全国から集った靴磨き職人たちを一挙紹介。|ISETAN靴博2020
昨年の靴博で盛況だった全国の靴磨き職人たちが集うシューシャインブースが今年も開催。それぞれの地で腕を奮う靴磨き職人たちの横顔と魅力をダイジェストで紹介。
92 -NINETY TWO-
小島由枝シューカラーリングも得意。
広島を拠点に活動する92-NINETYTWO- のオーナー、安部春輝さんとの出会いが靴磨き職人を志すきっかけ。お気に入りのサンダルの修理に訪れた小島さんは目をキラキラさせながら靴磨きのを語る安部さんと人生ではじめて目にするその技の美しさにノックアウトされたとか。カラーレーションの技術には自信あり。靴磨き日本選手権大会2019 のシューカラーリング・エキシビションマッチに出場、審査員を唸らせた。AVEL社公認SAPHIR シューケア アドバイザー。中区本通にある老舗ファッションストア、BEPPIN-TEN 本店に9月3日にオープンする新店では店長を務める。最近ハマっているのは日本酒飲み比べ。
FANS
岡嶋翔太靴や革をいたわる、シューケアを軸とした磨き。
シューケア用品メーカー『R&D』に2016年より在籍。現在は銀座三越5階のシューリペア・シューシャイン「GINZAジェントルマンズラウンジ」に勤務している。2019 年の靴磨き日本選手権では第2位に輝いたが、まだ靴磨きが現在のような広がりを見せる前から、靴の保湿や水洗いなど、革をいたわり、靴を長く愛用するためのケアをさまざま提案してきた。現在もまず靴の汚れや古いワックスなどを十分落として、クリームで保湿する革のコンディションを保つケアを軸とした靴磨きを行っている。最近は靴の色を染めかえる「リカラー」を同社の三村ミチオ氏とともに研究しているという。
THE WAY THINGS GO
石見 豪クオリティを追求した磨きに定評。
2018 年に開催された靴磨き日本選手権大会第1 回大会優勝者。ミュージシャンの夢を諦め、靴磨きの道に進んだ石見さんは日本全国の名のある職人のもとに通って腕を磨いた。起業後は3 年で2 万足の靴にクリームを塗り込んだ。その徹底したクオリティコントロールには定評があるが、これを裏付けるように第2回、第3回の大会もTWTG のスタッフが優勝を飾った。昨年1 月には念願の東京店をオープンし、その名は全国区に。店で扱うオリジナルのブラシ、KINKOU ブラシは入荷するなり売り切れる人気商品。今回の靴博では、特別に数量限定での販
売が実現。最近ハマっているのは、愛猫のサミュエル。作家のサミュエル・ベケットに似ているからその名をつけたそう。
Glayage KYOTO
樺澤幹人装いと磨きの相関関係。
上司が履いていたピカピカのオールデンに魅せられ、靴磨きの魅力に開眼。およそ10 年勤めたアパレル会社を退社して2018 年に独立。満を持して出場した靴磨き日本選手権大会2020 でいきなり3位に食い込んだ。ファッション業界出身者らしく、2019 年にオープンした店ではパターンオーダーのシャツやジュエリーも扱う。サロンのように京都のファッションカルチャーの発信拠点になれたらという思いを胸に日々靴を磨いている。最近ハマっているのはサブスクリプションサービスで聴きまくっている懐メロ。コロナ禍の自粛期間にBGM がわりにラジオを聴くようになってその面白さにもあらためてハマっている。
