アスリートたちは、その鍛え上げた肉体が仇となって「自由に服が選べない!」という悩みを抱えていることが多いもの。そんな彼らの悩みを解消するため、伊勢丹新宿店メンズ館では「スーパーメンズ」サイズを数多く展開することで、もっと自由にファッションを楽しめる場を提供している。
「着られる服がない」をイセタンメンズが解決!Vol.11──“氷上の格闘家”と呼ばれるアイスホッケー選手の服悩み
アスリートたちは、その鍛え上げた肉体が仇となって「自由に服が選べない!」という悩みを抱えていることが多いもの。そんな彼らの悩みを解消するため、伊勢丹新宿店メンズ館では「スーパーメンズ」サイズを数多く展開することで、もっと自由にファッションを楽しめる場を提供している。
今回、登場いただく横浜GRITSは、2019年に設立されたばかりのプロのアイスホッケーチームだ。”氷上の格闘技”の異名を持つ激しいスポーツだけに、選手たちは鍛え上げられた体格が持ち味。服選びの悩みは尽きないが、それにも増して悩みのタネは彼らは平日、会社員としての仕事を持ちながら、プロスポーツ選手として二足のわらじを履くデュアルキャリアの持ち主であるという点だ。仕事のときは堅実なスーツ、試合のときはユニフォーム、そして休日のカジュアルまで様々なスタイルを行き来するプロアイスホッケー選手に服の悩みを聞いてみた。
横浜の参戦でアジアのアイスホッケー界に新風を吹き込む
アメリカでは野球、バスケットボール、アメリカンフットボールと並ぶ4大スポーツと言われ、カナダでは国技として、アイスホッケーが定着していることはご存じのことだろう。ヨーロッパからも優秀な選手を獲得しているNHLでは、スター選手の年俸は10億円を超え、プロを目指すアイスマンにとって夢の舞台となっている。
日本でも全国にスケートリンクの数だけジュニアチームがあり、東京都アイスホッケー連盟には100を超えるチームが所属している。もっともレベルの高い関東大学アイスホッケーリーグは選手層も厚く、ディヴィジョンⅠからⅤまでカテゴライズされており、シーズンごと熾烈な戦いが繰り広げられているのである。
しかし国内のプロチームはわずか5チーム。プロへの道は現実的に狭き門だ。しかも、たとえ優秀な選手であっても、大学卒業後にプロという道を選ばず、ここで競技生命を終える人も少なくないという。プロ競技としてはマイナーであることが否めない現実があるという。
じつは日本に於けるプロアイスホッケーの歴史は意外に長く、1966年には野球、サッカーに次ぐ3番目の社会人スポーツリーグが誕生している。2004年にはアイスホッケーをテーマにしたTVドラマの影響もあり人気が再燃。このタイミングで韓国チームと合流しアジアリーグ大会を開催すると、翌年は中国、ロシアのチームも参加して、8チーム体制のアジアリーグが開催されている。ここ5シーズンほど海外勢に後塵を拝しているが、以前は毎年のように日本勢が優勝杯を保持していた。
昨年、このアジアリーグに新たなチームが加わった。それが横浜GRITSだ。
デュアルキャリアが示す新しいプロスポーツの未来
横浜GRITSは「デュアルキャリア」によるチームづくりを推進する新しいプロスポーツチームである。選手の多くはプロ契約ながら、もうひとつの”職業”をもっており、平日夜と週末の試合に参加することで競技と仕事の両立が図られているのだ。選手を支えるスタッフにもデュアルキャリア組が多く、広報・宣伝部門は、在京キー局のプロデューサーや広告代理店、映像関連企業などプロ中のプロが名を連ね、日本のアイスホッケー人気を横浜から火を点けるべく奮闘している。そのビジネスモデルは、新しい時代のプロスポーツチーム運営方式としても注目されている。
チームのキャプテンでありDFの要でもある菊池秀治さんも、外資系金融業とプロアイスホッケー選手とを両立するひとりだ。大学選手権で優勝を経験し、東北フリーブレイズに入団。その後、中国上海のチームで3シーズンプレーして帰国後も東北で戦ってきたが、30歳で引退を決断した。
「小学生でアイスホッケーと出会って以来、ずっと日本のアイスホッケーをメジャースポーツにしたいという夢があります。選手を引退しても、その気持は変わりません。一生かけてアイスホッケーの魅力を伝えていくためには言葉が必要です。そのためにセカンドキャリアは営業職に就こうと考えました」。
