2019.11.04 update

【特集】フランスの老舗靴ブランド<PARABOOT/パラブーツ>の名作&人気シューズ5選

休日に履きたくなるのは、「スニーカー以上、ドレスシューズ未満」の見た目と快適な履き心地を約束してくれる間違いのない足元。そんな時に選ばれるのが、創業100年を越えるフランスの老舗シューズブランド<PARABOOT/パラブーツ>だ。高級紳士靴なのに本格的な登山靴のように頑丈で普遍的なデザインは、いつの時代に履いても抜群にお洒落で、世界に“名靴”は数あれど、こんな靴は他になかなか見つからないだろう。


今回は、時を超えて愛される<パラブーツ>の名作&人気5モデルを厳選。同ブランドの魅力とともに各モデルを解説する。


フランス生まれを随所に感じさせるエスプリと考え抜かれた実用性


質実剛健なシューズを数多く世に送り出している<パラブーツ>は、日本でも長らく愛されている名靴「シャンボード」を筆頭に、ノルヴェステッチ(すくい縫いの一種)という“ひと手間”を加えることで、グッドイヤーウェルト製法以上の堅牢性を可能にした「ノルヴェイジャンウェルト製法」を採用。元来は山岳靴用の伝統的底付け方法だが、それを街履き靴にまで広めたのが、この<パラブーツ>だ。

 
 

また同ブランドは、世界でも数少ない天然ラテックスを使ったラバーソールの自社生産を続けている。独自のレシピのもと、生ラテックスを型に入れ、加圧熱で焼き上げることで、反発性に富み、堅牢で摩耗しにくい特性を持つラバーソールが誕生する。しかも、タイプごとにその焼き方などを微妙に変えることで、使用目的に最適な硬度に調整されているのだ。

そしてアッパーには、「味が出るのに雨に強い」といわれる、高級カーフにオイルアップを施して仕上げるリス(lisse=フランス語で「スム-ス」の意味)・レザーを使用。雨などの水気にすこぶる強くかつ堅牢で、履き込むほどにしなやかになり、色が深まるエイジングレザーでもある。ちなみに、新品時に表面が白みを帯びていることがあるのは、それだけ革の繊維内にオイルが深く浸透している証だ。

時を超えて愛される<パラブーツ>の名作&人気の5モデル


1. CHAMBORD(シャンボード)

 


質実剛健なデザインながら、着こなしにしなやかに対応する魅力


ブランドのアイコンであり大定番の「CHAMBORD(シャンボード)」は1987年に誕生。ぽってりと丸みのあるフォルムのUチップは、フランス靴を代表するデザインで、“拝みモカ”や“つまみモカ”と呼ばれる、モカ部分の革のつまんで縫う製法を採用している。革靴でもカジュアルなデザインなので、ジーンズからスラックススタイルまで幅広く使える汎用性の高いデザインとしても人気だ。


 
 

ソールには、雨やコンディションの悪い路面など様々なシチュエーションに対応する完全自社生産の100%天然ラテックスからできる「PARATEX」を採用。「PARATEX」は、ソール本体の厚みが1cmと厚く、ソールの裏側には空気を閉じ込めるフィンがいくつも付いていることで、グリップ力及びクッション性が抜群だ。

アッパーには、通常の革に比べるとワックスの含有率が高く、耐久性、耐水性に優れ、履き馴染みが良い、独特な光沢感のあるLisse Leather(リス・レザー)を使用。150以上もの工程を経て完成する大変手間のかかるノルヴェイジャンウェルト製法仕上げにより、独特な外観と高いファッション性を生み出している。


2. AVIGNON(アヴィニョン)



すっきりしたトゥラインで、上品な印象に仕上げてくれるUチップ

ジャケットを着る文化の強いフランスで長年人気の「AVIGNON(アヴィニョン)」は、ヴァンプの革をアッパー側面に乗せて縫う、いわゆる“乗せモカ”で作られる最もベーシックなUチップシューズ。Uチップシューズは一般的にカジュアルシューズに部類されるが、アヴィニョンはノーズが長くすっきりしているデザインなので、ジャケットスタイルやスーツとも好相性だ。


 
 

