2017.03.05 update

【インタビュー】<Royal Gorge Bridge/ロイヤル ゴージ ブリッジ>高橋 浩|名うてのインポーターの集大成。(1/2)

インポートシューズの黎明期より一線を走り続けてきた男が、自身の会社の創業30周年という節目の年にオリジナル・ブランドをローンチした。男の名は、高橋浩。ブランド名を〈ロイヤル ゴージ ブリッジ〉という。


「履き口は浅くないんですね」
「それだと80年代になっちゃうでしょ。やりたかったのは70年代だから」

クラシックといえば履き口が強調されるショートノーズばかりと思っていたから、いきなり出鼻をくじかれた格好だったが、世界の靴を長いこと見続けてきた高橋にはどうあがいたってかなうはずがない。知ったかぶりはいつだって冷や汗に変わる。

末広がりのヒール、両爪のダブルソール、外側をえぐったトップライン。あるいはエラスティックで甲をホールドするモカシン、ラウンドトウにスクエアなソール形状……徹底してつくり込んだのは、1970年代のサンフランシスコに生まれたファッションにルーツをもつディテールだ。なかでもサドルの意匠とそのバリエーションには唸らされた。お目にかかったことのないサドルが、じつにいい味を出している。ソックスタンプのデザインに懐かしさを覚える人もいるだろう。


ローファー
左・141,480円
右・143,640円

■メンズ館地下1階=紳士靴

「一般にヒッピーが語られることの多い時代ですが、いっぽうで大人の装いも花開いた。フェラガモやグッチが上陸して、アメリカのシューメーカーもその流れに追随、新しいトラッドが構築されていったのです」

高橋の腕の見せどころはクラシックをベースにしつつモードに仕立ててしまう編集能力にある。受け手のぼくらがとうじを知らず、新鮮にうつるということもあるけれど、それも高橋のさじ加減あってこそ。たとえば製造はメゾンブランドのOEM生産で知られるイタリアはマルケの小さな工房に託した。アルティジャーノのフィルターを通してアメリカ由来のデザインを再解釈するアプローチは定着して久しいが、別格。ディテールを愚直に積み重ねていった勝利だ。


ローファー
左・52,920円
中・63,720円
右・63,720円

■メンズ館地下1階=紳士靴

あえて現地の革を選ばなかったジャッジにも痺れた。フレンチカーフやイギリスのスコッチグレイン、アメリカのコードバンを使い分けて、それぞれのデザインの持ち味を殺すことなくイタリア特有のアクをセーブすることに成功している。知識、咀嚼力、世界に張り巡らした生産背景。どれが欠けてもこのツラは表現できなかったに違いない。つまり、高橋でなければたどり着けなかった靴。それが〈ロイヤル ゴージ ブリッジ〉なのだ。

デビューシーズンは70年代のサンフランシスコをテーマとしたが、掘り起こす年代、地域はシーズンごとに変えていくという。通底するのは、「アメリカをベースにしたモードなコレクション」。
久々に足取りも軽くなるシューブランドが誕生した。