【インタビュー】マウリッツィオ・マリネッラ|セッテピエゲに込めた100年ブランドの誇り──世界最高級のタイは 他者へのリスペクトに満ち溢れている(1/2)
「我々のブランドは2014年に創業100周年を迎えました。創業者であり、祖父でもあるエウジェニオ、そして父である2代目のルイジから言われたことは、『事業範囲は必要以上に広げなくてよい。しかし、クオリティは上げなくてはならない』ということでした。」
創業当時、メンズファッションの中心地はロンドンだった。ナポリのみならず、イタリアの男性はロンドンのファッションに憧れていた。
「祖父はロンドンから洋服や傘、靴などを輸入・販売する店をスタートさせました。それがわが社の歴史の始まりです。しかし、ナポリの人たちは、物作りに関してはロンドンに負けていない、という誇りが常にありました。それは現代にも受け継がれている職人たちの腕です。」
そこで1900年代の半ばからは、その職人たちの腕はタイ作りで振るわれることになる。
「ずっと大事にしてきたことは、我々はナポリのブランドであるというプライドでした。」
その後、マリネッラが世界中に最高級のタイだと認知されるようになったのは、1994年、ナポリで開催されたG7会議に出席した各国首脳へ、6本のマリネッラのタイが詰まった箱が贈られ、世界のVIPたちもそれに影響を受けたのが理由だといわれている。
それでは、マリネッラのタイの魅力はどこにあるのだろうか?
「生地はシルクです。英国製のプリントシルクを昔も今も使っています。プリントシルクは36オンスという目方の物です。また、セッテピエゲという七つ折りも我々のタイの特徴です。1940年代に誕生したセッテピエゲは当時、芯地を使っていませんでした。そこで、結び目にボリュームが出るようにするために、7回折るのがちょうどよかったのです。また、元となる生地をバイアスにカットして1本分のタイを作るのにも七つ折りが適していました。その後、結び目の美しさや、タイの耐久性の視点から芯地を入れるようになりました。」
当時と現代のタイの違いは?
「当時のタイはつなぎ目のないもので、長さは140cmほどで、現代の物に比べて8cm程度短いのです。その仕様は1960年代後半まで作られました。なぜ、短いかというと、当時の男性はジレを着ることが主流だったので、タイが短くても問題なかったのです。時代とともにジレは脱ぎ捨てられ、それにともないタイは長くなったということです。」
そんな当時のタイを、イセタンメンズと共同で復刻させた。
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