【インタビュー】機械式腕時計と江戸切子の融合――時計師・牧原大造が目指す、見たことのない時計(1/2)
イベント情報<DAIZOH MAKIHARA/ダイゾーマキハラ>ウオッチフェア
□9月19日(水)~25日(火)□本館4階=ジュエリー&ウォッチ
牧原大造
1979年8月8日生まれ。ヒコ・みづのジュエリーカレッジを卒業後、自らの名を冠した<DAIZOH MAKIHARA WATCHCRAFT JAPAN>を立ち上げる。彫金技術を独学で習得し、時計製作と彫金を一人で手がける数少ない時計師の一人。現在は時計制作をしながら、ヒコ・みづのジュエリーカレッジの教員として後身の育成指導にあたっている。2019年度のバーゼルワールドのAHCIブースに作品を出展予定。
江戸切子を施した0.5mmのガラス板を文字盤に
――「菊繋ぎ紋 桜」は、牧原さんにとって初めての完全オリジナルのモデル。文字盤に江戸切子を使うなど、斬新なアイデアはどう思いついたのでしょうか?
伝統工芸自体に注目していて、中でも江戸切子が気になっていました。文字盤に江戸切子を使った腕時計を見たことがないので、世界初の腕時計になるんじゃないか、と。私の希望は0.5mmという、ごくごく薄いガラス板に切子を施してもらうこと。調べられる限りの江戸切子のメーカーさんにアプローチをし、チャレンジしてくださることになったのが「ミツワ硝子工芸」さん。職人さんにはかなり負担をかけましたが、サンプルは製品化できるほどすばらしかった!
ただ、かなりデリケートな文字盤のため、時計を組み立てていく時はとても緊張します。受注会に出すモデルはプロトタイプのため、製品ではケースのサイズをこれ以上大きくせず、3針が一切干渉しないように切子のガラス板を少し厚くして強化する予定です。
「菊繋ぎ紋 桜」5,580,000円
全体に桜を彫金した「菊繋ぎ紋 桜」のムーブメント
――文字盤は江戸切子で菊を表現し、裏ぶた側から見えるムーブメント全体には桜を彫金しています。彫金も牧原さんがされたのですよね?
そうです。時計学校時代、独学で彫金を習得しました。時計製作は分業が進んでいますが、できる範囲は自分で手がけたいのと、制作と彫金の両方ができるのは私の強みになりますから。だから「菊繋ぎ紋 桜」のムーブメントは、全体にいれられるだけ彫金をいれました。
――パーツ一つ一つの輝きも素晴らしく、こだわりを感じます。
一番小さいパーツでも磨きだけで2日くらいかかっています。彫金と磨きが一番大変ですけど、楽しいですね。ただ磨きは失敗してもリカバリーできますが、彫金は失敗したらそれまで。かなり慎重な作業が求められます。
――ピンクゴールドのケースも、柔らかな雰囲気を加えていますね。
ケースはジュエリーブランドの<ケイウノ>さんに、18金でケースを作りたいとお願いしました。全体に花のモチーフが散りばめてありますし、ケースもピンクゴールドなので「レディスはないのですか?」というお問い合わせはいただきますね。
――時計は外国のもののイメージが強いので、菊や桜といった日本のモチーフが新鮮です。
「菊繋ぎ紋 桜」の製作を始めたタイミングでInstagramを開始したのですが、フォローしてくださるのは海外の方が多いですね。だからか、お問い合わせはほとんど外国の方からです。私はフィリップ・デュフォーさんに師事していたので、デュフォーさんの顧客が私の時計に興味を持ってくださることもあります。
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