ストーリーから発想する、ストーリーが生まれる帽子
――武市さんが作る帽子は、どこに特徴がありますか?
私はパターンを重要視しています。それと、お客さまと話をしながら帽子を紹介する機会も多いので、帽子に対する意見やコメントを自分なりに昇華してものづくりに活かしています。自分が持っている製帽技術と、さまざまな意見を噛み砕いてものづくりをしています。デザインは、大人の人がきれいにかぶれることを第一に考えます。
――ハットのこだわりは?
ハットは実用性を考えています。“旅に持って行く”ことをテーマに作った「ストレンジャーハット」は、洗濯機で洗える丈夫な帆布を使い、簡単に折りたためますが、帽子のトップにプラコードを使っているので、かぶるときは形が元に戻ります。この帽子は、旅先で“よそ者感”がある帽子がいいなと思って、アウトドアすぎない帽子にしています。
あと、「タウンダイバーハット」と名づけた帽子は、“街を探索するとき”のためのハットがテーマの中折れ風デザインで、一見アウトドアっぽいのですが、素材がエレガントな雰囲気なので、気負わずかぶっていただけます。
「好きなモノを作って生業にしていきたい」を実現できた
――武市さんは、なぜ「台東デザイナーズビレッジ」で活動しようと思ったのですか?
職人として帽子メーカーで働いていたときから存在は知っていました。当時は主に国内のアパレルブランドのOEMを請け負っていましたが、「自分でゼロから作れる仕事をしてみたい」と思い、ブランドという選択肢を考えました。でも、商品を作ることはできても、売ることや自分をプレゼンすることはゼロに等しくて、独立を考えたときにこの施設を思い出しました。
いわゆるクリエーターは世の中的にどういうことを求められているのかを知りたくて、入居する前に、このデザビレのインキュベートマネージャーの話を聞いて、自分なりのやり方を見つけられたらいいなと思い独立しました。
――入居して3年間、"デザビレ"はいかがでしたか?
3年で一区切りなのですが、いいことばかりでした。商品を作って、見てもらって、手にとってもらうまでをしっかり意識できましたね。ここは作家というより企業としてやりたい人の創業支援を目的としているので、「好きなモノを作って生業にしていきたい」人にはとても良い場所だと思います。私も何を作ればいいかを客観的に考えることができた3年間でした。