柴田 メンズ館の前身である男の新館時代からのキャッチフレーズは、「トラッドの伊勢丹」。
トラッドマインドは今のメンズ館の根底にも脈々と流れていますが、マーケットが細分化し、クラシコイタリアの風が吹いたり、モードやラグジュアリーが再び台頭するなど、メンズ館はさまざまなジャンルのファッショニスタが集う場所になりました。
ただ、同じようにトラッドも常に進化を続けていて、それを感じることができるのが7階。「トラッドもこんなに変わって、こんなに楽しいよ!」というのをこの機会に広く発信して、15年前と同じように男性にお買いものを楽しんでほしいというのが、今回のリモデルに込められています。
太田 確かにトラッドって進化していますよね。祖父の代から3代、メンズ館で買いものをしていて、3代目の自分はここで仕事をしています。このトラッドの流れを、新しい世代にも楽しんでもらいたい。
お買いものに来られる20代のお客さまと話をしていると、みんな自分が経験してきた80~90年代のカルチャーが大好きなんですね。その理由を訊くと、「当時の表現は変な規制がなくて、突き抜けていて面白い」と返ってくる。マンガや音楽、ファッション、カルチャーなどとても詳しくて、今の7階を彼らの目線で見ると、「新しい景色」に見えるのだろうなと。柴田さんもそういう新世代的な流れには注目していますよね?
柴田 もちろんです。オーセンティックウエア、いうなれば「トラッドの今昔」。
戦後日本に入ってきたいわゆる“アイビー”はVAN・JUNを経て、へビューデューティーを経由し、プレッピーを通過し、一世を風靡してきました。そういう中から、アメリカに憧れた日本人が、「アメリカ以上にアメリカらしいブランド」を作る時代になってしまった。
片やアメリカではモノ作り文化が消滅し、新しいムーブメントはこのカテゴリーからは生まれにくくなってきています。
太田 つまり、「日本人のお手本がいなくなった」ということですね…。
柴田 誰もが想像できるアイビーやプレッピーから、トラッドスタイルのあり方が大きく舵を切っている最中で、今一番の課題は、「トラッドの魅力をどうしたら引き出せるのか」です。
次回、9月1日(土)更新の後編へと続く
Photo:TAKU FUJII
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メンズ館7階=オーセンティックカジュアル
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