「有形のものより形のないものの魅力を伝えられるようになりたい。そうすればアイスホッケーの魅力も伝えられるはず」そう考えた菊池さんは、1年間競技と離れ現在の仕事に没頭。そんななか横浜グリッツと出会い「デュアルキャリア」として、仕事と競技を両立することを掲げるチーム設立に参加を決めた。昨シーズンから選手に復帰。今季はコロナでリーグ戦が思うように進行しないなか、週3日の練習とジム通いを欠かさず身体は準備万端にしている。上着を脱いだ体躯は、まるで格闘技選手のように逞しい胸板と、フットボールのフォワード陣のような太腿である。
そんな菊池さんの平日は、お堅い金融マン。夏場のノーネクタイは世間に準じながらも、秋から春までタイドアップはマストだという。Tシャツにジャケット、タートルネックにスーツといった今風のスタイルでは出社できない社風だそうだ。
「既製品は合わないのでスーツもシャツもオーダーです。オーダーなので、気軽に服を買い足すわけにもいかず、いつも同じネイビースーツに無地の白シャツになりがちですが、あまり派手な服装は好まないのでネクタイも無地のネイビータイが多く、どうしてもシンプルなコーディネートばかりになってしまいます」。
アイスホッケーの試合は、土日に行われる。日本リーグ所属チームは、北海道、青森、栃木に散在しているため、シーズン中の金曜日は移動日となる。その際はネイビースーツに、支給されているチームカラーのネクタイをして行くのが決まりだ。
「平日は仕事、週末は試合なので、あまりカジュアルに力を入れることはないのですが、やはりこちらもサイズ優先で選んでしまいがちです。身体に合うものなら、ブランドにこだわってなどいられないので…」。
そうは言うものの、インポートブランドのアウターにはこだわっている様子。この日のダウンジャケットも、プレミアムダウンの有名ブランドを着ている。ウィンタースポーツのプロ選手らしく、冬アウターはコーデイネートの主役として大切にしていることがわかる。
「本当はいろいろ冒険してみたいのですが、同じブランドで同じサイズでもアイテムによって入らない事があるんです。一度、ネット通販で失敗して凝りました(笑)。だから試着してから買いたいんですよね」。
いつもとは違う大人のドレスカジュアルに挑戦!
最初のコーディネートは〈BOSS/ボス〉のグレースーツスタイル。遠目に無地ながらチェック柄が入った、伊カルロバルベラの生地が使われており、滑らかな生地の高級感が伝わってくる。このブランドではもっとも細身の「エクストラスリムフィット」のカテゴリーだが、菊池さんの立派な体躯にもジャストフィットするスーパーサイズ。しっかりとウェストを絞った美しいシルエットを描いている。
「いつもネイビースーツばかりなので、グレースーツは新鮮です。柄が入っているのでマットなグレーじゃないところがいい感じですね。それにパンツが紐で絞れるタイプはこんなに履きやすいのかと初めて知りました。こんなパンツでもしっかりスーツなのは不思議な感じがします。もちろん、これで出社するのは全然OKです」
一見クラシックだがジャケットは3パッチポケット、パンツはドローコードでウェストを絞るタイプでカジュアルな着方もできる。そこでインナーをクルーネックセーターに変更してみた。カジュアルなセットアップ風の着こなし方に、菊池さんは少々はにかんでいる。
「こういう着方が流行っているのは知っていましたが、自分には縁がないと思っていました。スーツにセーターを着るなら、シャツを着てVネックを着るという固定観念があったので、いきなりクルーネックというのはあまり考えられなくて。これで会社には行かないですが、休日に妻と2人で食事に行くときなど、いいかもしれないですね」。
お次は〈 J.PRESS/J.プレス〉のコットンストレッチのセットアップ。Vゾーンはボタンダウンのシャツにニットタイという、少しカジュアルなテイストだ。ベージュのスーツ、カジュアルVゾーンとも、戸惑いを隠せない菊池さんだが、堂々たる佇まいだ。
「ベージュのスーツというのは、着たことがなかったのですが生地に伸縮性があるので、着心地が楽ですね。でも見慣れないのでムズ痒いというか、自分じゃない感じがします。このスタイルなら出社できると思います。でも、周りから、今日はどうした!?って言われそうです(笑)」
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Photograph:Tastuya Ozawa
Text:Yasuyuki Ikeda
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