プロが解説!スーツの着こなし【基本編】|ポイントは「縦寸・横寸」のフィッティング
ビジネススーツは「正しいシルエットと整ったバランス」が印象を決める──街を歩いている時、周りのビジネスマンのスーツの着こなしを観察すると、ジャケットの襟が抜けて首周りが浮いている、袖や着丈の長さが合っていない、スラックスの裾がダボッとしているなど、上手に着こなせていない人が意外と多いことに気がつきます。「人の振り見て我が振り直せ」という格言がある通り、ご自分のビジネススーツを着て鏡の前でサイズのセルフチェックをしましょう。
今回は、伊勢丹新宿店メンズ館カテゴリースペシャリストの岩見が、スーツのフィッティングのポイントを「縦寸・横寸」という視点で○×解説していきます。
お持ちのスーツ、“自分サイズ”できちんと着こなせていますか?
今、スーツの着こなしが見直されています。働き方が多様化しているからこそ、しかるべき時に着るスーツは格好良く着こなしたいもの。スーツをきちんと着る上でまず一番重要なのは、コーディネートよりも前に、サイズが自分の身体にちゃんと合っているかどうかです。いくら有名なブランドのスーツや高額なスーツを着ていても、ご自身の体型にあったシルエットのスーツでなければ、残念な気持ちになってしまいます。デザインもコーディネートも決まっているのに、サイズが合っていないだけでだらしない印象を与えてしまうのは本当にもったいないことです。
そこで今回は、自分でチェックできるサイズ合わせの基本を解説しますので、ぜひポイントを押さえてお持ちのスーツのサイズが今の体形に合っているか、また新しく購入する際にはサイズ選びの参考にしましょう。
その1.【ジャケット】の「縦寸」・「横寸」とは
ジャケットのフィッティングのポイントは、着丈と袖丈の「縦寸」、肩幅と胸囲とおなか周りの「横寸」になります。
着丈「縦寸」
着丈の長さは、前から見ると、親指の先から付け根の間に丈が入っている。後ろから見ると、お尻がちょうど隠れるくらいが目安になります。
袖丈「縦寸」
腕を下ろして前から見たときに、袖からシャツが1~1.5cmほどのぞいているのと、見た目のバランスが整います。
肩幅「横寸」
ジャケットが肩にしっかり乗っていて、襟が抜けていないかをチェックします。肩線が内側に入っていたり、肩線が外に落ちているのは×です。また、サイズが大きいと首回りが浮いて隙間ができることでだらしなく見えてしまいます。
胸囲(横寸)
襟(ラペル)が胸に吸い付いていて、浮いていない状態が○です。
おなか周り(横寸)
このジャケットのデザインは段返り3つボタンですが、まずは中1つ掛けしたときに、留めたボタンの左右から出る「引きジワ」を確認します。引っ張られているようなしわだとタイトすぎる、全くしわが出ていないとゆるいという事です。ジャケットのボタンを留めた状態で、ジャケットとシャツの間に握りこぶしがひとつ入るくらいのゆとりがあると身幅全体にきれいなシルエットが出ます。
スーツのフィッティングのとき、一番のポイントになるのが、ジャケットとスラックスの両方に関係してくる「おなか周り」です。お客さまからアテンドのご依頼があったときに、まずお尋ねするのがウエストのサイズで、お会いしたときにもおなか周りを見て、最適なフィットのスーツをご案内しています。
その2.【スラックス】の「縦寸」・「横寸」とは
スラックスのフィッティングのポイントは、股下とダブル幅の「縦寸」、ウエスト、ヒップ、渡り幅、裾幅の「横寸」になります。
股下(縦寸)
スーツの種類は様々ですが、正当なスーツスタイルでのスラックスの丈は、ワンクッションまたはハーフクッションをおすすめします。
ダブル幅「縦寸」
フォーマルにまとめたいならシングルですが、ビジネススタイルや外に出ることが多いスタイルの時は、スラックスの裾はダブルにしましょう。折り返し幅は4~4.5cmが基準。背が低い人は細めに、逆に背の高い人や体格の良い人は太めにすると裾が映えます。
ウエスト・ヒップ「横寸」
スーツの組下パンツや、セットアップのパンツの場合、まずジャケットと同じサイズを試着しますが、ポイントはヒップのフィッティングです。ウエストはある程度直しが効きますが、ヒップは直しが難しいので、お尻がきれいに収まって、シワのないサイズがベストです。
渡り幅「横寸」
渡り幅とは、スラックスの足の付け根(ヒップ下)の幅を指しますが、ヒップ下から太ももまでのフィット感になります。細いパンツが好きだから……と選んで、太ももがパツンパツンではシルエットは美しくありません。またその反対にブカブカのサイズを履いても同様です。
ビジネススーツは、ジャケットとスラックスの上下のバランスが大事で、サイズが合っていないと、見た目にだらしない、着こなしを分かっていないという印象が付いてしまったりと、大人の男性としては避けたいものです。また、「楽に着たい」と安易にオーバーサイズを選ぶと大失敗するので、スーツを購入するときは必ず店員のアドバイスを聞いて、”間違いのないサイズ着用”をすることが鉄則です。
ビジネススタイルのカジュアル化も進んでいますが、クラシックなスーツを着るならネクタイをしたタイドアップが基本で、カジュアルにポロシャツやTシャツなどとラフに合わせる場合はジャージー素材のような機能性素材を使ったアクティブスーツも良いでしょう。伊勢丹新宿店メンズ館では、目的に合わせたスーツとサイズ選びをご案内いたします。
この記事の解説者
Photo:Tatsuya Ozawa
Text:ISETAN MEN‘S net