靴文化の成熟とともに

ブートブラックを製造、販売するコロンブスは1919年に創業、ワンタッチで靴を光らせるナイトリキッドで一世を風靡した。


その印象から、量産メーカーの印象を抱かれがちだが、まったくの誤りである。それが証拠に時代の流れに乗ったメーカーが業種を問わずアジアへ産地を求めるなか、コロンブスは一貫して国内生産をまもった。品質に対する意識がなければ、そのような選択はとらなかったはずだ。コロンブスの姿勢、技術は評価され、いまやヨーロッパのラグジュアリーブランドにも知れ渡っている。

ではなぜ、ナイトリキッドのような商品を開発したのか。狙いはいたって簡単だ。高度経済成長時代のモーレツ社員に靴を手入れする時間はないが、さりとて汚れた靴で商談にいくわけにはいかない。“イージー”は当時の男にとってもっともプライオリティがたかかったのである。


<ブートブラック>
「アーティストパレット」2,160円
■メンズ館地下1階=紳士靴
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簡便な商品で靴を磨く大切さを教え、カスタマーが成熟してくれば潜在需要を掘り起こす商品を提供する。つねに半歩先をいくマーケティングは靴文化の向上を考えてもきわめて真っ当だった。

コロンブスのスタンスは灘伏見の蔵のそれと重なる。

灘伏見は日本酒の産地として名高いエリアだが、吟醸や地酒がブームになると劣勢を強いられた。小さな蔵の奮闘は左党にとってうれしいかぎりだったが、だからといって灘伏見を軽んじたのは早計だった。なぜならば弥生の時代にまで遡れる歴史は伊達ではないからである。なるほど現在では研ぎ澄ました酒をぞくぞく投入、地力をみせつけている。

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