【インタビュー】<saki et show/サキ エ ショウ>石田早姫&石田翔|受け継がれる"ル・メートル"のDNA(1/2)
イベント情報<saki et show>帽子プロモーション
□11月21日(水)~27日(火)□メンズ館1階=シーズン雑貨・装身具
<saki et show/サキ エ ショウ>は、 石田早姫と石田翔のユニットで手がける帽子ブランド。姉弟デザイナーとしてこの春デビューしたばかりだ。
2人の祖父は、日本の帽子デザイナーの草分け的存在であり、伝説の「モディスト(*帽子デザイナーの意)」とも「ル・メートル(*巨匠の意)」とも呼ばれた平田暁夫氏である。1960年代にパリに学び、高級注文服・オートクチュールの帽子版、オートモードの第一人者。皇室の帽子を始め、海外の王侯貴族、<コム デ ギャルソン>や<ヨウジヤマモト>、<イッセイミヤケ>など錚々たるブランドで帽子のデザインを手がけてきた。
左から<AkikoHirata><H.at>デザイナー 石田欧子さん、<saki et show>デザイナー 石田早姫さん、石田翔さん
2019年春夏コレクションの展示会場にて話を伺った。
2011年に東京・青山のスパイラルガーデンで開催された「ヒラタ ノ ボウシ」展は圧巻だった。平田氏の作品を、佐藤オオキ氏率いるnendoが会場を設営展示。当初2週間を予定していた会期が1週間延長されたことが、その盛況の程を伺わせる。展覧会から3年後、氏は惜しまれつつこの世を去ったのだが、盛大に行われたお別れの会の席で孫娘の早姫さんは、その後の人生の舵を大きく切るほどに心を揺さぶられた。
「子供の頃からあまり帽子に興味がなく、祖父のこともつねに仕事をしているひとというイメージばかり。短大卒業後はアクセサリーメーカーに就職しました。でも、お別れの会で祖父の手がけた帽子を身に付けた人々が、とても素敵に輝いて見えたことに驚き、同時に偉大な祖父への憧憬と誇りを感じました。その時初めて、私の中でこの道を生きたいと強く思えたのです」。
母の石田欧子さんは平田暁夫氏の一人娘。父が立ち上げたオートモード平田で自身のブランドも手がける帽子デザイナーである。早姫さんが母に素直な気持ちを打ち明け、家業に転職し帽子デザイナーの道を生きることを決心したのは例の会から間もない頃のこと。昨年、柚木沙弥郎氏の絵本『つきよのおんがくかい』(福音館書店)をイメージした帽子を自身の名前で発表している。
弟の翔さんは「姉とは真逆の性格なんです」と笑う。「おじいちゃんは僕にとても優しくて、デザイナーというより、普通のおじいちゃんというイメージ」という点も、早姫さんとは真逆。幼い頃から絵を書いたり工作を手がけるなど、手先とその感性に才能を発揮してきた。
記憶を辿れば小学校に上がるか上がらないかの頃、まるでナスカの地上絵のように巨大な絵を自宅兼オフィスの中庭に描いたことがある。スタッフたちの間では「誰がこの絵を?」と騒ぎになったらしい。しかし当の翔さん本人は、ざわつく大人たちに怒られると思い込み、部屋に閉じこもって息を潜めていたという。
学生と家業のインターンを並行しながら、この春、姉とともにローンチした<サキ エ ショウ>は秋のコレクションを拡大。「2人でユニセックス」と口を揃えるが、姉の早姫さんのアイデアがメンズライクだったり、弟の翔さんのデザインワークがフェミニンだったり。
ショールームで見せてもらった作品は、パイロットキャップ風のヘルメット帽が機能的な防寒帽は早姫さんが手がけ、優雅に波打つエッジに手作業でステッチを施したブリムの広いフェルトハットは翔さんのものだった。
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