【インタビュー 後編】<イシカワ>洋服ブラシ 二代目 石川賢吾|「次はお前の時代」と託された二代目でさらに進化する(1/2)
お父さんが作るブラシのどんなところがすごいと思いますかと訊ねると、「何が違うのかを考えたら、全然違います。本当にやっていることがすごいんですね。より使いやすく、より長く使えるようにお客さまのことを考えて作っている。あんなに口が悪いですが(笑)、優しい人で、それがブラシによく出ている。ブラシ作りを知ってから尊敬する人になりましたね」と言います。
世界が認める洋服ブラシを“発明”した和男さん(前編)と合わせてご覧ください。
父の仕事と、自分の状況がぴったり合って進んだ道
父の仕事を手伝い始めたのは25歳の頃です。それまでは建築業に携わっていましたが、建築不況で仕事が減った時期があって、そんな時に父から「うちのブラシ、いけるぞ!」と言われました。父の代で終わらせるのはもったいないし、父からも「おまえやってみないか」と言われ、ちょうどタイミングが合いました。
もともと小さい頃から細かい作業をするのが好きで、父の仕事に興味もありましたが、実際やってみて、正直、すごいと思いました。父は、「一生モノとは、一生フォローできるもの」と口癖のように言っていますが、父を継いで、今お客さまが使っているブラシの面倒を自分がみるのもいいなと。
実際、うちのブラシを十数年使ったお客さまが、「ブラシの中の綿ぼこりがすごい」と連絡があり、お預かりした時のこと。毛の中を掃除して、傷を直し、塗装し直してお渡ししましたが、毛はまったく傷んでないし、使い古した歯ブラシのように広がってもいませんでした。あれを見たときは、父の仕事を誇りに思いましたね。
洋服ブラシとクリーニングの役割の違いとは
正直に言いますが、この仕事を継ぐまで、洋服にブラシをかけたことがありませんでした。
そんな自分なので、日本人が洋服ブラシを意識していないこともわかります。お客さまからクリーニングについての質問が多いので、クリーニング屋に仕事を見に行ったこともありますが、日常のケアにはブラッシングを、特殊な汚れがついた場合はクリーニング、というのが洋服にとって最も適していると思います。
実演会などでお客さまの声を直に聞くことも多いのですが、面白いのは「靴ブラシ」の話。お客さまによって使い方が違います。汚れ落とすのに使うという人、最後の仕上げでブラシを使うという人、女性の化粧用パフで仕上げるという人がいて、うちのブラシの「ビキューナ用の羊毛」の話をしたら、「それ欲しい!」と言われ、作ったことがあります。そういうお客さまの率直な話を聞くのはヒントにもなりますね。
ただ、この仕事をしていて、他の用途のブラシを作ってみようとは思わないですね。自分は「洋服ブラシをどう進化させるか」をいろいろ研究して試しています。
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