【特集】写真家cherry chill will.と<THE CRIMIE/ザ・クライミー>が切り取った経済大国アメリカの“光と影”
HIP HOPがファッションのメインストリームとなる以前よりブラックカルチャーに傾倒し、自身もクラブカルチャーの中心にいたcherry chill will. (チェリー・チル・ウィル)氏。フォトグラファーとして現在の活躍はご存じの通り、シーンの中心にいるHIP HOPスターの撮影といえば、氏が取り下ろすケースが非常に多い。一方、東京のストリートシーンに根差し、ブラッシュアップを重ねてきたブランドが<THE CRIMIE/ザ・クライミー>。ミュージシャンとの取り組みも多く、ブランドの根底にはロックが流れる様に見えるが、実は2016年よりcherry chill will.氏をメインフォトグラファーに迎え、数々のLOOK撮影を敢行してきたまさに盟友とも言える関係性。
この両者がパートナーシップを組み作成したコレクションが、今回伊勢丹新宿店 メンズ館6階メンズコンテンポラリーで発表される。<THE CRIMIE>の2023年春夏コレクションにクリエイションの振り幅を与えるcherry chill will.氏とのコラボレーション。アメリカへの憧憬を表現し続ける<THE CRIMIE>のアイテムピースに一層の説得力をもたせる、ある種自然なクリションに仕上がっている。出会い、シューティングトリップ、そして現在に至るまでの関係性を、<THE CRIMIE>の代表を務めるYONHO氏と対談いただき、濃密なエピソードとともに語っていただいた。
“光と影”が混在しているアメリカを象徴する写真をピックアップしたのが今回のコレクション
――お二人の出会いのきっかけは?
cherry chill will.(以下C):出会いは(FLJマガジン編集長の)大野さんきっかけですね。
YONHO(以下Y):当時、僕がしっくりくるカメラマンの方に出会えずに困っていて。大野さんに相談したら「あぁ! 良い人いますよ」って紹介してくれたのがcherry chill will.だったんです。
――それは何年前ですか?
Y:2016年かな。もう7年前になりますね。それが最初のきっかけですね。
――最初のロス撮影はどうだったんですか?
C:過酷でした、マジで(苦笑)。ハンパじゃないですね。これがファッションのロケというか、ファッション撮影のデフォルトだと思ったら、こんなの続けていけねえって(苦笑)。本当にキツかったですね。でその後、年々スタッフが増えたり、とても大きい一軒家借りて撮影したりと、楽になってるというか、楽しくなってます。撮影初期は本当にキツかったですね。最初の撮影はYONHOさんとモデル兼STAFF2人と、俺の4人だったんです。1シーズンの洋服全部もって、運びから何から全部やるんですよ。
Y:今考えてもヒドいよね(笑)。でも、そこをやんないと始まらないなってのも当時はあったんで。
――思い出深い撮影はありますか?
C:僕はずっと音楽の、HIP HOPのブラックカルチャーという局地的な側面をずっと見てきた人間だったので、音楽のジャンルは色々通ってきたけど、ブラックカルチャー以外のアメリカに意外と疎かった。それ以外のアメリカ・カリフォルニアの姿を見せてくれたのが<THE CRIMIE>の撮影だったんですよね。俺が以前行ったり興味があったのは、サウスセントラル、スローソン、コンプトン、イングルウッドとか、黒人カルチャーの街。
Y:LAで生産やお店やる前に僕もよくその辺いきましたよ。
C:ロスのそういうとこしか見ていなかったのが、全く違うところを<THE CRIMIE>の撮影でみせてもらった。やっぱりこういうエリアがあるんだ、って結構カルチャーショックを受けた。ちょっと砂漠の方にいきましょう、ベガスの方にいきましょう、ってなった時に車で移動していると途中で周波数が変わってラジオ局が変わるじゃないですか、周波数的に。それまでずっとメインストリームのHIP HOPとかが流れてたのに、急にカントリーにミュージックに変わる。そういうのにも結構やられて。それでカントリーミュージックにもハマって。風景とカルチャーと、僕が知らなかったアメリカを見せてもらった旅が<THE CRIMIE>の撮影ですね。
――今回のコラボに関してですが、以前からコラボはやられてますよね?
Y:そうですね。今回のコラボレーションは伊勢丹さんで2023年春夏のコレクションをPOP UP展開するにあたり、cherry chill will.とのコラボレーションも作成して展開したいなと思い、しっかりと纏めた感じです。
――cherry chill will.さんにとってカリフォルニアってどうですか? 何を撮っていると楽しいとかありますか?
C:空港着いた瞬間から楽しいじゃないですか、(テンションが)上がりますよね。匂いから何から凄く好きだし。30分移動すると、さっきとはまるで違うエリアが出現して、風景もそこにいる人々、人種も変わっていくから心が動く。いつも助手席に乗せてもらうんですよ、常にカメラを持って。撮影の合間とかで周りにいた鳩が飛んでもシャッター切るくらい楽しんでますね。
――基本ずっと人を撮る、ポートレートがメインだったじゃないですか。風景写真ってどうなんですか?
