時代やトレンドを超え、一生涯続いていく本質的な価値。
では“ファブリッククリエイター”を務めるポラト氏は、<C.P.カンパニー>のなかでどのような役割を担っているのだろうか。
「私の仕事は、イタリアでも非常に珍しいものです。そして実際はファブリックのみならず、会社全体の業績に対して責任を負う立場でもあります。スタイリストやデザイナーらとコミュニケーションをとりながら、さまざまな研究開発からデザイン、素材選定、プロトタイプ製作、生産まで、あらゆるプロセスを管理しているんです。他社のデザインは特定の1人のデザイナーが生み出すことも多いですが、我々はポール・ハーヴェイやアレッサンドロ・プンジェッティなど、才能豊かな複数のデザイナーを起用しています。それぞれが独自のアプローチを追求してもらい、最終的に<C.P.カンパニー>としてのひとつの方向性に収斂させる。それが私の最大の役目です」
ファブリッククリエイターが、クリエイティーションだけでなくマネージメントのディレクションをも行う。<C.P.カンパニー>にとって、いかにファブリックが大切な要素であるかが伺えるが、なぜそこまでファブリックにこだわるのかについても訊いてみた。
「マッシモ・オスティの時代から変わらない、<C.P.カンパニー>の哲学──それは、我々の研究開発の中心にあるのがマテリアルであり、カラーリングとファンクション、そしてファブリックこそが、50年に渡って受け継がれるDNA、そしてアイデンティティであるということです。ファブリックは、シーズンごとに異なるデザインアプローチや提案を実現するために、常に進化していく必要があります。だからこそ、既存のものを使い回すのではなく、自社で理想的なファブリックを開発することにこだわっているのです」
<C.P.カンパニー>は毎シーズンのように、10〜15種類のオリジナルファブリックをリリースしているのだという。もちろんその裏で、何十倍もの試作が行わているのは言うまでもないだろう。これらすべてがサプライヤーとともに開発したエクスクルーシブなものであり、「クォーツ」「エクリプス」といったネーミングが施されている点もユニークだ。
「使われる樹脂や染料、トリートメントにまでこだわることで、他のブランドとは完全に異なる、スペシャルなものができあがるのです。自分たち自身で作り上げるということは、ブランドを超える概念、我々のDNAそのものだといえます。ファブリックに品番ではなく名前をつけているのは、それが単なる“ジャケット”ではなく、“<C.P.カンパニー>のジャケット”であることを愉しんでいただきたいという思いからなんです」
そんな<C.P.カンパニー>の真骨頂ともいえる新サービスが、この秋スタートした「ビスポーク・カラー」プロジェクトだ。なんと1500色以上のパントーン(色見本)から、ユーザーが自分好みの1色を選んでオーダーすることが可能になるという。
「同時に、世界各国の取り扱いショップ独自の限定色というのも展開されます。このプロジェクトは、エンドユーザー(消費者)やホールセール(取り扱い店舗)と、<C.P.カンパニー>との密接なリレーションシップを構築するために企画されたもの。特に目の肥えたイセタンメンズのお客さまであれば、色を見て、デザインを確かめ、着心地を感じていただくことで、<C.P.カンパニー>の特別な魅力をすぐに理解していただけると思います。何年も、世代を超えて着ていただけるデザイン性とクオリティの高さは、私の服を息子や娘が『貸してくれ』といってくることからもおわかりいただけるはず(笑)。一生涯続いていく価値──価値に見合った適正なプライスで製品を提供する、「バリュー・フォー・マニー」というモットーも、我々が大切にしている理念のひとつなのです」
Photo:Tatsuya Ozawa
Text:Junya Hasegawa(america)
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