GAKU PLUS TOKYO
河村真菜イタリアの先人に憧れて靴磨きに。
『イタリア人の働き方』(光文社新書刊)で紹介されていたローマの靴磨き職人、ロザリーナ・ダッラーゴさんの生き様に感銘を受け、OL から大胆に舵を切った。修業先に選んだのは日本屈指のシューシャイナー、佐藤我久さんがオーナーを務める地元名古屋のGAKUPLUS。半年通い続けて晴れて弟子入りを認められた。3 年のキャリアを積んだのち、2019 年、靴磨きとオーダーシューズの店、GAKUPLUS TOKYOのオーナーに。お客さま一人ひとりにあったまるで誂えたかのような施術が身上。現在はオンラインを中心に靴磨きを行うイベントにも積極的に参加している。最近ハマっているのはカレー屋さん巡り。
GMT FACTORY
冨樫輝好常に顧客と寄り添う靴磨きを心がける。
2011 年にオープンした、靴や服の修理を行うアトリエ&ショップ『GMT FACTORY』に在籍。長年靴業界で働き、靴の販売をしながらサービスとしてシューケアを行ってきたが、『GMT FACTORY』のオープンに伴って本格的に靴磨きを始めたという。現在は同店で預かりを中心とした靴磨きを行う一方で、コメの油脂を使ったシューケアローション『SHOESTRIPES ライスローション』などシューケア用品のプロデュースも行っている。今回の靴博では通常のシューケアやシューポリッシュに除菌・殺菌をする工程を取り入れたサービスを提供する予定。最近はボルダリングと料理にハマっているとのこと。
Brift H
新井田 隆カリスマショップの暖簾を支える、技巧派職人。
昨今の靴磨き職人ムーブメントの草分け的存在である長谷川裕也さんが率いる東京・青山のシューラウンジ『Brift (ブリフトアッシュ)』に、シューズメーカー勤務を経て2012 年より在籍。毎年2 月に開催される靴磨き日本選手権大会には過去2 度出場し、いずれもファイナリストに選ばれている。靴磨き職人としての活動の傍ら、今年7月には青山店にて日本のビスポークシューズブランド『when』のパターンオーダー会を企画するなど、『ブリフトアッシュ』の多岐にわたる活動の担い手としても活躍している。趣味は音楽で、DJ をこなすこともあるという。音楽の話をしだすと止まらなくなるとか。
Naoki Terashima
寺島直希京都の路上から始まった靴磨き。
甲子園を目指す高校球児だったが、グローブを通して知ったケアの魅力に取り憑かれ、大学在学中から地元京都の路上で靴磨きを始める。努力の甲斐あってその店は行列ができるほどに。1 日に磨いたハイスコアは37 足。顧客は数百人にのぼった。大学卒業を機に靴磨き専門店に就職、靴磨き日本選手権大会2019 で優勝を飾った。同年10 月、独立。みずからの技術を見直すべく、渡欧。イギリスやフランス、イタリアのシューシャイナーのもとを訪れた。現在はSNS を通した商売だが、年内中に自身の店をオープンすべく奔走中。ハマっているのはいまも昔も靴と革。寝ても覚めても靴と革のことばかり考えているとか。
靴磨屋T.A.N.S.
