完コピ、ルールなど、窮屈な感じはイヤ


山下 決して否定はしませんが、自分の前の世代のアイビーファッションなど、日本独特のファッションにはまったく魅力を感じませんでした。
洋服なのに、こう着なければならないとか定義づけがイヤだった。杓子定規にはめようとするファッションは、アメリカの真似にもなっていない。だから僕はリプロダクション的なことは絶対やらないんです。
もちろん完コピはできますが、今まで自分が見たものや着たものを全部吸収して、自分なりのアレンジがどこにできるかが服作りの面白さなので、完コピは今後もやりません。

たとえば今日僕が着ているアブサンシャツも、着丈の長さやウエストのシェイプなどは、アメリカの開襟シャツの定義ではありません。ウエストを絞って、着丈を長くするなど、<モヒート>ならではの解釈を加えています。リッツジャケットやアルズコートなどもそういう考えから作っています。

自分はたくさんモノを見てきていますが、僕たち世代のモノ作りの役割は、「どれだけのモノを見てきた上で、変化球を作ることができるか」なので、これからの自分がどういう服を作っていくのか、自分自身で興味があります。


服を着ることはもちろん、服を買うのは楽しいこと


山下 今の若い人たちはモノは良く知っていますが、洋服を着て、靴を履いて、時計をしてから、「その先の話」を出来る人が僕らの若い頃より少ない気がします。そこが僕たちの時とは違う。本来は、好きな服を着たら「あそこに遊びに行こう」とか「誰かを誘って行こう」とか「女のコとデートしよう」というその先がある。楽しいものってそういうことのはず。

<モヒート>の服も、「着たあと」の話をしたいんです。生地やステッチなどスペックについてはバイヤーやスタイリストに完璧に伝えるので、作り手の自分は、もっと手前で大きいことを言っていたい。

柴田 いやいや、山下さんは特に最後のだけなんじゃないですか(笑)?「着たあと」は「何にも着てない」なんて(笑)


山下 サイト「Amvai」で連載をスタートするとき、読者の誰かが一人でも感化されて、バイヤーなど洋服の道へ進んでくれるといいなと思って始めました。
僕らが『ポパイ』と出合ったように、今はそういうメディアがないので、ぜひ洋服好きになってほしいと思います。

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■Amver <MOJITO>デザイナー 山下裕文
1968年熊本生まれ。東京の服飾専門学校を卒業後、スタイリストアシスタントを経て、原宿の伝説的ショップ「PROPELLER(プロペラ)」にアルバイトとして入社。その後、米国の西海岸を代表するショップの日本初の展開時には、ジェネラルマネージャーとして勤務。2005年に独立し英国の老舗ブランドやストリートからアウトドアブランドなどの契約業務を手掛ける。2010年に自身のブランド<MOJITO/モヒート> http://mojito.tokyoをスタートさせる。

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Text:ISETAN MEN'S net
Photo:Amvai(https://amvai.com/

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