偉大なヘリテージと洗練されたサプライズのコンビネーション。
「フランク・スマイソンは、とても勇敢な人でした。熟練した銀細工職人でありながら40代で一念発起し、<スマイソン>の前身である旅行者向けギフトショップをロンドンのニュー・ボンド・ストリートにオープンしたんです。ヴィクトリア時代においては、かなりの高齢で取り組んだ勇気ある挑戦だったと思います。今の私とそれほど変わらない年齢なんですけどね(笑)」
今でこそトラディショナルでコンサバティブなイメージすらある<スマイソン>だが、元来は極めてモダンでプログレッシブ(進歩的)であったという。「ダイアリー」といえばデスクの上で開く大仰な代物でしかなかった時代に、背広のポケットに収納できるポケットタイプを世界で初めて考案し、発売したブランドなのだ。
「この伝説的な『パナマノート』以外にも、今では当たり前になったトラベル用のエアピロー、ハンドウォーマーにもなる婦人用バッグ、長旅時にはフットレストとしても使用できるクッション付きブリーフケースといった画期的な製品を、次々とリリースしていきました。またいち早くフェミニズムを推奨する商品の開発を行うなど、ユニークで、カッティングエッジな“スマイソン・ワールド”を着々と築き上げていったんです」
ダイアリーを気軽に携行できるものにするというアイデアは、現代流にいえばデスクトップPCをスマートフォンに進化させるようなもの。いかに先進的で、革新的なものであったかがわかるだろう。
「時代は大英帝国真っ只中、世界中から注文できるメールオーダー・サービスも、他に先駆けて展開していました。ビジネスマンとしても、先見の明があったということですね。私はそんなフランクよりも、さらに勇敢でなければいけないと考えています」
“革新”は、時の流れとともに定番や常識へと変化してしまう。しかし“革新”の積み重ねなくして、偉大なるブランドやヘリテージは生まれないのだ。
「エレガントなクラシシズム(古典主義)というのは、<スマイソン>の美に欠かせない要素です。でも、ロマンティックで、ノスタルジックなものだけではダメ。それがあったうえで、イノベーションを感じるもの、さらに面白いものにチャレンジしていかねばなりません。ヘリテージとサプライズ、このコントラストが重要なのだと思います。
私はテクノロジーやデジタルガジェットがなければ生きていけませんが(笑)、ハンドライティングのフィーリングに敵うものはない。手書きの方が自分の記憶に残りやすいし、思いも伝わりやすいですからね。やはりペンやノートは、いつの時代も変わらずラグジュアリーで、エモーショナルなものだと思います」
持ち前のウィットを発揮し、英国のクラシック&モダンがバランスよく織り交ぜられたコレクション──。そんなゴダディンが手がける<スマイソン>の“革新的”な新作は、この秋登場予定だ。ショルダーバッグとバックパックの2WAYで使えるファンクショナルなバッグや、スコットランドの老舗工場で織られたカシミアスカーフなど注目作が盛りだくさん。スマートで洗練されたゴダディンらしい“進化”を堪能できるまで、あと少しの辛抱だ。
Photo:Tatsuya Ozawa
Text:Junya Hasegawa(america)
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