C:HIP HOPのアーティスト写真を撮る前から風景写真を撮っていたからテンション的にはあまり変わらないというか。その場の空気を切り取るという意味では変わらず、直感的に心が動いた瞬間にシャッターを切っているだけです。
――コラボ商品に使用した写真はどのように選んだんですか?
Y:僕の方で選びました。なんかこう、個人的にいつも死生感を考える癖があって。アメリカって、アップタウンもあれば、浮浪者の方々が集まる場所もある、“光と影”みたいなところがあるじゃないですか。光と影が混在しているのが世の中であり、それが禍々しくも露骨に垣間見れるのがアメリカであり、そういったところをファッションとして露骨にならない程度に象徴できる写真をピックアップしているのが今回のコレクションです。
C:LOOK撮影初期の頃の写真が多いですね。その当時は特に何を見ても最高!ってテンションだったので、その時のフレッシュな感覚を思い出すというか、写真から出ている気がします。YONHOさんはそういうのを分かってくれてるんだなぁって思って。
Y:今言ってくれたように、そこを集めた感じです。一回そこを纏めたかったのもあるんですよ、パッケージにして収めたいなと。それで今回はメモリアル的な感じです、個人的には。
――裏地にこれだけ写真入れてあるのも凄いですよね。
Y:そうですね、総柄でこういう生地を作ったのをライダースに使用して。今回、光と影という意味合いもあるので、シャツやTシャツにはアメリカの光と影を象徴する写真を選んでいます。観光地にポツンと浮浪者がいるような。
C:住んでいる人しか撮れないものと、観光客というか外の人間の見方に違いってあるじゃないですか。アメリカ人が東京に来て見る東京と、俺ら見て撮る東京は全く違う。そこを分かったというか。現地の人にしてみればどうってことないだろうって物も僕らしく撮れる。地元じゃない、外国人が撮ったロスという面白さはあるかなと思います。
Y:Tシャツで言うと、これはソルトン・シーにある不動産屋さんの看板なんですけど、アメリカンドリームって書いてるんです。ソルトン・シー自体、修復不可な廃墟と化した半人口湖のリゾート地でアメリカンドリームが朽ち果てたところなんです。でもその看板を掲げているあたりが凄くアメリカっぽいな。
――アイテムに関してはどんな物を作ろうと思ったんですか?
Y:今回はその写真を纏めた総柄の生地をポケットから全て裏地でレザージャケットに収めたいと思いました。スペインラムを使った真夏以外も着られるをコンセプトで作っているブランドの代表作でもあるライダースのジャケット、あとブルゾンは1960 ~70年代を意識してブラックパンサー党メンバーなどのスタイルをイメージして贅沢な春のジャケットとして作りました。さらにその柄を使って、総柄の半袖シャツと、総柄の写真からピックアップしてTシャツ、長袖のドレスシャツも。写真を羽織るというか纏うとうか、そういう感覚で作ってみたいなと思って。
――アイテムでこだわったところはありますか?
C:僕バッチが好きなんですよ、こういう缶バッチ。自由時間があるとフリマに結構行くんです。そこでバッチとかワッペンとかかなり買うんですよね。パンクが好きだった時の名残もあってレザーとかジャケットとかに付けるのが今でも好きですね。なので今回のコラボでレザージャケットやシャツに特殊技法で作った金属製の缶バッチを付属して欲しいとリクエストしました。敢えて場所は決めずに、自分の好きなところに穴あけてって感じで。
――実際にアイテムが出来上がった感想は?
C:僕はカリフォルニアまでただ仕事でLOOKを撮りに行っている意識はなくて、色んな感情を持って撮影し、旅をさせてもらってる感覚なんです。皆んなでワイワイしている時もあれば、ふと孤独を感じる瞬間もあって。それって僕的に実は凄く心地よくて、その心情や感覚がランドスケープ写真には出ている気がしてます。だからライブとかでアーティストを撮っている時と衝動は一緒なんだけど、映るものはその場所の静寂だったり孤独だったり、ノスタルジックなものになっていく。そういった写真達が服としてまた別の形になってるのは単純に嬉しいですね。
▷ジュエリー
2023年春コレクションから代表的なアイテムに加えてラグジュアリーなフィニッシュ仕上げで展開する最新のファインジュエリーコレクションも、伊勢丹新宿店 メンズ館6階 メンズコンテンポラリーでのPOP UPに登場します。
- 開催期間:3月15日(水)~3月28日(火)
- 開催場所:伊勢丹新宿店 メンズ館6階 メンズコンテンポラリー
*価格はすべて、税込です。
*本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。商品の情報は予告なく改定、変更させていただく場合がございます。
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伊勢丹新宿店 メンズ館6階 メンズコンテンポラリー
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