稲田祐一アメリカンカルチャーを感じる靴磨き。
アメリカンカルチャーに魅せられ、ハーレー乗りになった稲田さんは次第にレザーケアに興味をもつようになり、独学で修業し2016 年靴磨き職人として独立開業する。2019 年4 月に愛知県江南市のSunFace Street、同年11 月に豊田市のCOMO aquare に出店。豊田の店では元吉本興業のお笑い芸人、本田大士さんが接客に当たっている。見どころはお客さまのTPO やニーズに即したきめ細かな施術にあり。T.A.N.S.は“Take aNew Step” から。ハマっているのは、もはや人生の一部のようになっているネイティブアメリカンの世界。本場の空気を肌で感じるべく単身アリゾナ州やニューメキシコ州、メキシコに足を運んだことも。
Freestyle
なかじまなかじ夜の足元を輝かせる、を標榜して。
活動の拠点は新宿歌舞伎町。キャッチコピーは“ 黒服の靴を磨くシューシャイナー” 。「夜の仕事をしているときに、知人の靴を磨いたら喜ばれた。あらためて街行く人々をみると、靴が汚くて、しのびなかった」というのがこの世界に足を踏み入れた理由だ。靴磨き専門店や名のある靴磨き職人のもとでキャリアを積み、2018 年に起業する。靴の造形美を生かした立体的な艶の表現方法には定評がある。靴磨き日本選手権大会2019 でベスト12、同2020 で準優勝に。現在はヨウヘイ フクダのシューシャインも担当している。最近ハマっているのは、歌舞伎町で知り合ったその町でたくましく生きる猫に会いにいくこと。
SHOEBOYS
黒澤聖宏ピュアな少年の心で、靴と向き合う場所。
先の「家でできるシューケア」ページに登場した靴磨き芸人・奥野奏さんが今年7 月にオープンした革靴の販売とシューケアを行うショップ『SHOEBOYS』。その名が示す通り、ピュアな少年の心をもって靴を愛好できるよう、あえて敷居や格式を感じさせないカジュアルな店づくりが行われている。さらに扱われている靴も、革靴にそれほど親しんでこなかった人でも手に取りやすいセレクトを心がけているという。店長の黒澤聖宏さんは独学で靴磨きをスタートしたのち、シューズメーカーにて1年程度靴の仕上げ工程を担当して、『SHOEBOYS』に加わった。アメリカンヴィンテージシューズを愛好し、そのケアにも一家言ある。
Y’s Shoeshine
杉村祐太TOM’S BAR直伝のオリジナルカクテルも人気。
靴磨き日本選手権大会第1 回大会で3 位入賞を果たし、翌2019 年のワールド・チャンピオンシップ・イン・シューシャイニングで優勝を飾った静岡を代表する靴磨き職人。いったんは建築業界の道に進むも、趣味が高じて玄人はだしの腕前をもつにいたった杉村さんは30歳を目前に会社を辞めて靴磨き職人の世界へ飛び込んだ。
世界を唸らせた杉村さんのテクニックの見どころは履き手が引き立つ革の肌理を生かした透明感のある輝きにある。ハマっているのは20 代前半から嗜む洋酒と葉巻。地元のバー、TOM'SBAR を師と仰いで夜な夜な靴磨き以上の情熱を注いでいる。Yʼs Shoeshineにも洋酒、葉巻を取り揃える。
磨き座 継 -HERITAGE-
西岡ぺこ革の産地ならではの深い知識。
料理人としてその道を極めんと東京や大阪で10 年研鑽を積んだが、ワケあって2017 年に帰郷。ほどなく靴磨きに開眼、いまは亡き地方百貨店ヤマトヤシキなどで腕を磨いた。母が靴屋、祖母がタナリーという血筋のおかげか、全国の猛者が集まる靴磨き日本選手権大会2020 でセミファイナリストに。
土地柄(姫路は日本を代表する製革業の産地だ)もあってタナリーとの親交が深く、製造レベルでの皮革の知識があるのが強み。モットーは料理人のころから変わらず、ひとつひとつの工程をよりていねいに。最近ハマっているのはスパイスカレー。スパイスの奥深さに魅了されているそう。
BRIFT STAND
濱岡洋より多くの人たちに靴磨きを。
大手コンサルティング会社に入社、食品販売支援に従事したのち、2018 年6 月にBRIFT STAND をローンチ。客として足を運んだBrift H の技に魅せられ業務提携を結び、同店にて腕を磨いている。
セカンドラインの位置付けとなるBRIFT STAND はより多くの人に靴磨きの魅力を知らしめることに主眼を置き、今後は駅ナカへの出店を推し進めるとともに、“ 移動式靴磨き” を謳った神出鬼没の展開、“ 訪問磨き” も計画中。メニューはクイック(10 分/ 1000 円)、レギュラー(20 分/ 2000 円)のふたつ。汚れが気になったらふらりと立ち寄れる気軽さでビジネスマンに支持されている。コロナ禍で自粛中のサウナが恋しい毎日。