制約から生まれる無限の可能性


固定観念を覆し、人々が考えるきっかけを生み出すことを目的とし、自分のできることはジャンルを限定せずに何でも挑戦しています。円と直線の図柄を用いて表現することの継続も「限られた中でどこまで面白いことができるか」「制約から生まれる無限の可能性」への挑戦です。
活動理念を象徴する作品「PORTRAIT」は、着物をまとった作家本人が仁王立ちで佇む姿を写真に収めたシリーズ。身近なものごとの本質に向き合い、それらに立ち向かう姿を表しています。


ブライダルリングと向き合う。


初めてジュエリーを手掛けるということもあり、ダイヤモンドの流通やブライダルリングの歴史を調べているうちに出会ったのが50年以上前のエンゲージリングの原型です。ダイヤモンドのエンゲージリングが日本で定着したのは1960年代と言われています。それより以前の1950年代、ダイヤモンドは今以上に大変高価なものでした。
大きなダイヤモンドを手にすることができる人は少ない中、たとえ小さくても美しく輝くダイヤモンドリングを贈りたい、身につけたいという思いを叶えるセッティングが生まれたのもこの頃です。反射板のようなデザインでダイヤモンドに光を集め、大きな爪で留めたそのデザインは現在の流行ではありません。

しかしながら、より強く大きく輝くようにダイヤモンドを高く持ち上げたそのスタイルは、高度経済成長期の日本のポジティブな姿を現しているかのようで、私にはとても印象深く新鮮に映りました。先人が残してくれたものの良い部分から、今の時代に必要な部分を見極め引き継ぐこと。
それは、結婚という節目に自分自身の存在に向き合い湧き起こる、両親や祖先への感謝の気持ちに似ていると感じたのです。

 

職人の手により丁寧に作られた当時の原型は、どこかぬくもりがあり、金属でありながら冷たさを感じません。道具の機械化が進み、今ではこのようなスタイルの原型を同じように作れる人は数少ないと聞きました。また、大きく特殊な爪にダイヤモンドを留める石留め職人も貴重な存在だそうです。

 

これからの長い時間を共に歩むブライダルリングだからこそ、自分だけではない他者のぬくもりを感じるものであってほしい。人は皆、誰かに支えられて生きているということを忘れず、いつも誰からも長く愛される人であるべきなのです。
そして、私が生み出すブライダルリングの存在が、その人自身を引き立てるものであってほしいと考えました。

向き合った先に誕生したデザインとは―――。