パラシュートブーツを原型とする履き口が切り返してある不思議なデザインが特徴的なアヴィニョンは、シャンボード同様、ノルヴェイジャンウェルト製法を採用。ウェルトと呼ばれる帯状の革を使い、アッパーとソールを2重のステッチで縫いつけて揺ぎない頑強さを作り出している。

ソールには完全自社生産の100%天然ラテックスからできる「GRIFF」を採用。縦横に配置されたギザギザのパターンがグリップ力を高め、濡れた路面ではその効果を発揮する。また、革には定評あるリス・レザーを採用し、履き馴染みの良さが味わえる。


3. MICHAEL(ミカエル)

 

オイルドレザー&ノルヴェイジャンという最高コンビのチロリアン

創業者レミー・リシャール・ポンヴェールの孫で、現社長のミッシェル・リチャードの誕生を祝い、その名を冠したモデルとして1945年に誕生した「MICHAEL(ミカエル)」。<パラブーツ>の名が世界へ広まった代表的モデルであり、チロリアンシューズの名作として現在も高い人気を誇っている。


本来のチロリアンシューズは山岳、民族的要素の強いハードスペックなものが主流だが、ミカエルは原型となったMORZINEをモディファイドしたモデルで、デイリーな洋服にも合わせやすくなったことにより、世界中へ浸透していった。肉厚で油分を多く含んだ“オイルドレザー”は防水性に強く、使い込むことで足に馴染んでいく特徴があり、山の過酷な環境の中で“足を保護する”役目を果たす。

 
 

また、山岳ブーツには欠かせないノルヴェイジャンウェルト製法は、現存する靴の製法のなかでもトップクラスの堅牢度を誇り、よほどのことがない限り靴が壊れることがなく一生モノとして重宝する。「オイルドレザーとノルヴェイジャン」という特徴は、ミカエルのアイデンティティーだ。


4. REIMS (ランス)




足元に圧倒的なボリューム感と迫力を演出するコインローファー

「REIMS (ランス)」は、1986年にデビューした定番チロリアンシューズ「ミカエル」のローファーモデル。当時イタリアで人気を博したスーツスタイルが、厚底のラバーソールシューズをコーディネートしていたことから、イタリア顧客の強い要望で誕生した。ランスはミカエルのような太いモカシンで縫われていることから、甲の付け根になる部分(サドル革の固定部分)を強靭に縫い上げるため、すべてが手作業によって仕上げられている。

 

ぶ厚いソールを装着しているので、ローファーでもカカトが脱やすくならないように口入部分を深く、そして独特な角度で仕上げていて、これほどまでにヘビーなテイストを持ったローファーは世界中探しても他にはなく、アメリカンテイストでありながらフランスの粋を感じさせる一品で世界中に広く認知されている。

ファッションの変化とともに1995年には生産が中止され、わずか10年間の生産期間だったが、「ランス復活」の声に応えて、ラウンドトゥが注目された2009年に再リリースされた。


5. WILLIAM(ウィリアム) 

 

数奇な運命を辿りながら熱狂的なファンを持つフレンチデザインの雄

世界中のメゾンブランドを手がける<パラブーツ>は、フランスを代表するラグジュアリーブランドの靴をOEM生産してきた歴史を持つ。「WILLIAM(ウィリアム)」は、ダブルモンクストラップという乗馬ブーツからインスピレーションを得て作られたフレンチデザインの代表的なモデルだ。

 
 

<ジョンロブ>がカジュアルラインである“CORTAGE COLLECTION”をスタートした際、<パラブーツ>がコレクションの全容を手がけて採用されたウィリアムは、シリーズの販売終了とともに惜しまれつつ生産中止となったが、顧客からの(特に日本からの)強い要望により、2001年に「パラブーツ青山店」の開店記念アイテムで、オリジナルコレクションとして復活。当時のウィリアムは特別なグレインレザー(型押しレザー)で作られていたため、時代とともに革の入手が困難になり「品質維持ができなくなった」ことを理由に2003年には再び生産終了となった物語を有する。

2010年に再び復活したウィリアムは、昔から変わらぬ型紙デザインとソールでありながら、時代と共にわずかなエッセンスを加えることで現代のファッションと共鳴。まさにフランス製品の理念を貫くベーシックシューズであることを証明している。

Photo&Text:ISETAN MEN‘S net

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