい「ハイライン」ですが、クチュールの技術を取り入れているので、ファッションの精通していなくても、その帽子を見て、たとえば佇まいが違うなど、何かが違うってことは感じ取ってもらえるはずです。


例えば、帽子の内側の汗止め部分は、量産品はミシンですが、ミシンだと表側に縫い目が出てしまうのでリボンなどで隠しています。ミニマルなデザインにステッチが入ると微妙にフォルムに影響が出ますが、ハンドで柔らかく付けられると表側に響かず、1本のステッチがないだけで美しさが変わってきます。

また、ワイドブリムの周囲の折り返し部分も柔らかい膨らみを出すためにハンドですくい縫いでまつっていくと、何かが違う雰囲気を醸しているはずです。

マシンメイドにはマシンの良さがあり、手仕事には手仕事にしか出せない良さがあって、それぞれの特徴を活かして使い分けていければいいと思っています。帽子は、見た目ではなく、かぶったときのフィーリングです。私の帽子を手にとって何かを感じていただければ嬉しいですね。

関連記事▶
帽子作りを根底から突き詰める、〈キジマタカユキ〉デザイナーが四半世紀のキャリアで気付いたデザインの未来とは

Photo:Tatsuya Ozawa
Text:Makoto Kajii

お問い合わせ
伊勢丹新宿店メンズ館2階=メンズクリエーターズ
03-3352-1111(大代表)
メールでのお問い合わせはこちら