【インタビュー】<lucien pellat-finet/ルシアン ペラフィネ>ラグジュアリーの価値観を変えたカシミヤニット
ラグジュアリーの対極にあったストリートファッションを融合することで、<lucien pellat-finet/ルシアン ペラフィネ>は、まったく新しい価値観を創造した先駆的ブランドだ。いまや多くのメゾンが積極的に展開している様々なアーティストやキャラクターとコラボレートも、どこよりも早く実現してきたハイブランドとして、いま改めて同ブランドを再評価したい。
「インターシャ」ラグジュアリーニットの代名詞
かつて一部の王侯貴族や上流階級が専有してきたカシミヤニットは、ラグジュアリーを体現するアイテムだった。ここにスカルやリーフ、ピースマークなどの大胆なモチーフをあしらった<ルシアン ペラフィネ>のカシミヤニットは、センセーショナルであると同時に自由な精神性を表すものとして、それまでのハイブランドに根ざしていたノブレス・オブリージュの呪縛を解き放ったといえる。「ピエール・カルダンのモデル、ヴォーグ オムのファッション・エディターなどの経歴を持つルシアン・ペラフィネ氏は自由な感性の持ち主です。それまでカシミヤのニットはデザイン性を一切排除して、ごくシンプルなニットが大半だったのですが、破いたり穴を開けたり、ストリートモチーフを柄使いにするといった大胆な発想でリモデルされました。意外性あるデザインを皮肉的に使うことで、彼はラグジュアリーの価値観を変えてしまったのです。」
そう話すのは伊勢丹新宿店 メンズ館2階 メンズクリエーターズ<ルシアン ペラフィネ>店長・薮内英教さん。薮内さんによれば、あのカシミヤニットの穴は、計算された編み立てによるもので、リーフは幸福と平和の象徴。スカルは公平を表し、死後は皆同じであるという人種差別の無い世界観を表しているのだという。それは1994年に初めてペラフィネが立ち上げた自身のブランドを「ラグジュアリーストリートウェア」と名付けたときから、変わること無く受け継がれてきたコレクションテーマでもある。
「カシミヤのクオリティへのこだわりはもちろんですが、メインコレクションはカシミヤニットの本場、スコットランドで編まれています。インターシャと呼ばれる高度な技法を用いて柄を編み立てるのですが、この技法はとても高度で手間のかかる編み方なのでできる技術者も減っていいて希少です。ジャカードと異なり柄裏に糸渡りが出ないので、ニットは薄手のまま柄が編み出せることと、色糸の本数がジャカード編み機より多く使えるので、凝った絵柄作りができます。それゆえインターシャといえばラグジュアリーニットの代名詞とされているのです。」
幅広い世代を魅了するハイクオリティ
パーツごとに編み立てたニットを、リンキングと呼ばれる手法でひと目ずつ組み合わせる技法も高度な手作業を要する技術だ。袖口や裾にリブを使わず編み止める技術からも、ニットの細部にまで目が行き届いていることが伺える。<ルシアン ペラフィネ>は作り込みにも最高の技術を駆使している。しかしやはり注目されるのは、そのデザインモチーフだろう。コレクションのカシミヤニットは多色使い、クリスタルなど、様々なデザインで毎シーズンリリースされている。いまでこそ、多くのラグジュアリーメゾンが多彩なアーティストやキャラクターとのコラボを繰り広げているが、幼少期からアートに親しんでいたルシアン ペラフィネは、90年代すでにアーティストとのコラボを模索していたようだ。
仏のファッション誌『CRASH』のインタビュー記事によれば、ペラフィネの最初のコラボは2003年の村上隆のコレクションであったと本人が語っている。その後はキースヘリング、バスキア、アニメ・コミックのシンプソンズともコラボを果たした。日本人では田名網敬一ともコラボを果たした。さらには日本のキャラクターデザインにも造詣が深く、ハローキティやポケモンを用いたデザインもラインナップされたことがある。
今シーズンは「キューバ」をテーマにしたコレクションを作り上げた。彼の地を第二の故郷とした作家アーネスト・ヘミングウェイに捧ぐモチーフもリリースされている。
「ユニークなシーズンテーマを掲げながらも、ベーシックなアイテムが揃っているのが<ルシアン ペラフィネ>の特徴です。パターンはファーストシーズンから20年以上、ほとんど変わっていないので流行に左右されることがありません。ニットの柄は挑戦的ですが、ミックスコーディネートしやすいのも着やすいポイントだと思います。だからでしょうか、ファンにはストリートスタイルの20代から、日頃よりハイブランドをお召しになられている60代、70代の方までと幅広く、年齢を問わず愛用できるのだと思います。」
貴重なアーカイブが展示される特別なプロモーション
1月20日(水)から2月2日(火)まで、伊勢丹新宿店 メンズ館2階 メンズクリエーターズでは、これまで<ルシアン ペラフィネ>が手掛けてきた貴重なアーカイブを展示するプロモーションが開催される。今シーズンの最新作が並ぶなか、あのハローキティコラボ作品も展示される。そこでとくに注目のモデルについて、薮内さんにご紹介いただいた。「カラークリスタルがあしらわれたリボンのアイパッチは、ハローキティのリボンをモチーフにしたもの。サンリオ公認のハローキティコラボとして、2019年に登場したものです。ボディはサイドシームのない編み方で縫い代の肌あたりがなく、カットソー風のシルエットでさらりと一枚で着ることができます。」
「ここからは新作をご紹介しましょう。」
「目の醒めるようなイエローボディに今季のテーマ、キューバを題材にしています、Viva Cubaのロゴは、よく見ると、まるでCoca Colaのロゴをパロディにしたみたいですよね。社会主義国でアメリカと国交のないキューバのロゴを、資本主義の象徴のようなデザインにしたユニークでシニカルなデザインとなっているんです。」
「ライオンはルシアン ペラフィネの家紋に使われているモチーフです。これまでも多くのコレクションに採用されてきました。ベースは無染色のブラウンカシミヤ。同系色の糸で楽しそうにサルサダンスを踊る姿の編み柄は、ノーブル&コミカルという対照的なモチーフを見事に融合したものです。」
「ネイビーのカシミヤニットには何色ものクリスタルを使ってお馴染みのスカルが象られています。ブルーのグラデーションはカリブ海の色をイメージしたもので、キューバを愛したヘミングウェイに捧げる一枚です。」
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Text:Yasuyuki Ikeda
Photograph:Yuichi Tajima
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